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どうくつ王国のロウソク

■□■ 小学生向けの物語 ■□■
(何かの壁にぶちあたった時、子供達の心の支えになればと思い、物語ごとにテーマを決めて書いています😊)
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ここは真っ暗な洞穴の中にある、小さな国のお話です。
どうくつの中は、朝も昼も夜も薄暗くて、太陽の光も少ししか入ってきません。
何となく、ぼんやりと辺は分かるのですが、光がないので、はっきりと見えません。

そこで、この国の人たちをあわれに思った神様が、一人に一本ロウソクをあげました。

このロウソクは好きな所に灯をつけることが出来ます。
でも、ロウソクにはある特徴がありました。
一度ロウソクに火をつけたら、ず〜〜っと消えずに燃え続けますが、火をつけた場所から動かすことが出来ません。

皆は、いつ、どこにロウソクをつけたらいいか迷いました。

火をつけた場所から動かすことが出来ないのですから、みんな必死で考えました。

ある家で、お母さんがロウソクを持って言いました。
「私は家族のみんなが、この家で明るく楽しく暮らして欲しいわ」
そう言って、お母さんは家の真ん中にロウソクを灯しました。

そして、本屋さんを営んでいるお父さんが言いました。
「では、私はお店にロウソクを灯そう。
これで本を買いに来てくれるお客様が、本を見つけやすくなるだろう」

「じゃあ、僕は家の前の門にロウソクを置くね。
家の前を通る人が転ばなくてすむね」
そう言って男の子はロウソク立てにロウソクを立てて、門の前に吊るしました。
そうるすと、道があかるくなりました。

小さな国の人々は、自分の家だけでなく、みんなが暮らしやすいようにと、次々とロウソクを立てて行きました。

学校、公園、お店、道、畑
いろんな場所が明るくなっていきます。

薄暗かった小さなどうくつの国は、光り輝く国へとなりました。

一人一本のロウソクの光しかなかったけど、みんなで灯せば、どうくつ王国は光り輝いたのです。

それを見ていた神様は、とても感激しました。
そして、どうくつ王国の人々を称えるように、神様はある言葉を作りました。

一つ目は「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」
一つの明かりで隅っこを照らすことを意味します。

二つ目は「萬燈遍照(ばんとうへんじょう)」
一つ一つの明かりが十、百、千、万・・・と沢山、本当に沢山集まって、辺が光り輝くことを表します。

光が集まって、辺が明るくなる国は、とても輝いている国です。
でも大きく光り輝くには、まず一つの明かりが灯されなければ、かないません。

一つのロウソクの火は小さくても、集まれば大きな光となります。

これはロウソクの火だけでなく、一人ひとりの力としても当てはまります。
一人の力は小さいけれど、沢山の力が集まれば、大きな力になります。
国は、そういった一人ひとりの光で成り立っているのです。

どうくつ王国のロウソクは、それを教えてくれます。
「一燈照隅(いっとうしょうぐう)萬燈遍照(ばんとうへんじょう)」

ぜひ、あなたも「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」の気持ちで、あなたの足元を照らしてください。


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※安岡正篤師(陽明学者・哲学者・思想家)は、天下国家をあれこれ論じるよりもまず自分がいる場所を明るく照らせる人間に、という意味を込めて「一燈照隅・萬燈遍照(いっとうしょうぐう・まんとうへんしょう)」とおっしゃっています。
それを子供たちに分かりやすい物語にしてみました。
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