寛永主従記 田宮虎彦
複雑な読後感、これもまた歴史小説
長く尽くしてきた家老が新しい藩主に嫌われたら。
一言でいえばこういう話ですが、感情と道義と封建制度が入り混じって亀裂が広がっていく様に読んでいて心が締め付けられます。
今は少なくなったタイプの歴史小説。
このところ歴史小説や時代小説に若い平成世代の書き手が現れて、新鮮で勢いの良い作品が生まれています。
時代に即した娯楽小説としての変化を続けていますね。
一方でこの小説は、帯に鷗外史伝小説とあるように森鴎外の「阿部一族」や「渋江抽斎」のように、その時代の社会体制のなかにある人の生き死にを物語の中で描きます。
娯楽性を追求する現在の歴史小説とはまた違った魅力があります。
昭和27年の連載小説が平成22年に初単行本化。
初版です。
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