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朗読の音声作品を作りながら考えたこと~その①になってしまった。

とても簡単にもできるけど、前のめりになると終わりのないもの。

 いろんなことがうまくいかなくて、なんとなく退場しようと思っていたころに、映画とテレビとラジオの話がいっしょに来た。どれも小さい仕事だけど興味の持てる内容だったので引き受けたら、追われてnoteを書く余裕もなかった。どうしても目先のことに囚われてしまう。

 そして、この間に進めていたことがもう一つあった。
 それが朗読の音声作品を作ることである。
 他の仕事はこれまでの経験から、なんとなく作業進行が読めるので、まったくのゼロから迷ったり考えることはない。
 しかし音声の朗読作品を作るのは初めてであったから、これは発見や、考えさせられることが多々あった。

 テレビのナレーションには数えきれないほど関わってきたが、似て非なるものだ。ラジオでの朗読番組にかかわったことがない。
 まず音声のみの朗読の定義から悩んでしまった。

俳優と声優とアナウンサーとナレーターの朗読は、それぞれ違ってしかるべきではないか。

 欧米では作者本人が朗読する機会がとても多いという話を読んだことがある。日本で朗読といえばイメージするのはプロの読み手によるものを想い浮かべると思う。
 そのようなプロの読み手を一括りにナレーターと呼ぶが、本業はさまざまで、その強みはそれぞれに違う。起用するときの意図も微妙に違う。
 作品のイメージ、本人の語り口、声のキャラクター性、演出方針、技術、話題性など様々な要素をふくめて人選する。

 俳優の起用はそれ自体が演出で、作品の色をかなり支配する。ナレーションの技術そのものより、語りの魅力を求める場合が多い。そして作品の品格が高まる。

 声優は意味合いが以前とは違ってきている。かつては声優ナレーターという複合した職域に捉えられていたが、現在はアニメ声優にナレーションもお願いするケースがよく見られる。その場合には本人の声のキャラや個性を生かすことをのぞんでいる。

 ナレーターは、本格的な作品から、当日のニュースを簡単な下読みで次々とこなしていくこともできるプロフェッショナル。売れている声や読み方にかたむきがちで、質が安定するが、制作が冒険している感じはない。

アナウンサーが読むということ

 さてアナウンサーである。
 今回はベテランのラジオアナウンサーと縁があり、朗読作品を作ることになった。

 アナウンサーは正しく読み、個性を抑えながら個性をにじませ、文章を正しくたどって魅力を広げていく。ある意味では本当の読む実力だけで勝負している人たちだ。

 私見だが、テレビのアナウンサーのナレーションの実力にはとてもバラつきがある。
 誤解なきようにふれておけば、普通に番組に出ているようなアナウンサーたちの力量は、一般に思われているよりははるかに高いと考えている。軽んじられがちな若いアナウンサーとて、喋りがうまい素人など実際は太刀打ちが出来ないほど優秀だ。
 ただアナウンス能力といわれるものは多岐にわたり、正しく品を失わずに、スタジオの司会から、生放送に対応する進行、中継実況、そして読み語りとさまざまな役割を果たす。テレビの場合はそこに立ち居振る舞いまで気を使うのだから、得意不得意なスキルがあっても仕方がない。
 話すプロとしてナレーションに取り組みたいと希望するアナウンサーは多いのだが、語りの経験を積むドキュメンタリーは意外に少ない。そのためによりスキルの差が出てしまう。
 ちなみに、たまのドキュメンタリーがあると、ディレクターもアナウンサーも重く低く気取った声で入りたがる。
 あれはほんとうに良くない。
 一聴、上手そうに聞こえるが、本当にうまい人は”軽やか”だ。続いていた会話の途中からのように入れる。そうやって入るから、手幅が広がり、緩急がつけられる。ナレーションのうまいテレビアナウンサーが少なくなったのは、あの演出のせいもあると思っている。

 一方で顔出しのないラジオアナウンサーは、いつも声で伝えることを考え追及している。好む好まざるに関わらず多種多様な番組で話し続けている人たちだ。
 ラジオ局の中堅以上で出演を続けているアナウンサーは、なにを読んでも上手い。
 特に今回はベテランの寺島アナウンサーと仕事をしてみて、その特質を実感することができた。
 俳優とも声優ともナレーターとも違う。読みの外側はスタンダードに包みながら、声の内側で起伏や緩急や感情を微妙に揺らしていく感覚。
 とても勉強になったわけである。

 読む人の職種ごとの話で長くなってしまった。
 語りとナレーションとコメンタリーについて考えた話はまたこんど。

*「朗読のアナ」の検索で以下で無料でお聞きいただけます。
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