見出し画像

47【39年越しのHUGハグ】

6月30日 手術前日

今日から始まった

入院初日は特に何もなく
久しぶりに普通のご飯を食べて
変なテンションで始まったけれど
ついに今日から始まった

今日から絶食、
お腹を空っぽにする

術前の検査が始まる
県債のため、血をいっぱい抜かれて
レントゲンを撮って
栄養士さんに術後の
食事の説明を受ける

午後になって
近くのホテルにチェックインした
ルウと母がやってくる

虎の門ヒルズでランチをしようとして
あまりの人種の違いに気圧されたらしい

可愛い

なんだか1500円する
サラダをテイクアウトしたってさ

16時ごろからU先生の
術前の説明が始まる

手術の方法やリスクの話
怖いこともいっぱい言われた


コロナだから術後本人は会えないことも

だけど

明日の朝、麻酔で眠って
夜に目が覚めたら
もうムウの身体から
食道と胃の一部が取り除かれ
ガブちゃんともお別れ

そこからのLIFEは
全く想像できないけれど
それまでとは全く違う
ムウのLIFEが待ってる

全ての説明が終わって
説明を聞きましたよという
サインをした最後の最後に

ルウが言った

“先生

私よりも
大事な人なので
どうかどうか
どうかよろしくお願いします“

と涙、ポロポロ。

なんてことを言うんだと
驚きを隠せない顔をしながら先生、

“わかりました
全力で頑張りますよ“


と。

なんだろう
もう何だか

まるでムウのことじゃないような
ムウはどこかに幽体離脱をしてしまったような
そんな現実感のない時間がそこに流れた

笑いながら診察室をあとにした

世の中とムウを分ける9階のゲートに向かい
お別れをする

頑張ってくるね
何を頑張ればいいかわからないけど
頑張ってくるね

きっと大丈夫、大丈夫よね


母が
いてもたってもいられなかったのか

泣きながら

ハグをさせて

と言ってくる

そうか
そうなのか
このタイミングなのか

と小さくなった母とハグをする

何十年かぶりのハグをする


話せば長くなるからしないけど
十五の時、母に見捨てらた事件があってから
ムウは母に触れなくなった

いや、そばに寄ることもできなくなった
身体が“離れろ、近づくな“と訴えるから


あれから何十年もたって
こんな時に触れるのかと

何だか
もうちょっと素敵なタイミングで
あってもよかったような

まぁでもこれでよかったか

のような
そんなハグをした

いろんな気持ちが込み上げたけど
今、それを感じてる場合じゃないと
引っ込めて笑って背中を叩いた

大丈夫、大丈夫やから と


尽きない名残を押し込めて
ムウたちはバイバイをする

これで2度と会えないかも
しれないけれどムウたちは
バイバイをする

ここからは一人
ムウはガブちゃんと向き合うよ


病室に戻ったムウ

ついに生まれて初めての
点滴が始まった

腕に太い針をブスリと刺し
天からポトリポトリと
液体が落ちてくる

ついに始まった

ついに始まったんだな


教訓
:あとはもう流れ作業
:ムウにできることは何もない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?