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31【忘却の日常】

 
5月31日
昨日の確定診断を受けて
進むべき方向性が見えた

がぶちゃんをみつけてから
ここまで36日


時間の間隔が
全くよくわからないひととき

生きるのか死ぬのか
そんなアンビバレントを
味わえる時期はほんとどない

そのときに感じたこと
考えたことやったことが
きっとこれからに生きてくる

まぁ大したことは
何にもできないけど
少なくともその時期を
味わう人の気持ちは
少しはわかったはず

あの世に持っていけるもはない

この世に残せるものもない


ムウがいなくなったって
なんでもないように
この世界は回るし

ムウが生きていたって
なんでもないように
この世界は回る

喜びも悲しみもそこにはない

大きくみせるのはやめよう

小さくみせるのもやめよう



ただただいまあるこのムウで

ただただいまあるそのアナタと

ムフフとイヒヒを紡いでいこう


この日は、C大のM先生が
準備してくれている紹介状を
もらいに一人で千葉大へいく

2Cの受付に名前をいうと
すでに用意がしてあって
2通の紹介状を受け取る

そのあと
がん相談支援センターの
Sさんのところに相談に行く

なんとなく
ただ話をしかたかった

そう
ただなんとなく
話がしたかった


ムウは雑談が苦手
だからパーティーも苦手
その場の雰囲気で
適当に話すことができない

そこに乗っていけない
ムウをついつい
意識してしまう

だからとりとめもなく
ダラダラと
脈略のない話ができない


そうして自分の整理できていない
なんだかわからない気持ちを
外側に出すことができなくなった

だけどこの日は
その脈略のない話をしてみようと思った
とっちらかったムウの内側を



これからの人生の進み方が
まったくわからなかった

昨日で今までのゲームが終わって
今日から新しいゲームの始まりにいるのに
まったくルールがわからなかった

なにを頼りに生きていけばいいのか
どうやって駒を進めていいのか
そして一体誰と、ゲームをやっていくのか

なにをもってゲームセットになるのかも



目下の悩みは

痩せること


みてくれが変わることへの恐怖が
こんなにも神経症的に恐ろしいとは
知らなかった

16歳でいまの体ができあがり
そこから体重も身長も体型も
ほとんどかわらず生きてきた

みられることやみえかたに
こんなに拘っていることも
にわかに信じがたいことだった

眠れないこと


それまでは眠いと思ったら
次の瞬間にはどこでも眠れて
目が覚めた瞬間にもう歩き始められた

眠るということを
意識すらしたことがないほどに

眠れないと意識をすると
なおさら眠れないループにハマって
どこまでも眠れない

たかが数日
眠れなくても
なんてことはないのに
それがなぜこんなにも恐ろしいのか

世間にどうつたえるか


全く答えがでなかった
多分、ムウの猛烈な自己顕示欲は
なるべく早く世間につたえて
注目をあびることを望んでいる

ありえないほどの いいね!
をもらって承認欲求がみたしまくる

あームウほんとに
がぶちゃんになってよかった
とかなんとかいいだして
(まぁそれはそうなんだけど)

だけど
それを知らせた瞬間から
ムウはただのムウじゃなくて

がぶちゃんになったムウ
がぶちゃんで死ぬかもしれないムウ
がぶちゃんを克服したムウ

形容詞にがぶちゃんがついてしまう

何にしたって全部がぶちゃんがついてきて
いつのまにかガブちゃんに追い抜かされる

相手はそう思っていなくても
そうおもわれているように思い込む

それを消し去るまでに
相当大量の消しゴムが必要ね

だけど
伝えないことで
ムウがムウに無理をさせる

大丈夫でもないくせいに
かっこつけて大丈夫を連発し
なんでもないようなふりをする

弱いところをみせられないから
だんだん人といるのが辛くなり
近しい関係だけに閉じこもる

あーあ
どっちに転んでも気持ち悪いな

気にして欲しいのに
ほっといて欲しくて

ほっといて欲しいのに
気にして欲しい

そんな気持ちを
Sさんに話した

ただただうんうんと
うなずいてくれた

ありがたかった
なんだか
話しながら
ムウ、こんなこと思ってたんだ
って思ったりもして
恥ずかしくなったりもしたけど

なんだか
あったかい気持ちになった


ムウが話したことが
本当か嘘かなんてどっちだって
大したことじゃないかもしれない

そんなことを思いながら。

もちろん
話したからといって
心がすっと軽くなるとか
スキッとスカッと晴れわたるとか
そんなことはないけれど

ムウの中に
そんな気持ちがあることは
よくわかったし
話をすることで
実はそれがそんなに重みのある
ことでもないこともわかった

この頃から記憶が曖昧になってくる
6月3日のセカンドオピニオンまでの
数日、いったいなにをしていたのか
思い出せない

あんなにも1日、1日がもう
カウントダウンしていく焦りの中に
いた日々からほんの少しだけ
開放されて、なんでもない日常を
なんにも思わず過ごせる日が
くるなんて思いもしなかったけど

人の気持ちなんてほんと
ちょっとしたことで変わるんだね

どっちに転ぶかわからない状態から
どっちに進めばいいかわかる状態に

ナビに行先をつげて
案内スタートボタンを押すように

ムウの人生はまた
動き始めた



それがどこ行きのナビかは
わからないけれど
ムウが生きる方向に向かう

向かえるんだという希望だけは
ムウの胸に確かにあった

1時間ほど
とりとめのない話をし
ムウはSさんに
深く感謝をしながら家路についた


教訓
:話してみないとわからない気持ちがある
:嘘か誠かは実はそんなに重要じゃない
:覚えていられない日常が実は幸せの源泉













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