見出し画像

ひっそりとなくなった野球場

 なくなった野球場といっても、川崎球場や藤井寺球場や旧広島市民球場のようにプロ野球ファンに広く知られて花道を用意された球場ばかりではない。
 地元の人以外は知らないような野球場もしっかりなくなっているのだが、たいがいは便利な場所にあったり、独特の雰囲気や特徴があったり、なくなるには惜しい感じの野球場だったりする。
「野球場図鑑」を再編集する過程で色々思い出す事もあるので、これらの球場を偲ぶついでにこんな球場あったんですよという感じで紹介したい。


盛岡市営球場

 既に閉場となった旧県営球場よりももっと古い、戦前からある野球場。訪れた時は言葉を失った。2024年3月に廃止とあるが、それまで使われていたのだろうか。ならばニューヨークタイムズだかの「世界の行くべき都市No.2」に盛岡が選ばれた時にこの球場を観光ルートに組み込むべきだったと思う。
 ここで説明するより実物を見て欲しい。

外周のポール付近。

 使われてもいないのに勝手に入れるようになっている。鷹揚な土地柄なのか、もう管理する気がないのか。石積みの外壁は渋い。

外周のエントランス付近。

 階段の先が閉ざされている気がするが、もしかしたら開くのだろうか。ちなみに最近流行りの「壁面緑化」とはちょっと違う。

外野芝生席。

 芝生席というか、雑草席。虫が一斉に動いた記憶がある。

スコアボード。

 味わい深すぎるスコアボード。「I II III」の上は「HOMURUN」という文字が表示されるようになっているらしい。ホームランが出た時はここが点滅したりしていたのだろうか。選手名と得点が小さすぎる気がするが、大丈夫だったのだろうか。「盛岡信用金庫」にだけ現役の面影がある。

バックスクリーン裏。

 バックスクリーンの裏なのだが、このバックスクリーンは意味があるのだろうか。やはりここを通る観客がいたのだろうか。

ベンチ。

 2023年まで閉鎖されなかったという事は、このベンチも使われていたのだろうか。

熊谷市営球場

 秩父鉄道石原駅から徒歩7分あたり、「伊勢町ふれあい公園」が昔は熊谷市営球場だった。駅チカの非常に良い場所にありながら、周囲の宅地化で硬式野球ができなくなり、そのまま閉鎖…というのが、こうした運動公園などの一部ではない、住宅地に単独で存在するような野球場の消滅パターンらしい。最近また同じような理由で新潟市の小針球場が閉鎖になっている。
 この球場の姿はほとんどネットにも残っていないようなので、結構貴重と言える。

球場正面。

 田舎の公民館か何かのようだが、野球場のエントランスである。

エントランス脇。

 ここまで近づいてようやく野球場のようだと気づく。

グラウンド全景。

 ここは普通の野球場。ちゃんと試合をやっている。

一応座席。

 剥き出しすぎるコンクリートの椅子。しかも縦幅がなく痛そう。

座席後方。

 ネット裏のスタンド後方にちょっとしたスペースが。ナイターでビアガーデンにするとか活かせそうだ。

バックスクリーン裏。

 このバックスクリーンも意味なさそうな気がするが、やはりここを通行する人がいたのだろうか。

スコアボード。

 味わい深すぎるスコアボード。

城山球場(長野市)

 善光寺に隣接する城山じょうやま公園は、「明治33年、大正天皇御慶事記念のために開設した長野市で最も古い公園」らしい。この公園の「ふれあい広場」は、大正15年から2000年まで城山球場という野球場だったのだが、公園の公式サイトでもその事には触れられていない。なくなったものには冷たいというか。
 この球場の凄いところは、斜面に造られ、その周囲を外壁が取り囲み、外からは野球場に見えないところだった。この球場もネットにはほとんど写真が残っていない。

外壁。

 外壁。この内側が野球場だとはあまり思えない。

エントランス。

「切符売場」に改札。駅にしか見えない。

入口。

 確か球場で唯一の出入口。穴の中に野球場があって、秘密の入り口から入る感じ。「賭け野球」でもやってるかのような、アンダーグラウンドな感じ(?)。

グラウンド全景。

 ようやく普通の野球場の姿を現す。フェンスの広告にかっての盛況の面影を見る。メインスタンドが高台で、外野が平地である事がわかる。

外壁の内側はすぐに観客席。

 外壁の内側がすぐ観客席。外からはこの光景が想像できないだろう。

千葉公園野球場

 競輪場に隣接していたこの野球場には、競輪場の雰囲気がそのままなだれ込んできたようなアンダーグラウンドな持ち味があった。今は「チップスタードーム千葉」なるオシャレな新施設ができてイメージが一新されたが、ギャンブル場には変わりなかったりする。千葉ロッテの新球場にはこの場所がうってつけと思われるのだが、早くも行政側からは否定されている。
 この球場はいくらかネットに写真や情報が残っているようだ。

エントランス。

 このエントランスもまったく野球場の雰囲気ではない。この改札をくぐると高い塀が立ちはだかり、その内側が野球場である。掘り下げ式の野球場は設計次第では開放感のある施設にできるのだが、周囲を塀で囲むと「秘密の賭け野球」でもやっているような怪しい雰囲気になってしまう。

スコアボード裏。

 一応スコアボード裏としたが、何の裏なのか実は良く覚えていない。だがこの人を寄せ付けない感じの斜面。競輪場の延長みたいな感じで設計されたのだろうか。同じ年に開場したらしいが。

照明塔脇。

 この「閉ざされ感」。
 競輪場の3年後、2020年閉鎖。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?