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解読 ボウヤ書店の使命 ⑱

 しばらく日が空いてしまった。サンタマリア産のアクアマリンとラピスラズリによる衝撃が大きかったのもあり、精神の衝撃を緩和するためにも絵画制作に集中していた。ラピスラズリは軽んじてはならない石なのだ。
 通っている絵画教室でも制作が行われた。
 まずは以下、家で描いたもの。オートマティスムで描き取り、その後、版画制作。

2023年4月11日
2023年4月11日
2023年4月11日
2023年4月12日

 ひとつの版画で二種類作ってみた。
 次は絵画教室で描いたオートマティスム。こちらは木炭画。

2023年4月14日

 上の絵は途中まで石膏像を描いていたが止めてしまったものだ。全てを手で塗りつぶしてしまい、縦長だったものを横長に置き直した。もともとは以下の石膏像の画。

2023年3月10日

 日付が前後するが、2023年4月13日にはヒヨドリのピータがベランダに私が出ているのにも関わらず懐いたかのようにそばに来て、ピーと鳴き、美術館のある方向に飛ぶので、何かあるのかと思い、午後に現代美術館へ。

 驚きました。ヒヨドリのイラスト入りのバックが! ヒヨドリのモチーフを使ったものが少ないと嘆いたところでした。(これを書いた後、誤字がないか確認するために改めていているのだが、石膏像の画からオートマティスムへと変更した流れと、ヒヨドリピータのポーズを取った写真からヒヨドリのイラスト入りのバッグの写真の流れが似ている。)

昨日(2023年4月17日)は心をリセットしようと公園へ。雀がチュンチュンとよく鳴いていたし、カラスも毛づくろいをしていた。

毛づくろいの写真撮影
カラスに見つかり飛び去る前の姿
近くの枝に飛び移った

 ということで、現在、ひとまず、絵画と鳥たちの力によってラピスラズリの衝撃から立ち直ったところだ。
 『キャラメルの箱』の復刻に入ろう。主人公「僕」であるゆうちゃんがじいちゃんからりんごおばちゃんの子供の頃の話を聞いたところまで復刻した。さて続き。

《 家の前に車が二台ほど通る路地があった。
  路地の真向かいがじいちゃん宅、
  そこから西にじいちゃんの本屋、
  ばあちゃんの喫茶店と続き、
  最後にりんごおばちゃんの家。

  りんごおばちゃんの家には頻繁に
  男の人たちが出入りしていた。
  かつての稼業の名残で、
  りんごおばちゃんは和服を縫う仕事をしていたから、
  その仲介でもしている男たちだったか。
  りんごおばちゃんが留守の時に路地で遊んでいると
  どこに行ったかを聞かれることもあった。
  ことづけを頼まれたりもする。
  胸の広く開いた黒いシャツと白いラッパズボン。
  たまには派手な花柄のシャツの人もいる。
  金の長いペンダントを着けていることも。
  幼い僕はこの男たちこそがりんごおばちゃんの
  月一回の怒号の原因だろうと考えていた。
  なんとなく悪っぽい感じなので、
  そうに違いないと思っていた。
  でも男たちは一見派手なだけで、
  りんごおばちゃんよりもかなり年下のようだったし、
  りんごおばちゃんのあたたかさに惹かれて
  周りをうろついているだけにも見えた。
  だったら泣くほどのことなんてあるのか?
  それに、これが他の大人たちの言う「恋人」と
  いえるのかもわからない。
  じいちゃんが植えたシモクレンの横にある
  縁台に並んで座り、
  手を握ったり、男の方に頭を置いたりして
  じゃれあっていたのは事実だ。
  時には一本の煙草を交代で吸ったりもする。
  一本吸い終わったらまた新しい一本に火を点け、
  再びかわるがわる吸う。
  こんなことをしていたのだから、
  今考えれば、
  そこそこ深い関係だったのだろう。
  それが恋人でなかったとしても——。
  そういう縁台の様子をぼんやりと見ていると、
  りんごおばちゃんは手招きをして、
  ――こっちおいでよ。
  と言った。
  僕の方も慣れたもので、
  派手な男にも怖気づいたりせず近付いた。
  近付くと、
  りんごおばちゃんのつけている香水と
  煙草の匂いが混じり合い、
  その周辺だけは空気が売れた果実のように
  重く感じられた。
  りんごおばちゃんの化粧も一段と濃い。
  りんごおばちゃんは腰をずらして縁台の真ん中を空け、
  ぼんやりと立っている僕に微笑みかけて座らせた。
  座ると、腕で僕の頭と肩をぐいと抱え込んだ。
  不自然に斜めに傾いてしまう。
  肉付きのよい胸に沈み込むようになったまま、
  苦しそうに深呼吸をして
  香水の匂いを吸い込んだ。
  ――ねえ、こういう感じもいいわよねえ。
  りんごおばちゃんは僕の頭を撫でたりしながら、
  座っている男を流し目で見る。
  大福餅を持って家に駆け込んでくる時の表情とは
  まるで違う。
  細めた目が奥の方から黒く光るようだ。
  ――ね、子供がいるのってこういう感じよね。
  夫婦の間に子供が座っている様子を想定して
  男に尋ねてみたのだろう。
   ――どうこたえるかな。
  隣に座っている派手な男の表情を僕はこっそり伺う。
  僕がちらりと横目で見て、
  たまたまその男と目が合った場合、
  たいていは向こうが慌てて目をそらした。
  そして決まって、
  ――そうかなあ。
  どちらとも言えない返事をするのだった。
  煙草を持っていた時には
  せわしなく灰を路地に落としたりもしただろう。

  そのとき僕は十歳にしてこう思ったかもしれない。
  ――男と女が一本の煙草を交代で吸うほど仲良しであることと、
    そんな二人の間に少年が座ることの間には
    大きな違いがあるらしい。》
  
 今日はここまでにしよう。なかなか濃い話だ。
 入力しながら最後の頁まで読んだのだが、ああそうか、こういう話だったなと思い出し、自分で書いたとは思えない。うまいとか下手ではなく、この情景がどこから来ているのかがわからない。最後に「初めて完成させた作品」と書いてあり、小説『駅名のない町』の次に書いたものではあるものの、『駅名のない町』は長い間完成しなかったので、これが「初めて完成」となったのだろう。
 復刻はまだまだ続きます。

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