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「シェアハウスしてみたいよね」



そう彼はわたしに言った。

彼というのは、わたしの救世主だった彼。
何度も登場させてごめんなさいね、
わたしの周りには何人も男の人がいない世界なのよね。
そして何度もこちらを載せときます。


まあ簡単に言うとわたしを死に際から救ってくれた、最愛の人ですね。 


まあそんなことはさておき、
1番好きだった元彼に会ってきた話をさせてね。

彼とは最近また会うようになり、
ご飯に行くようになった。
今会っても「好きだ!」と、
気持ちが舞い戻るような気配はないけれど、
でもやっぱりこの人を好きでよかったなと思うくらいには彼のことが好きだ。

「ね、シェアハウス楽しそうだよね、安いし。」
「ここらへんでもやってるかなと思って、こないだ調べたんだよね、そしたら
「や、ちがう、知らん人とじゃなく知ってる人とね」
わたしはそこでハッとした。
わたしはてっきり知らない赤の他人大勢と住むことをシェアハウスだと思っていた。
でもそうか、それもシェアハウスっていうのか。
え、あの、さ、
今よく考えればそれって同棲っていうんじゃないの?
違うの


ほーら、こっちの方が意味としては近いじゃん、
紛らわしいなあ。

そしてもうひとつハッとする。
「え、ねえその知ってる人ってもしかしてわたしのこと言ってる?」
「他に誰かいるの?」
「あれ、わたしこの人とヨリ戻した?」と錯覚してしまうくらい、
サラッと当たり前かのように彼は言った。

わたしは3ヶ月後に今いる土地から、
彼のいる土地へ引っ越す予定だった。
8ヶ月くらいいる予定のため、
短期で住める場所を相談した時に
この話が出たのだった。

彼のこういう態度は慣れっこだ。
すぐに人に気を持たせるその態度。
以前のわたしならコロッと騙されていただろう。
「ね、楽しそうだね」
と、サラッとあしらった。
それでも彼は
わたしとのシェアハウスの夢物語の続きを語った。

なんで振った側はいつまで経っても相手は
「まだ自分に気がある」と、思えるんですかね。
不思議でたまらないや。
それか
「まだこいつは俺のことが好きだ」っていうのを、
わたしが知らず知らずのうちに出しているんだろうか。
これはわたしが考えてもわからないことだね、
今度聞いてみようかな。
もしそうだとしたら、
わたしは隙だらけの人間ってことだね、
気を付けなきゃな。

ただ、彼の夢物語にはもちろん惹かれるものもあった。
大学生の頃終わってしまったあの日々を、
今になって取り戻すことが出来るのは素直に楽しそうだなと思ったし、
なんでも気兼ねなく話せる友達はわたしは彼以外に知らなかった。

女の子の友達ももちろんいるが、
彼氏との惚気話とか愚痴とか、
仕事の嫌な話とかもなかなかできない。
いや、すればいいじゃんと思うかもしれないけれど、
なんだかなあ。
わたしのこの話聞いて楽しい?と思ってしまう気持ちが多くて、
全くもって話せない。
わたしは男じゃないけれど、
どうしてか女の子は大切に扱わなきゃねと思ってしまうのだ。
その分男の子はそうは思わないから気が楽だった。
ずっと男の子と一緒にいたいというわけではなく、
何か話がしたいときには男の子、
そう思って今まで生きてきた。

彼の夢物語に、わたしものってみた。
こうしたいね、
あーしたいね、
楽しそうだね、
ご飯は作ってね、
じゃあ片付けはしてね、
無理だな部屋が汚くなるな
なんて、
くだならい話を笑いながらした。
きっと彼は夢物語を現実にしてくれる人より、
夢物語を夢物語のまま楽しく終わらせてくれる人を求めていたんだろうなと、
なんとなくそんな気がした。
だからわたしはうまくいかなかったんだなと、
確信に近いものを感じた。

彼の夢物語を現実にしようとしてしまう人は、
きっと彼にとっては重かったんだろうな。
でもさ、好きだったらさ、
理想を語ってくれたらそれを現実にしてあげたいなと、
普通思わないんだろうかね。

「きっとわたしは重いから、浮気してるくらいが丁度いいんだ」と、
大学生の頃に思ったことがある。
重いのが2人に分散されて、
みんなのびのびわたしと付き合えるんじゃないかなって、
拗らせかな?


今、彼の夢物語を現実にしようと思わない程度の心の余裕があるのは、
きっとわたしに本命の彼がいるからなんだろうなと、
そんなことを思いながら眠りにつきます、
おやすみなさい。

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