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【JOCV】派遣前訓練Day58|150人の村

「ダンバー数」というものがある。人類学者のロビン・ダンバーが提唱した数なので「ダンバー数」と名付けられている。ダンバー先生に失礼を承知でざっくりと言ってしまうと「何人までなら仲良くやっていけるのか」という数である。ダンバー先生によると、その数はおおよそ150人前後であるとのことだ。

1993年、英国の人類学者ロビン・ダンバーは、霊長類の脳の大きさと、群れの大きさとの間に相関関係を見出した。その研究を人間の脳の大きさに当てはめて計算した結果、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度であると提唱した。提唱者の名前から、ダンバー数と名付けられた。
UX TIMESより

なるほど、人間が150人以上の群れをつくることは難しいのかもしれない。企業の組織管理などにおいてもダンバー数は実際に応用されているようである。登山家が愛用するゴアテックスもその一つ。

防水透湿性素材で有名なゴアテックス(ゴア・アソシエイツ社)の創業者ウィルバート・ゴア氏は、グループが150人以下であれば明確な規範がなくても従業員は同じ目標へ向かって努力するが、150人を超えると問題が発生することを経験から学んだ。そこで、各部門の従業員数が150人以下になるように、人数が増えすぎたら部門(工場)を分割するという戦略を取っている。
UX TIMESより

さて、JICA二本松訓練所はダンバー数を意識しているのだろうか。というのも、現在の訓練生はおおよそ150人なのだ。訓練所のキャパシティとしても最大で180人程度だろうか。200人は厳しそうである。

訓練も58日が経った。これまで話したことすら無い人ももちろんいるが、「見慣れない顔」というのはもはやいない。不思議なことに何となく分かるものである。これが200人以上の候補者による訓練だったらどうだったのだろう。想像に留まるが、退所式になって「見慣れない顔ですが、どちらさまですか」という残念な事態が起きてもおかしくは無いように感じる。

150人での共同生活を営んでいれば好きな人も嫌いな人も出てくるが、例えばA派閥とB派閥に二極化して対立するような大問題には至っていない。職員と訓練生の努力ももちろんあると思うが、150人という訓練の規模設定が絶妙なバランスを醸し出しているのかもしれない。

ダンバー数は「群れ」についての考察から生まれた数であるが、「個人」という文脈でも当てはまるのかもしれない。つまり私が今この瞬間に同時に脳内に出現させられる人の数は150人程度になるということだ。訓練生一人ひとりが見ている世界にはどんな150人がいるのだろうか。その150人に自分は含まれているのだろうか。

派遣予定の組織やその周辺組織はどのような150人で構成されているのかという観点を持つと面白いかもしれない。任国でお世話になる人、一緒に仕事をする人は、どのような150人を見ながら毎日を生きているのだろうか。私はその150人の一人になれるだろうか。


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