見出し画像

書籍紹介|Field Guide to Jordan【JOCV Day189】

今回紹介する本はヨルダンのフィールドガイドである。アラビア語ではなく英語で書かれているが、日本の書店ではおそらく販売されていないと思う。

おおよその大きさは縦19センチ、横10.5センチ、厚さ2センチ。ポケットサイズとは言わなくても持ち運びには便利な大きさである。フィールドガイドは屋外で使われる機会が多いこともあってか、水に強そうな丈夫な表紙、裏表紙となっている。全部で383ページとなっている。

注目すべきはその中身だ。ヨルダンの地質学(Geology)、考古学(Archaeology)、環境(Environment)、植物相(Flora)、動物相(Fauna)、これら全ての情報がこの383ページに収まっている。遺跡ガイドだと思って読み進めると、気がつけば動物図鑑になっているのだ。文字通りの「フィールドガイド」とはこういうことを言うのだろう。

日本の書籍でも「フィールドガイド」と名のつくものはいくつもあるが、小学館のフィールド・ガイドシリーズを見ても分かるように、樹木、昆虫、海辺の生物など、各分野ごとに製本化されているものがほとんどである。"Field Guide to Jordan"のように、フィールドワークに必要な情報を分野横断的にまとめ、持ち運びができるサイズに製本化されているものは、私はまだ見つけられていない。

日本でこのようなフィールドガイドを作ることが難しいことは分かる気がする。そもそも日本はヨルダンよりも国土面積が大きい。ヨルダンは北海道程度の多きさしかない。地質学、考古学、環境、植物相、動物相、それぞれ分野において長きにわたって研究が行われ、膨大なデータが蓄積されている。個別にまとめないと収まりさまりがつかないのかもしれない。小学館のフィールド・ガイドシリーズは、植物相と動物相の範囲だけで22冊もある。

ヨルダンという国を知り尽くそうとした時に、ヨルダンの国土面積と、2年間という青年海外協力隊の滞在期間との相性が良いことを記載した。簡単な言葉になってしまうが、ヨルダンの国土面積は「ちょうどいい」のだ。

ヨルダンの絶妙な国土面積が、分野横断的なフィールドガイドの作成を可能にしているのかもしれない。

もちろん"Field Guide to Jordan"に掲載されている個々の学問分野については、その道の専門家からすると記載が不十分だという指摘もあって当然だろう。植物相のページを見ると、多くの種子植物は花の写真のみが掲載されている。種子や根の写真も載せるべきだという意見ももちろんあって良い。著者はそのことを理解した上で、ヨルダンのフィールドガイドに必要な情報をなるべく広範囲から収集し、限られた紙面に収めているのだろう。

ヨルダンの研究者や観光客に愛読されている1冊であり、私も第2版第3刷をリュックに忍ばせている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?