見出し画像

【論文紹介】医療施設までの移動時間

ここ最近は仕事の関係で医療施設や医療従事者と関わることが増えた。都市であれば公共交通機関や自動車を使えば最寄りの医療施設までは数十分も掛からないが、果たして他の地域ではどうだろうか。

この素朴な問いに対して世界的に調べた研究が昨年9月に報告されていた。

Global maps of travel time to healthcare facilities
医療施設までの移動時間を示した世界地図

Nature Medicine誌に掲載されたもので、論文は公開されている。医療施設までの所要時間を世界地図の上にマッピングするという大仕事だ。詳細な方法はこのnoteでは割愛するが、医療施設の情報は既存のデータベース、グーグルマップ、過去の論文から抽出して統合している。

自動車を使用する場合(motorized transport)と、自動車を使用できない場合(without access to motorized transport)の2種類の地図が掲載されていた。まずは前者。

画像1

Fig. 1 | The global map of optimal travel time to healthcare with access to motorized transport. Color-coded logarithmic timescale from minutes (yellow) to 24 h (dark purple).
図1.|自動車による移動ができる場合での医療施設への移動時間の世界地図。対数時間軸による色分け(分(黄色)~24時間(濃い紫))。

移動時間が短ければ黄色、長くなるにつれ紫色が濃くなっていく。解像度が良く無いが、日本や韓国、中国東部、インド、ヨーロッパ、アメリカの両海岸、オーストラリア東海岸は黄色い箇所が多くみられる。全体的に黄色い地域が多いというのが個人的な印象である。

論文では、自動車による移動が可能な場合では、1時間以内に医療施設にアクセスできない人は全人口の8.9%(約6億4600万人)と述べられている。

続いて、自動車による移動ができない場合での、医療施設への移動距離を示した世界地図がこちらになる。

画像2

Fig. 2 | The walking-only map of travel time to healthcare without access to motorized transport. Color-coded logarithmic timescale from minutes
(yellow) to 24 h (dark purple).
図2.|自動車による移動ができない場合での医療施設への移動時間の世界地図。対数時間軸による色分け(分(黄色)~24時間(濃い紫))。

自動車による移動を前提とした先ほどの図1.と比べると、紫色が一気に増えた印象を受ける。多くの地域に住む人が、徒歩では医療機関までに1時間以上かかることを示唆している。日本でも紫色の地域が確認できる。

論文では全人口の43.3%(約32億人)に相当する人が、医療機関に徒歩でアクセスするまでに1時間以上を要すると述べられている。

人口密集地域であり、かついかなる手段でも医療施設まで1時間以上要する地域にはアフガニスタン、スーダン、ベネゼエラが含まれている。研究チームは、今回の結果が病院やクリニックを必要とする地域を明らかにするだろうと述べている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?