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パレスチナ難民と新型コロナウイルス|UNRWA清田先生の寄稿より

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保険局長を務める清田明宏先生が、パレスチナ難民の現場について国連広報センターのブログに寄稿されている。

ヨルダンの新型コロナウイルス事情についてはこのnoteでもしばしば取り上げている(詳細はマガジンを参照)が、ヨルダンには220万人(UNRWAホームページより)のパレスチナ難民が暮らしている。ヨルダンに派遣されている青年海外協力隊も何名かはパレスチナ難民キャンプ内で活動していたので、キャンプ内の様子について時々話は聞いていたが、新型コロナウイルスが世界中で拡大する中、難民キャンプ内がどのような様子になっているのか、恥ずかしい限りだが情報収集を怠っていた。

清田先生の報告によれば、5月14日時点で63名のパレスチナ難民が新型コロナウイルスに感染しているとのことだ。数としては多くはないが、感染者が日本のような医療サービスを受けられるとは限らない。レバノンで新型コロナウイルスに感染したパレスチナ難民の方は、レバノンの公的な医療保険を持つことができず、高額な医療費を負担することが難しかった。最終的にはUNRWAが治療費を支払うことで治療を受けることができたとのことだ。3割負担が当たり前の日本とはわけが違う。

感染していないパレスチナ難民についても、生活は過酷なものになっている。ヨルダンでは新型コロナウイルス対策のため、県境封鎖や外出禁止令、経済活動の凍結など、強力な封じ込め策を3月から実施している。それらの効果もありヨルダンでは現時点で感染爆発は免れているが、これらの政策のしわ寄せがパレスチナ難民にも来ている。ヨルダンに住むあるパレスチナ難民の女性は、今回の新型コロナウイルスの影響で夫が仕事を失い収入が無く、家族で助け合いながらなんとか生き延びているとのことだ。

新型コロナウイルス とその対策は、我々に、我々の社会がどの様なものであるかを問いかけている。近代最大の感染症、そして、公衆衛生史上、恐らく人類を守る最大の戦いである新型コロナウイルス 対策、我々の社会の脆弱な部分が白日の元に晒される。そしてそれは常に、パレスチナ難民の様な社会的弱者を最初に、だ。

私がヨルダンに派遣される前、清田先生の著書「天井のない監獄 ガザの声を聴け!」を読んだ(書籍紹介はこちらを参照)が、その中のある一文が印象的だった。

社会にある問題は弱者の身体・健康状態に凝縮されて現れる。
「天井のない監獄 ガザの声を聴け!」 Page.74

日本だけ安全になればそれで良いわけではない。世界中の人が安全になることではじめて成功となるのであって、社会的弱者を置き去りにしたまま「コロナに打ち勝った」とは絶対にならない。

私がヨルダンにいる間、パレスチナ出身の方には何度もお世話になっている。ヨルダン・パレスチナ地域のアラビア語の方言を教えてくれたのはパレスチナ出身の語学講師である。青年海外協力隊は現地で車の運転は認められていないので、UBERを使うことが多くあったが、パレスチナ出身のドライバーにも何度もお会いした。

ヨルダンでの活動ができない中、国際協力とは一体何なのか考えることが増えたが、今も最前線でパレスチナ難民の生活をサポートするUNRWAの一助になればと寄付をすることにした。少額ではあるが、パレスチナ難民の手に届けば嬉しい。

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