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書籍紹介|イスラム教の論理【JOCV Day187】

イスラム思想の研究者である飯山陽先生の新作「イスラム2.0-SNSが変えた1400年の宗教観-」を先日読み、イスラム教の理解が大きく前進した。そもそもの理解があまりにお粗末であっただけだが。

「イスラム2.0」は2019年11月に出版されたものだが、飯山先生は2018年2月に「イスラム教の論理」というタイトルの本を新潮新書から出版されていた。

「イスラム2.0」ではインターネットとSNSの普及により、イスラム教の"一般信徒が徐々に啓示に忠実な「真に正しい」信仰に覚醒し、原理主義化していく時代(Page 59より)"について述べている。

「イスラム教の論理」ではイスラム教における「真に正しい」信仰とは何か、その解説に重点を置いている。インターネットやSNSの普及により原理主義化が進むことについても、本書の第2章で述べられているが、この点については「イスラム2.0」で詳細に解説を試みている。

どちらを先に読むかは人それぞれだが、日頃SNSに慣れ親しんでいる人であれば「イスラム2.0」の方が比較的ストレス無く読み進められると思う。いずれの本も、コーランやハディースといったイスラム教の啓示を丁寧に参照し、日本を含む西側諸国の論理とは相いれないイスラム教の論理を、読者に突き付けてくる。読み進めるには覚悟と体力が必要だと感じた。

イスラム国でのルールや、イスラム教が多数を占める国での政策を取り上げながら、それらの根底にあるイスラム教の論理を、コーランやハディースといった啓示を参照しながら解説している。

「イスラム国」の主張していることのほとんどすべてに、そもそもオリジナリティーはありません
(Page 42より)

「イスラム国」のあらゆる主張や行為は私たちから見れば不法で不当ですが、イスラム教の論理においては合法で正当なのです
(Page 158より)

先日、ヨルダン国王がイスラム国の再興に警鐘を鳴らした。フランス通信社が報じている。

ヨルダン国王もイスラム国の構成員も、いずれもイスラム教徒であり、参照するのはコーランであり、ハディースである。

イスラム教徒が大多数を占める各国のリーダー、穏健派のイスラム教徒は、イスラム教の論理と国際社会のルールの板挟みの中にいると言える。

結局は穏健派法学者と政治権力とが結託して過激派をやり込める道をとることになります。
(Page 30より)

現在イスラム教徒の多くは(中略)イスラム法の規範と世俗的な規範との折り合いをつけて暮らしているといえます。
(Page 229より)

飯山先生の2つの著作に触れ、ヨルダンで生活をしているだけでは分からなかったであろうイスラム教の論理について理解が深まった。

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