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植物紹介|サルコポテリウム【JOCV Day149】

配属先の植物園では数百種類の植物が育てられている。ヨルダンは日本と緯度が近く、四季もある。しかしながら降水量が少なく、国土の半分以上が砂漠である。土壌のpHも、日本が酸性土壌であるのに対しヨルダンはアルカリ性土壌である。そのため日本では見られない植物も多い。

学術名・アラブ名を覚えるのも一苦労いなので、私の個人的な勉強も兼ねて、時々noteでヨルダンの植物を紹介してこう。

初回で取り上げるのはサルコポテリウム・スピノサム(Sarcopoterium spinosum)。アラブ名では "(نتش** (بلان"と言うが、植物園の人は学術名で言っていることの方が多い。英語の一般名は "prickly"や **"spiny"。日本語では「トゲワレモコウ(棘吾亦紅)」と言う(今調べた)。

バラ科サルコポテリウム属の植物。ちなみにサルコポテリウム属にはサルコポテリウム・スピノサム(Sarcopoterium spinosum)しか見つかっていないようだ。

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ヨルダンに来て惚れた植物の一つ。地上部の形がまずかっこいい。

"spinosum" にはラテン語で「棘の多い」という意味がある。文字通り棘が多いのだが、これは茎が変形してできたもの(Flowers in Israelより)。年間通じて葉をつけ、春に花が咲き、秋に種を付ける。写真は11月に撮影したもので、球形の果実が付いている。

地中海、中東に広く分布している。森林、低木地、砂漠など、生息環境も広い。パレスチナ、イスラエル、ヨルダンあたりの地域が原産とされている。

自然保護の業界に必ずといって良いほどつきまとうのが原産国の問題だが、少なくとも私が出会ったヨルダンの人からは、外来種を徹底排除しようというヒステリックな姿勢は全く見られない。日本は島国ということもあってまだ頑張れてしまう余地があるのかもしれないが、ヨルダンでこれをやると発狂してしまう気がする。大陸国ならではの緩さなのだろうか、とても良い。

聖書に登場する植物の一つがこのサルコポテリウムではないかと言われている(これもさっき調べた)。

トゲワレモコウは、トゲハマナツメ(別名:キリストイバラ)とともに、イエスが処刑された時に頭にかぶせられた茨の冠の「イバラ」の可能性がある。(廣部千恵子『新聖書植物図鑑』, 31参照)
聖書植物園ホームページより

私も植物園のサルコポテリウムの手入をするときに棘に何度かやられたことがある。頭にかぶるのはごめんだ。だから処刑の時にかぶせられたのか?

個人的にお気に入りの植物の一つなので、春に花が咲いたら生理学・形態学の側面からもう少し調べてみたい。

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