見出し画像

植物紹介|シクラメン【JOCV Day167】

ヨルダンの植物を不定期で纏めていく企画で、今回が2回目の投稿となる。初回はサルコポテリウムを取り上げた。

今回取り上げる植物はシクラメンである。学術名は"Cyclamen persicum"と言う。学術名がそのまま一般呼称になっていて、人的には覚えやすいので嬉しい。アラビア語では"بخور مريم"と言う。

篝火花(かがりびばな)という和名もある。「篝火」というキーワードで画像検索をかけてみたが、昔の人がなぜシクラメンを篝火に例えたのかを理解できる感性を私は残念ながら持ち合わせていなかった。

豚がシクラメンの球根を食べることから、英語名で「豚のパン(sowbread)」という名前が付けられている。ムスリムの前でこの名前を使うのはやめた方が良さそうだ。また「死苦ラメン」とも読めてしまうため、お見舞いの花としては控えたほうが良いとのこと。

日本でも数多く栽培され、流通している。多くの人が一度はシクラメンという名前は聞いたことがあると思うが、地中海地域の東側のレバント地域が原産と言われている。原産国についてはイスラエル、シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダンなど諸説ある。

余談だが、原産国がレバント地域と言われている植物種はシクラメン以外にもいくつかある。レバント地域の各国が自国が原産だとは言うが、それほど激しく争っているとは、少なくとも植物園の同僚からは聞かない。陸続きなので、決着をつけることに無理があるのだろう。

さらに余談だが、伝統料理の発祥についてはレバント地域で揉めている。フンモス(ひよこ豆のペースト)とファラーフェル(ひよこ豆のコロッケみたいな料理)をめぐってレバノンとイスラエルが争っていたりする。オリジナルをめぐる問題は社会のあらゆる階層でありそうだ。

さてシクラメンだが、今日のヨルダンにも生息しており、私は先日訪れたウンム・カイスで見かけた。聖書で書かれている植物がシクラメンではないかという主張もあるようだ。

画像1

ヨルダンでも日本でも、秋から冬にかけて花が咲く。夏は水を与えなければ休眠状態に入る。

画像2

ウンム・カイスでみかけたシクラメンは岩の隙間に生えていたが、栽培する場合はプランターでも十分可能である。

花も綺麗で葉の模様も美しいので、園芸用として流通し、様々な品種が生まれている。日本での栽培は大正に入ってから本格的に行われたようで、岐阜県恵那市の伊藤孝重が第一人者だったようだ(イズミ農園「シクラメンの歴史」より)。

多くの植物が春先に開花する中、シクラメンは冬場に花を咲かし、レバント地域の冬の景色に数少ない彩りを与えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?