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細胞の分子生物学、8年ぶりの改訂第7版。

分子生物学や細胞生物学を学ぶ学生にとってバイブルとも言える教科書の一つに「細胞の分子生物学(Molecular Biology of THE CELL)」があるが、8年ぶりに改訂され、今月第7版が発売された。

私が大学入学した2012年頃には第5版の日本語翻訳版が出ていて、2015年に原著第6版が発売された。1,000ページ以上ある重い本で、第5版は学生の間で「赤い鈍器」と呼ばれたりしていた(表紙が赤色だったから)。

思い入れの深い教科書なので、新しく出た第7版を購入し、第6版と見比べてみた感想を綴っていこうと思う。

構成は第6版から変わらず全24章で大きな変更は無かった。第6版から第7版まで8年の期間があるため、この間に細胞生物学、分子生物学の分野で明らかになったことや発展した技術等が追加されていた。ページ数も1,342から1,404へボリュームアップしている。個人的に気になった項目は以下の通り。

<細胞内相分離、生体分子凝集体>
第6版で全く取り上げられなかった領域だが、第7版では第3章「タンパク質」で図表5つ使って解説され、これ以外の章でも記載。おそらく大学の分子生物学、細胞生物学の授業でも体系的に学ぶことになったのはかなり最近、あるいはもう少し先になるかもしれない。
CryoEM(クライオ電子顕微鏡)>
タンパク質の立体構造を解析する技術の一つ。第6版では技術の紹介程度だったが、第7版ではより詳細に記載。またCryoEMで取得したタンパク質の立体構造の図も多く掲載されている。
PP2A-B55, PP2A-B56
細胞周期を制御するタンパク質およびそれらの相互作用で、4つの図表を使って丁寧に解説されているが、第6版では全く取り上げられていなかった。
<ヒトのマイクロバイオーム>
第23章「病原体と感染」で、ヒトマイクロバイオームに関する記載が新たに3ページ分追加されていた。

また、SARS-CoV-2とCOVID-19に関する記載も多かった。2022年に出版する分子生物学の教科書として、これらを無視するわけにはいかないだろう。SARS-CoV-2の感染機構、PCRでSARS-CoV-2を検出する方法、ワクチンのメカニズムなど、多くの章で取り上げられていた。

8年ぶりの改訂ということで、第6版と見比べることで細胞生物学、分子生物学の進展を垣間見ることができた。新しくインプットが必要な領域、かつて覚えていたが今はすっかり忘れてしまった項目なども出てきた。短期集中で理解できるものでもないので、ゆっくりと読み進めていこうと思う。

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