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【論文紹介】BMIとCOVID-19の重症化リスク~690万人を対象としたイギリスの調査~

BMIとCOVID-19の重症化リスクに関する報告が4月末に出てきた。イギリスの690万人を対象とした大規模調査である。

Associations between body-mass index and COVID-19 severity in 6·9 million people in England: a prospective, community-based, cohort study
(英国の690万人におけるBMIとCOVID-19重症度との関連:前向きなコミュニティベースのコホート研究)
Min Gao et. al., 2021, The Lancet Diabetes and Endocrinology

論文はオープンアクセスで誰でも閲覧可能だ。国立国際医療研究センター病院の感染症医である忽那賢志先生が、Yahooニュースでこの論文をされている。

BMIとはBody Mass Index(ボディマス指数)のことで、人の肥満度を表す指数である。体重(kg)を身長(m)の二乗で割ることで算出できる。テニスの錦織圭選手は、身長178 cm、体重73 kg(Wikipediaより)なので、錦織圭選手のBMIは、【73 ÷ (1.78)^2 ≒ 23】となる。同じ身長の場合、体重の増加に伴いBMIは増加し、逆に体重が低いとBMIも低くなる。

このBMIが肥満度を示す指標として使われている。日本肥満学会の定めた基準は以下の通り。

18.5未満・・・「低体重(やせ)」
18.5以上25未満・・・「普通体重」
25以上・・・「肥満」

このBMIに基づいて、罹患率や重症化リスクの相関を調べる研究が多くなされている。BMIと新型コロナウイルス感染症の重症化に相関があるかどうかは多くの研究者が着目しており、今回の論文はイギリスでの大規模調査の報告である。

QResearch databaseというデータベースから抽出された約690万人を対象に解析が行われている。全対象者の平均BMIは26.78。このうち0.20%が新型コロナウイルス陽性反応が出た後に入院し、0.02%がICU(集中治療室)に入室し、0.08%が死亡している。

図1

論文Figure.1より(一部改変)

横軸がBMI(16~44)、縦軸がハザード比を表しており、ハザード比が高いほどリスクが高いことを示唆している。

図2

はじめに陽性発覚後に入院するリスクだが、BMI22~24あたりが最も低いハザード比となっている。論文中では、BMI23より上において入院リスクは増加すると述べられている。肥満度が高いほど入院リスクが高いことを示唆している。また、BMIが20より低くなるにつれハザード比が上がっているので、痩せすぎも入院リスクが増加するように見える。

図3

続いて集中治療室への入室リスクを示したグラフ。こちらはBMI全体において、BMI増加に伴いハザード比が増加している。BMIが26を超えたあたりでハザード比の増加率が急になっているように見える。

図4

最後に死亡リスクを示したグラフ。死亡に関してはBMI26付近で最もリスクが低くなっている。論文中ではBMI28より上で死亡リスクが増加すると記載されている。入院リスクと同様、BMIが20を下回るとリスクが増加するように見える。


論文の内容はここまで。痩せすぎず、太り過ぎず、自身の適正体重をキープすることで、感染した際に重症化することを防ぐことができるかもしれない。重症化しやすい高齢者の場合、肥満はもちろんリスク増加に繋がるし、喫食率が低下すること等による体重低下にも気を付けなければならないだろう。

イギリスと日本とではBMIと重症化リスクとの相関も異なってくるかもしれない。今回の調査対象者約690万人の平均BMIは26.78と、日本肥満学会の基準に照らせば「肥満」の値だ。日本人で括った場合、平均BMIはより低くなるのだろう。日本人を対象とした調査結果の報告も待たれる。

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