20240615『羊子と玲 鴨居姉弟の光と影』

好きな画家

鴨井玲に惹かれたのは、比較的最近。
それまで、好きな画家は? と聞かれる度、答えに窮していました。
たしかに神戸で見た小磯良平は良かったですよ。
そう。明るいものや、色彩感覚に優れていた絵が好きなはずでした。

けれども、とことん暗い鴨井の絵に心を掴まれたのは何故?
他には決してないものが、そこにあったから。
現物や画集に目を凝らす。重く塗り重ねられた赤の中に、描かれなかった瞳の奥に、言葉にできないような表情の裏に、何かが写っていました。
あなたも見れば、きっとわかるはず。

画っ家りだよ!

まず気になったところ。それは、心理描写の薄さ。(このnoteもだいぶ薄いですが)
自殺シーンから始まる本作ですが、彼の苦悩や葛藤を非常にさらっと、わかりやすく描いています。
あの絵を描ける人間がそんな単純なはずないのに。

(そもそも、鴨井玲自身が「誰より人に理解されたいけど(『私の話を聞いてくれ』)、人の理解を拒みたい」という気質があるような気がしてなりません)

もちろん、羊子と玲の姉弟、それ以上の関係を中心に鴨井玲の生涯を知る、といった意味では非常に平易で良い本と思います。
長兄の明さんや宮本三郎さん、司馬遼太郎さんなどの周囲との関わりは知らなかったことが多く、そういう意味ではとても面白く読めました。

り絵画ある人の存在

彼はどんな懊悩の過程を経て、どうしてあんな作品を産み落としたのか。
それには、本書の通り悲劇的な最期から紐解いた方が良いでしょう。

「死にたい」なんて思ったことがないので、なかなか想像がつかないですけれど。鴨井玲は絵の才能があって、周りに暖かく支えてくれる人たちがいて、顔が良く異性にもモテて……。ううむ、言ってて遣る瀬無くなってきました。絶望的なのは鴨井か私か。

人を描き、自分を描き。
彼の作品の数々を見ていると、
なんとなく、彼は自分の帰る場所を探していたのではないか、と思いました。
自分を理解してくれて、絶対に味方でいてくれる……そんな、心安らかに居られるような存在。
画壇での地位も、宮本三郎さんをはじめ応援してくれる人たちも、愛してくれたトミさんですら、彼を慰めるには足りません。

たったひとり、血の繋がった姉で最高の理解者、羊子さんを除いて。
ずっと一緒に戦ってきたのに、けっして一緒にはなれないからこそ辛かったのでしょう。今はそんなふうに考えています。

「ダーリン、ダーリン、スターン、バイミー」
口ずさんでいたのは、羊子さんだけでなかったはず。

好きな音楽系Vtuber

Stand by Me

もう一つ、私の好きを開示しておきます。
忘れないうちに、消えないうちに。

SALLA.R(ちょっと変な部分があるかもしれません、気にしてはいけない)

この名前を憶えている人ももう少なくなりましたね。
『羊子と玲』中に何度も登場する名曲スタンド・バイ・ミー

SALLAを初めて聴いたのは4年ほど前。
Stand by Meという絶妙な選曲とSALLAの綺麗な声がぴったりと合っていて。
サムネイル画像も最高で……と語ると長くなりますし自重。
当時は20万再生ほどでしたが、あっという間にミリオンを突破しましたね。

新しく公開されたSeptemberのカバーも最高で、一気に彼女のファンになりました。One more time, One more chanceをはじめとする邦楽も、選曲のセンスがキラリ心地よく。

毎月新しいカバー曲を待つ時間も楽しくて。
たった一つの初のオリジナル曲『SALLAのうた』が公開されたときは感極まりました。(もうひとつ『わたしのきもち』がありました、バカバカ!)
それが、ある日突然、更新を停止してかわりに変な動画がアップされはじめ……。今まである動画は復活したものの、新作は絶望的な状況となりました。

そんなこんなで、SALLAのStand by Meを記事執筆のお供に聴いていると、昨日あたりにほとんどの動画が、ひっそり非公開になっていることを確認しました。
各種サブスクリプションは無事ですが、これもいつまで残ってくれるか分かりません。
20240609午後、復活を確認。ありがたいですが、またいつ見れなくなるか分からないのが怖いですね。

SALLAの声を聴きながら、いろんなことに対してなんとなく納得しました。
やっぱり人には心安らかに居られる場所を見つけたい、という根源的欲求がある。そんな気がして。

いかないで、置いていかないで。
Darlin’ darlin’ stand by me.
Oh stand by me.

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