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【東北楽天🦅】マッピングによるリリーフ分析 2022→2023

おばんです。ましと(@mashito_7)です。

今回は先日の「ロバートさん式先発マッピング」によるチーム分析、中継ぎ投手編です!


👉「ロバートさん式先発マッピング」とは?
中日ドラゴンズの選手分析を専門に数多くの媒体に寄稿されており、現在はRapsodo Japan社においてデータ分析の最前線でご活躍されている ロバートさん@robertsan_CD)が考案した分析手法。
リリーフ投手版は、「救援登板試合数」「ホールド数+セーブ数の合算」を用いて、リリーフ陣の運用を分析します。




① 2022年シーズン 救援投手成績概説

松井裕樹や西口直人のタイトル争い、そしてルーキー宮森智志の記録的な快投が記憶に新しい2022シーズンのイーグルス救援陣。チーム単位での成績はどうだったのでしょうか。

【図1】2022年パリーグ チーム投手成績(筆者作成)
【図2】2022年パリーグ イニング別失点(筆者作成)
【図3】楽天チーム投手成績推移(筆者作成)

リーグ最下位だった先発防御率に対して、救援防御率はリーグ平均を少し上回るまずまずの安定感でした。ただ、抜群の安定感を誇った西武やオリックス、ソフトバンクの指標と比較すると、イメージ以上にイーグルスとの戦力差が大きいことが分かりました。
また、「救援平均起用人数」と「救援平均投球回」に着目すると特に昨季はリリーフ投手への依存度が高かったことが分かります。防御率がリーグ最下位だった先発陣をカバーしたことも影響していると推察されます。




② マッピングによる分析

【図4】2022年版 ロバートさん式リリーフマッピング(筆者作成)

さて、ここからは「ロバートさん式リリーフマッピング」を用いてブルペン陣の状況を見てみます。

グラフのx軸は「救援登板試合数」、y軸は「ホールド数+セーブ数の合算」を表しています。数値から、各投手のチーム内でのおおよその立ち位置を可視化することができます。
これらのデータは一定の基準により以下の通りに分類されています。

(青色)【抑え・セットアッパー】   
50試合登板以上 & H+S=20以上
(黄色)【Aチーム】 
20~49試合登板 & H+S=10~30
(緑色)【Bチーム】 
20~49試合登板 & H+S=10未満
(灰色)【育成・その他】 
~19試合登板 & H+S=10未満

昨年は20試合登板をクリアした投手が10名。
うち4名が50試合以上登板しました。

リリーフ陣の中心的存在として、自身2度目の最多セーブ賞を獲得した松井裕樹が抑えに君臨し、リードする場面で9回へ繋ぐ役割を担った西口直人宋家豪らセットアッパーが安定感ある投球を続けました。

一方で、実績のあるブセニッツ酒居知史は故障の影響(ブセニッツ:5月に右甲骨骨折、酒居:開幕前に右太もも筋損傷)で出遅れ、安樂智大は2年連続で50試合登板をクリアするも防御率が大きく悪化(2021年 2.08→2022年 4.38)し、勝ちパターンの座を手放しました。

開幕から2軍の抑えとして起用された育成1位ルーキーの宮森智志は、7月末に支配下登録を勝ち取ると以降1軍のリリーフ陣に加わりました。
そして、新人初登板から22試合連続無失点のNPBタイ記録を樹立するなど圧巻の投球を繰り広げ、ニューヒーローとして大きく名を挙げました。終盤戦には僅差の重要な場面を任されるなど、今季の起用法には期待が集まっています。

また、パリーグ日本人左腕最速の155キロを計測した鈴木翔天や、フォークを武器に開幕1軍入りを果たしたドラフト6位ルーキーの西垣雅矢、状況に合わせてロングリリーフ等の役割を担った石橋良太らは【Bチーム】としてブルペンを支えました。

参考【図5】2021年版 ロバートさん式リリーフマッピング(筆者作成)




③ 2023年 ブルペン展望


ブルペン陣は入れ替わりの激しいポジション

【図7】年度別 リリーフ登板数上位10投手(筆者作成)
(※黄色掛けの投手は「入れ替わり」:当該シーズンより10傑入り)

消耗の激しい役割であるリリーフ投手というポジションの戦力構想において、不調や勤続疲労による故障のリスクは無視できません。リーグを代表するような優れた投手であっても、毎年のように高いパフォーマンスを維持することは簡単ではありません。ブルペン陣は他の先発陣や野手以上に毎年の入れ替わりが激しいポジションであるといえます。

例えば、2022年シーズンのイーグルス救援登板数上位10名は、前年から4名が入れ替わりました。(森原,福山,福井,牧田  ⇒ 翔天,石橋,宮森,西垣)

こうした入れ替わりを理解した上で、毎年のように「新戦力の補充」「現有戦力のマネジメント」を同時に進めていくことが必要です。以降は、この2つの視点に着目して今季の展望を考えていきたいと思います。



2023ブルペン構想「今年のニューヒーローは誰だ?」

【図6】リリーフマッピング:2023年想定(筆者作成)

オフシーズンの主な(リリーフ)投手入れ替え
OUT
A.ブセニッツ(32) 昨季34登板 ⇒レッズ(マイナー)
渡邊佑樹(27) 13登板 ⇒ソフトバンク
福井優也(35) 11登板 ⇒BCL福島
福山博之(34) ⇒引退(球団スタッフ)
釜田佳直(29) ⇒引退(球団スタッフ)
寺岡寛治(30) ⇒引退(球団スタッフ)
IN
小孫竜二(25) 鷺宮製作所(ドラフト2位)
渡辺翔太(22) 九州産業大(ドラフト3位)
伊藤茉央(22) 東京農業大オホーツク(ドラフト4位)
林優樹(22) 西濃運輸(ドラフト6位)

今季もブルペン陣の中心は、抑えの松井裕樹西口直人宋家豪の3人が引き続き担っていくことが予想されます。
松井は今季中に海外FA権の取得を見込んでおり、4年契約が満了するシーズン終了をもってMLBに挑戦する可能性が濃厚です。好不調の波がありながら8シーズンに渡って投げ続けた守護神の夢を後押しするとなると、今季は編成・現場ともに「ポスト松井」の選定がテーマとなりそうです。

また、【Aチーム】では昨季34登板・14HPを記録したA.ブセニッツがチームを去りました。代わりに獲得したM.バニュエロスは先発タイプで、開幕ローテーション入りに向けた調整が行われていることから、編成面ではブセニッツ退団の穴が埋められていない現状です。

この穴を埋める存在として、実績のある安樂智大酒居知史の復調に加えて、昨季ブレイクした宮森智志鈴木翔天の活躍が期待されます。
宮森は今季も新人王の資格を有しており、シーズンを通して昨季同様の活躍を続けることで、念願のタイトルも見えてきます。

【Bチーム】は石橋良太津留﨑大成、プロ2年目を迎える西垣雅矢吉川雄大の定着に加えて、新戦力への期待も高まるポジションです。とくにドラフト組では先発編でも紹介した2位の小孫竜二に加えて、3位の渡辺翔太、4位の伊藤茉央が有力候補です。

渡辺翔太は最速151キロの本格派右腕でありながら、揺れるように不規則に落ちるパームボールの使い手でもあります。
伊藤茉央はチームでも希少なサイドスロー右腕で、右打者にはスライダー、左打者にはシンカーで翻弄します。
2人とも変化球の質の高さに定評のある投手で、アピール次第では1年目から1軍での活躍が期待されます。


簡単にまとめると…

・【抑え・セットアッパー】3名程度
⇒ 松井、西口、宋の体制は継続か
・【Aチーム】2~3名
⇒ ブセニッツの穴埋め
  安樂・酒居の復調&宮森・翔天に期待
・【Bチーム】4~5名
⇒ 石橋・津留﨑・西垣・吉川 +新戦力の台頭
・「ポスト松井裕樹」の選定
⇒ 西口・宋・宮森あたりが候補?



「勝ちパの負担を減らす」提案 

~吉井ロッテ・中嶋オリックスに見る“レバレッジ方式”~ 

👆 参考文献(イツモオセワニナッテマス)


不調や勤続疲労による故障のリスクが高いリリーフ陣は入れ替わりが激しいポジションであることは先に述べた通りです。その上で、主力投手に息長く活躍してもらうためには、特定の投手への依存を避けるなど、投手にかかる負担を分散・軽減させる運用が必要です。
ここでは、「現有戦力のマネジメント」に関して近年他チームで取り組まれている「レバレッジ方式」の導入事例を参考にして、簡単にまとめてみたいと思います。


昨今のパリーグで先進的な投手運用をしているイメージがあるのは、中嶋監督率いるオリックスと、吉井新監督が就任したロッテです。

オリックスは3連投した投手が極端に少なく、2021年は1度もなし、2022年はたったの1例でした。徹底的な管理によって疲労が分散されたリリーフ陣を武器に日本シリーズを勝ち上がりました。

抑えなどの「勝利の方程式」は置きつつも、シチュエーションに応じた柔軟な投手起用を行うことで、特定の投手への負担を抑えつつ、チームが勝利する確率を少しでも高めることを可能にしています。

ロッテは今季から名投手コーチとして知られる吉井理人氏が監督に就任し、早速「レバレッジ方式」というリリーフ運用方式を掲げたことで話題になりました。
春季キャンプ時点で詳細な内容は明かされていませんが、コーチ時代から革新的な取り組みを行ってきた吉井新監督による、投手マネジメントの応用版であると推察されます。

オリックスの徹底したブルペン管理と、ロッテ吉井新監督が提唱する「レバレッジ方式」に共通している部分は、従来の「勝利の方程式」にかかる負担を分散・軽減させることを目的にした運用であるということです。

【図7】3球団のリリーフ投手陣比較(筆者作成)

上図は、2チームとイーグルスの主力投手陣に関して、登板試合数と連投状況(日付ベース)を比較したものです。

イーグルスは主力リリーフ陣のほぼ全員が3連投を経験しているのに対して、オリックス・ロッテは3連投を経験した投手がたった1人と、3連投に対する方針の違いが大きく異なります。

また、イーグルスは50登板した投手が4人おり、「勝利の方程式」の集中的な起用が見られますが、オリックスはリリーフ陣の登板数がうまく分散されています。今季のロッテもオリックスのような傾向が見られることでしょう。


ことしのブルペンスタッフ

「じゃあ、ウチもやろうや」と、そう簡単にはできなさそうですが、球界のトレンドとして浸透していくようであれば、近い将来取り入れていくことになりそうだと思っています。

昨年のオリックスの例を挙げると、本来ならば “「勝利の方程式」の職場” である僅差の場面で、宇田川優希や阿部翔太といった経験の浅い投手を思い切って起用していました。
こうした起用法を成立させる前提条件として、主力リリーフ陣と実力が乖離しない投手を複数人用意する必要があり、整備のハードルは低いものではありません。

仮に松井裕樹が流出すると、イーグルスのリリーフ陣は偉大な守護神を失うと同時にポスト松井の抜擢を含む再整備期に入ります。「役割を固定しない」新しいブルペン整備の可能性も頭に入れながら、今後のリリーフ陣に注目していきたいです。



④ まとめにならないまとめ

今回は少し背伸びをして、他球団の運用手法にも首を突っ込んでみたりもしましたが、いかがだったでしょうか。

イーグルスは松井・西口・宋らをはじめとしたリーグ屈指の実力派リリーバーが在籍するチームですので、アクシデントなくシーズンを完走できれば、リーグでも上位の指標を叩き出せるポテンシャルは持っていると思います。
健康第一。そのための投手マネジメントであり、「レバレッジ方式」なのかなと感じました。

今年のマッピング分析はとりあえず終わりです。
本来ならシーズン終了直後にすべきところですが、サボっていた結果、今年はキャンプ中の執筆になったため開幕に向けた戦力構想に関しても触れることができたので充実した分析になったのかなとも思ったりします。

来年も忘れなかったらやりますー。

それではー。


【データ引用元】
・nf3 様
 https://nf3.sakura.ne.jp/index.html 
・データで楽しむプロ野球 様
 https://baseballdata.jp/
(最終閲覧日:2023年2月26日)

※記事中の年齢は今季開幕時点


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