【Bs投手分析】中継ぎ編:大阪の「ユニバ」はBs暴力リリーフだ!
今回も投手分析note、中継ぎ編です。
多角的な視点とデータ分析で、今や中日新聞社やSLUGGERさんなどで記事を執筆、中日界隈どころかプロ野球界隈をも牽引するロバートさん(@robertsan_CD)が、2019年度オフに作成した【ロバートさん式先発マッピング】。
投球イニング・QS率からそのチームの先発投手層を分析し、その結果によって個人・チーム単位での先発健康度を測れるというものです。
今作は中継ぎ編。2022年の答え合わせと2023年の中継ぎ投手の展望noteになります。
先発編はこちら👇🏻
1.2022年の振り返り
21年度はパ・リーグ5位だった中継ぎ防御率は、今季は久々に2点台に突入するなど充実した1年に。
日本シリーズで見せた「暴力投手陣」の印象が強いですが、以外にも中継ぎ防御率は3位に落ち着くなど、前半戦と後半戦でメンバーが流動的だったことや、中嶋監督の割り切った起用法で効果的にリソースを使えていたことが示唆されています。
好調を支えたのは、中嶋 聡監督・髙山 郁夫投手コーチら首脳陣の「中継ぎ陣に3連投をさせない」絶妙な継投策。21年シーズンは3日連続登板の中継ぎが0の状態でシーズンを完遂し、今年も山﨑 颯一郎投手のー度きり(9/18-20)きりに留めています。
徹底的に管理されたブルペンワークこそが、経験値の少ない剛腕右腕にとってコンディションを維持できていた要因なのは間違いなく、対象的な継投策を採っていたソフトバンクや楽天を抜き去って、最大11.5ゲーム差(96年巨人の "メークドラマ" と同じゲーム差)あったところからの大逆転優勝を成し遂げられた要因でした。
ただ単に数字上で「意地でも3連投をしない」という頑固な固執ではなく、終盤戦の落とせないターニングポイントで3連投を解禁したり、日本シリーズでの宇田川 優希投手らの回跨ぎ&連投の「魂のリリーフ」に表れているように、『勝負所で一気に仕掛ける』柔軟さを持ち合わせていた点も誇れるところです。
昨季のnoteでも記載しましたが、このような徹底的に管理されたブルペンワークは、酷使▶︎破壊▶︎次の選手を酷使という "負のループ" を断ち切ることができ、また翌年度以降の疲労や怪我を未然に防ぐことも期待できるので、昨年からの継続が実った『ブルペンワークでの全員の勝利』と言えるでしょう。
今年は、21年度のマッピング時点で左下に配置されている投手や、そもそも名前すらない投手が多く躍進したシーズンになりました。
次から次に150km/h後半〜160km/h代の重いストレートと、140km/h代で鋭く落ちる変化球を武器にする投手が出てきて、相手打者に付け入る隙を与えないで制圧する姿は、「暴力リリーフ陣」と他球団から恐れられています。
「暴力」と言うと、ソフトバンクの投手陣が先駆者ですが、それに追いつけ追い越せで高いポテンシャルが発揮されたのが22年シーズンだったと思います。
具体名を挙げると、最速160km/h右腕の山﨑 颯一郎投手、自己最多42登板の本田 仁海投手は、21年度時点ではそれぞれ「期待の先発候補」としての立ち位置でしたし、"社会人野球の星" 阿部 翔太投手は、故障離脱の影響で4登板。日本代表にも選出された宇田川 優希投手は、そもそもこの時点では育成選手で、一軍登板経験すらない状態。これらの実績のない投手が中嶋監督の下、次々にシンデレラストーリーを起こしたのです。
終盤戦に勝ちパターンを形成していた、U宇田川 優希投手、山﨑 S颯一郎投手、Jジェイコブ・ワゲスパック投手の総称を、大阪の某テーマパークに準えて「USJ」と称されることがあります。この3人の中継ぎ登板数は、21年度は3人合わせてたった1試合ですから、いかにニュースターの台頭が目立った明るいシーズンかがお分かりいただけるかと思います。
目立つのはやはり彼らニュースターですが、経験値の少ない彼ら若手リリーフ陣を支えたのは、頼れるベテラン陣でした。
御歳40歳を迎えた比嘉 幹貴投手、来季40歳の平野 佳寿投手の2人は、未だ戦力としても大きな貢献をすると同時に、若手リリーフ陣にブルペンでの肩の作り方やシーズンを戦うコンディショニングなどを、実際に「選手」として同じ目線からアドバイスを送ることができる点でも重要な存在です。22年度限りで現役を引退した能見 篤史投手、増井 浩俊投手、海田 智行投手も合わせ、一軍・二軍を問わず、「普段は明るく、時に厳しく、的確なことを言える存在」は、存在するだけでも価値がある教科書のような選手たちです。
これら、次々に出てくる若手投手の華々しい台頭があり、それを陰ながら支えるのは、かつてセットアッパーや抑えなどでチームの屋台骨を担っていたベテラン陣という構図は、世代交代による転換の成功と同時に、新たな1つの時代が始まったことを実感します。
2.2023年度の見立て
まずは、2022ー23年にかけての中継ぎ陣容の入れ替えを整理。
注目は、能見 篤史投手の現役引退、富山 凌雅投手の左肘トミージョン手術による育成契約への移行(23年はシーズンアウト)、齋藤 綱記投手の日本ハム移籍、ジェシー・ビドル投手の退団に伴い、支配下契約の左投手が5人にまで減ったことです。うち、宮城 大弥投手、田嶋 大樹投手、山﨑 福也投手、曽谷 龍平投手はいずれも先発投手を務める予定のため、今季は左の中継ぎは山田 修義投手だけになります。
これは、中嶋監督の「ワンポイントだけの投手は要らない」という言葉の通りでしょう。
中継ぎ投手も左投手だろうが右投手だろうが1イニングを投げないと戦力にならない、左打者も右打者も関係がなく抑えてもらわないと困る、ならば右投手も左投手も力があれば関係ない、と文脈が繋がるのではないかと推測します。
編成ヲタクやドラフトヲタクの方々にありがちなのが、『このチームは左の投手数が少ないので、左投手が必要』という意見です。
もちろん、いないよりは居る方が良いのですが、だからと言って利き手を優先する余り、「左手で投げているだけの人」を採るとそもそも戦力になりません。左利きの人間の絶対数が少ない以上、トレードでもドラフトでも希少性の高い左腕投手の価値・指名順位が上がりやすく、また「仮に右投手なら引っかかっていない能力」の選手でも左投手なのでドラフト下位ながらプロ入りできる、という事例もあります。が、今のオリックスは、それを止めて純粋に打者を抑えることができる球の強さを持つ投手を求めているということです。
言い方は悪いですが、サイドスロー左腕として、二軍では若手打者・ルーキー打者を相手に "初見殺し" で無双していた齋藤 綱記投手が、一軍では完成度・制球力が一軍水準に足りずに何度も打ち込まれ、オフに日本ハムにトレード移籍となったことが、それを示しているように思います。
中継ぎ左腕では、遂にただ1人の生き残りとなった山田 修義投手も、必殺のスライダーと逆の変化をするシュートの習得で、昨季不振だった左打者対策の幅を拡げるなど「1イニング」に拘ったオフを過ごしていることが分かります。
万全なら12試合登板に留まる選手ではないので、あらゆる起用法に応える潤滑油として、今季の復調を期待したいところです。
また、台湾代表の張 奕投手が、FA移籍で加入した森 友哉選手の人的補償選手として、埼玉西武に移籍。
西武は、現役では呉 念庭選手が在籍し、過去にも「オリエンタルエクスプレス」の愛称で親しまれた郭 泰源投手以降、沢山の台湾人選手を抱えてきたノウハウのあるチームなので、個人的にはどこか納得感を感じたと同時に、チャンスを貰って頑張って欲しいなと思います。
外国籍選手では、196cmの大型左腕であるジェシー・ビドル投手が退団。21年に途中加入のセサル・バルガス投手も退団。
ビドル投手は、長身から強烈な変化量を持つカーブはかなり有効だったのですが、2ピッチのもう1つの軸であるストレートが空振りを奪える球質ではなかったので、打者に粘られて四死球が嵩んだり置き球を痛打されたことが、日本野球に適応できなかった要因に思いました。
一方、中継ぎに転向したジェイコブ・ワゲスパック投手を補う形で、新外国籍選手としてジャーレル・コットン投手を獲得。
例年、オリックスに来る外国籍選手は190cm以上ある選手が殆どで、球速と発射角の高さ(角度)をスカウティング条件にしている節がありましたが、今年は日本人投手に大型投手が多く在籍しているということで、今年獲得したコットン投手は外国籍選手では珍しい身長180cmと小柄な投手。
ここまでではないですが、180cm代となると18年に在籍したゴンザレス・ヘルメン投手以来でしょうか。ヘルメン投手と同じく、ストレートに特段の強みはないものの、独特の軌道・速度で変化するチェンジアップが武器の投手で、「暴力リリーフ陣」と呼ばれる選手の補完的な役割を担うことが期待されています。
予想布陣として勝手に自分が挙げていますが、実際は本田 仁海投手、近藤 大亮投手、吉田 凌投手など、ここに名前のない投手の中にも三者三様な多くのタレントが控えています。
そして、今回は敢えて「役割」を記載しませんでした。これは、勝ちパターンを固定しての投手起用を敢えて行わず、得点差や打順の巡り合わせなどその時のシチュエーションに応じた投手起用を行うことで、勝利の確率を上げつつ特定の選手に負担が集中しないように配慮する継投策(継投レバレッジ)を採ることが予想されるからです。
吉井 理人監督(千葉ロッテ)辺りからNPBでもこの考え方を採り入れる指導者が増え、共にリーグ連覇を果たした髙津 臣吾監督(ヤクルト)や我らがオリックスの中嶋 聡監督も採り入れています。
この「継投レバレッジ」を行うには、従来の勝ちパターンの投手の他に、彼らと実力が乖離していない投手を複数枚用意できることが事実上の前提条件になるでしょう。
仮に、勝ちパターンとそれ以外の投手の実力差がかなりある状態で継投レバレッジを行った場合、折角の勝ちパターンが暇人化する "宝の持ち腐れ" 状態です。
オリックスの場合、順当に行けば「USJ」と称される剛腕投手3枚と、既に守護神起用が内々定している平野 佳寿投手が基本軸として君臨し、得点差やコンディション、登板間隔や球数など様々な要素を踏まえて、阿部 翔太投手、ジャーレル・コットン投手を交えていく「6枚の勝ちパターン」方式が採られるように思います。
特に宇田川 優希投手は、昨年夏頃までは育成選手として二軍で投げていた立場から、支配下登録→即勝ちパターンに定着→プレーオフ・日本シリーズでMVP級の活躍→日本代表選出と、あまりにもトントン拍子で階段を駆け登っていき、そこで生じる環境・待遇の変化には彼自身も戸惑いを隠せないほどです。
経験値の少ない投手ということもあり、基本軸として期待するものの、急激な環境変化による心身の不調や日本代表までの蓄積疲労など心配な要素も多々あるので、チームとしてバックアップ体勢や予備戦力も含め、特定の選手に負荷を掛けすぎないように気を配る必要があると思います。
最後に、個人的に今季「第2の宇田川・颯一郎」のようなシンデレラストーリーを描くと期待している選手を紹介します。
それが、高卒4年目の前 佑囲斗投手。既に一軍で主力選手として活躍する宮城 大弥投手、紅林 弘太郎選手と同期入団の選手です。
高校(津田学園)からドラフト4位で加入し、直近では山本 由伸が背負った出世番号の43を背負うなど大いに期待された投手ですが、21年度は球速140km/h前半のストレートと一応投げるくらいの変化球…といった特に特徴があるわけでもない選手でした。ただ、リリース時の手首を立てる形の良さや指での押し込みなど随所に良い動作があり、高卒1年目から奪三振>>イニングを記録するなど陰ながら注目している選手です。
一時期フォームを崩していた時期もありましたが、体幹が強くなり体重の掛け方を掴めてきたのか見違えるほどのスピードアップに成功。
また、高校時代はストレート×スライダーの投手でしたが、プロではスライダーはカウント球程度に抑え、代わりに空振りを奪う球として鋭く落ちるフォークを鍛錬するなど少しずつ「プロで生きる形」が作られてきたように感じます。
春季キャンプの紅白戦(2/12)では、ノックアウトされた川瀬 堅斗投手の後を継ぐ形でイニング途中から登板。
先頭の元 謙太選手にインコースのストレートを完全に詰まらせ力ない投ゴロに仕留めると、跨いだ次の回には来田 涼斗選手を鋭く落ちるフォークで振り逃げ。不運なランナーを背負っても球威は落ちず、平野 大和選手を力ないショートフライに仕留めるなど、彼の中継ぎとしてのポテンシャルが存分に発揮されたように思いました。
宇田川 優希投手や山﨑 颯一郎投手のブレークも、前年のスタッツでは誰も予想できなかったけど「以前からハマった球はすごい球」という選手だったので、投球タイプ的に彼も同じ路線を歩むことを期待したい選手の1人です。もしかしたら今季後半にはオリックスを歓喜の輪に導く中心にいるかもしれません。
3.大阪の「ユニバ」
リーグ3連覇&連続日本一で、本家の某テーマパークや、『大阪のユニバといえばーーー(佐藤 輝明選手大学)やろ!』でおなじみのパチモンからお株を奪う活躍を、「USJ」の3人には期待しています🥺
さて、「ユニバ!ユニバ!」とnoteで連呼しているのと、今回のnoteの締め方が難しいので、本拠地開幕カードとUSJの紹介で終わります。
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「USJ」本家のユニバーサル・スタジオ・ジャパンさんでは、#忘れられない春が要る をテーマに、コロナ禍にて制限された学生生活を送っている学生を対象に、様々な入場チケットや年間パスがお得になる『ユニ春』チケットや、閉園後1時間を学生限定で貸し切るイベントを開催しているそうです(4月6日まで)。
オープン戦や、4/4〜の本拠地開幕カード(vsソフトバンク)の遠征旅行にギリギリ間に合う期間でもあるので、この機会に "日常から少しはみ出して" 素敵な思い出にしてはどうでしょうか🌏
詳しくは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンさんのホームページをご確認ください🌸