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ときたま映画撮影日記●低予算映画とモニターのこと


前回の出張合宿ロケで何を撮ったのか、撮れたのか、はっきりしない。
屋外では映像のモニターがたいへんに見づらいのだ。
明るいところでは、カメラについている小さなモニターでは本当に見えない。
大型モニターなら少しましだが、取り回しがたいへんだ。

モニターはまず、こういうアングルで撮りますよ、とカメラの人が見せてくれる。
(今回の映画、僕は監督専業ではなく出演もしている。
脚本・監督・主演を全部初めてやる、という無謀な企画なのだ。
神をも恐れぬ所業である)
見せてもらってもああだこうだという余裕はあまりない。
よほど思惑と違うか、映り込みがあるときなどでなければOKだ。
カメラの人のセンスに任せるしかない。

半分頭が役者業に行っている上に、全体の時間がない。
それでとにかくGO! GO! GO! と前にすすめたくて仕方ない。
「拙速を重んずる」としかいいようがない。

モニターでは、そのあと、撮ったものを確認する。
ところが外部モニターだと、この接続に時間がかかる。
慣れていればもっと速いのかもしれないが、呼び出すまで2.3分かかったりする。
そして再生に1,2分。
再生もカチンコ鳴る前からカメラ回しているから長い。
結局チェックすると小さなカットでも5分くらいかかる。
しかも見えづらいからフラストレーションが溜まる。
そして、撮影したものが気に入らなかったとき、撮り直すとまた5分から10分、チェックにまた5分かかる。

これはちょっと無理なのだ。
撮影は正味3日半くらい。実質26時間くらい。
これは予備日も含む。
悪天候で確保できるかどうかもわからない。
今回の撮影はオール野外。
11月だから16時半くらいには日没になる。
その限られた時間で70カットくらい撮る予定。
1カット平均20分で撮るとしても1400分。
24時間くらいかかる。
それだけでキツキツのスケジュール。

仮にチェック&撮り直しが20個あれば、それだけで300分。
5時間かかる。

「拙速を重んずる」背景にはこういう計算がある。

この撮り直しは、監督兼プロデューサー、進行係としては無理と判断せざるを得ない。
チェックしても撮り直しをしないなら、チェックする意味がない。

だから、何か心配がない限りチェックなし。

うまく行ってないと感じたら、チェックなしで撮り直ししたほうが早い。

もっと日程を取ればいいと思うかもしれないが、役者さんも本業がある人が多い。
ギリギリに組んだスケジュールなのだ。

そういう進行であったが故に、何が撮れているのかいまだにわからない。
データは全てカメラのYさんに渡して整理してもらっている。

すぐに確認しないと気が澄まない監督も多いだろうけれども、僕は編集をするときまで見なくていいや。

いい絵もたくさん撮れていると思う。
しかし、これ使いたくない、使うカットがない。このシーンどうするの? という場面もあるはずで、そこの不安はざっとみてもわからない。編集してみるまでわからない。

スリルがあるでしょう?
映画はいつも危険がいっぱい。
でもこのスリルもきっと映画を通じて伝わるはず。
安定した何かが見たければ、ネットフリックスやテレビドラマやハリウッド製を見ればいいのです。

撮影で映画が撮れるわけではなくて、撮れるのは映像の断片だ。

この断片を切り貼りして、モザイクを作り、音、音楽を入れる。
これをポスプロ、ポスト・プロダクションといいます。

ここに映画の半分の要素があると思う。
半分と言っても、ある映画では30パーセント、ある映画では70パーセントみたいに変動するでしょう。
魅力的な断片があれば最後に命を吹き込むチャンスがある。

キラキラした素材が撮れていれば、絶対まだ見たことのない面白いモザイクができるはず。
そう信じることは監督の仕事です。


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