ふたりの生活を支えることが、我らの使命。
朝、2階の部屋で、目覚ましが鳴るところから、この家の1日は始まる。
最初に、奥さんが降りてきて、その後を追うように旦那さんが降りてくる。
降りてきたふたりは、まるで流れ作業のように、支度を進めていく。
その様子を見ながら、私たちもふたりの要請に応じて動きを進めていく。
部屋の中心から見回していると、いろんな生活の様子が見えてくる。
朝は忙しないが、夜はちょっとまったりテレビを見ていたりする。
最近ふたりは、ややお疲れ気味のようで、少し心配している。
そんなことを思っていたら、ふたりは着々と準備を進めて、気づけばもう仕事に向かうようだ。
気をつけて。今日も、良い日に。
と、こっそり声をかける。
が、そんな声も、このふたりには届いていない。
朝の支度を終えたふたりは、家を出て行くと、夕方までは、帰ってこないことがわかっている。
旦那さんと奥さんが家を出た後でさえ、私たちは、休むことをしない。
むしろ、私たちの力量を試される時間であって、しばらく耐える時間だ。
私たちは、部屋によって、役割が異なる。
一番上の部屋(以下、Oの間)は、冷蔵ブースだ。
一番下の部屋(以下、Tの間)は、冷凍ブースで、その2つに挟まれた真ん中の部屋(以下、Sの間)は、野菜ブースとなっている。
使用頻度やタイミングが様々なのは、仕方ないことなのだ。
ちなみに、この家で朝行われるルーティーンは、この家の定番の朝ご飯セット(トースト、フルーツグラノーラ+ヨーグルト、紅茶)の準備と、お昼ごはん用のおにぎりを作り、タンブラーに飲み物を準備すること。
だから、Oの間がメインで活躍し、たまに、Tの間が開くと言った感じだ。
S「朝からお疲れさまだな。調子はどうだい?」
O「見りゃわかるだろ〜?一番動きがあるから、もう疲れたよ。今日は特に、週明けだろ?昨日とは違って、慌ただしかったよ。いいよな、Sは。朝は殆ど動かなくていいのだから」
S「そんな感じだったよなあ。これでもたまに動いているんだよ。果物を食べる日なんかは、ちゃんと、開けてもらえるし。まあ、この家は、少ない方だろうけど。おい、Tは寝てるのか?」
T「いや、寝てないよ。むしろ昨日は寝てる暇もないくらい、冷やすのに必死だったんだ。」
O「え、なんで?」
T「昨日、かなり増えたんだよ。決して溶かしてはいけないものが。」
S「なになに?」
T「見れないだろうが、見てほしいくらいだよ。このアイスの量を。しかも、ふたりが楽しみにしてるものばかりを、大量にゲットできたようなんだ。」
O「この家の人は、アイスが好きそうだもんねぇ。いつも甘いもの食べたそうにしている気がする。」
S「いいじゃん。それだけ、頼りにしてくれてるってことだよ。誇れることさ。」
T「まあ、そうだな。」
O「さて、今日も各々頑張りますか。あともうしばらくしたら、奥さん帰ってくるだろう。Sの本領発揮だな。」
S「そうだな。備えるか〜。」
この家は、奥さんが必ず先に帰ってくる。
帰ってきたら、すぐやっているのは、ソファーに座ってスマホを見ることなのだけど、割と早めに立ち上がって、台所に向かってくる。
この家では、食事作りは、もっぱら奥さんの役目のようだ。
冷凍食品を使うこともあるが、頻度は少なく、自炊されている。
野菜を食べる意識をしているようで、毎日Sの間から選ばれた何種類かの食材が使われている。
今日は、何を作るんだろう。
週明けの今日は、買い足された食材がしっかりと保管されているから、どの間も活躍することだろう。
何を作ることになったとしても、間違いなく言えることは、ふたりの生活の一部である私たちの役割は、とても大きいはずだということ。
直接的に会話できなくても、しっかりと生活を支えられているという自負がある。
ふたりが帰ってきて、一緒に夕食を摂る時間を大切にしていることを、知っているから。
その時間に、栄養を取って、心身を労わりたいと思っていることを知っているから。
食後のデザートとして、アイスやチョコレートなどの甘いものを食べる時間が幸せだと感じていることを知っているから。
この家に暮らすふたりの生活を支えることこそが、私たち冷蔵庫の使命なのだ。
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