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あのそれはね~。弦楽器店へのコメントから

今週、初めていく弦楽器店があってGoogleなんかで評判などを探っていますと以下のような苦情が書いてありました。

入門用の楽器を試奏したときに提供された試奏用の弓が高額でけしからん。これによって他店よりよく響く楽器になる。最初に予算を伝えているのだから、試奏用の弓も予算内で準備するのが常識でしょう。セコイ店だ。

なかなか強烈なコメント

ふ~む。そう思っちゃうんだね。私はこのコメントをみて逆にとてもよい弦楽器店だと思ったりもします。理由は価格の安い弓では楽器の良し悪しを判断することができないから性能の高い弓を店側が提供したのだと推測しているからです。ただ、この人のお気持ちもわからんではないです。

他に可能性としては試奏用の弓を常設していてこれを使ってもらったというもの。この場合、「この弓はこのような価格で硬さは〇〇で性能は〇〇ですがこれでよろしいでしょうか」と事前説明があるのが普通ですが、説明しなかった場合は、誤解されるのもうなずけますかね。

大抵のお店は、「弓はどうしますか。使っている楽器はどんな楽器ですか。」と尋ねてきますが、私の場合は「値段は関係なく強弓でお願いします」と頼んでおくと2~3本持って来てくれます。バイオリン弓だと20万円~50万円クラスの弓でたまに10万円クラスの弓をもってきてくれます。この10万円クラスの弓で出来の良いのがある場合もよくあってほしくなったりするのですが、こうしたコスパ最高の弓は売れていきますね。私は売れていった弓もチェックしているのでどういった弓が好まれるのかという勉強をさせてもらっております。プロ演奏者もコスパの良い弓を結構もってますからね。アマチュア上級者も腕が良いので鷹が獲物を狙うように買っていくのでしょうね。私もそういう人たちと基準が似てきたというのは喜ばしいです。

試奏弓は通常は価格で希望を出す場合が多いですかね。困ったことに初心者の場合は、弓のことはあんまりわかっていないというかオマケとしか思っていない場合もあるので、店員にお任せしますとお願いしたときに、よかれと思って出してきた弓の価格が想定外だと怒りだしたのでしょうね。店員さんの対応も難しいですよね。

 この場合、店員さんとしてはお客から直に苦情を入れてもらった方が助かるのですが。ネットで書かれてしまうとね。まあ、この程度の陰口はベテランの弦楽器愛好家からするとふ〜んという感じで読み飛ばしますが、初めて弦楽器店にいく初心者の場合は、すごく悪い印象を受けてしまうので残念に思います。

ちなみに大手の弦楽器専門店はどこも愛想がよく高額な楽器や弓でも気軽に試奏させていただけるし、弾けない場合は店員さんに弾いてもらうのもアリなので、まったくビビることはなくですよ。職人さんが経営している小さな工房の場合は確かに入りずらいこともあるのですが、大きな弦楽器展なんかで出品されているときにお話しできる機会があれば、一度顔合わせしてからお店に行くという手もありますが、初めての場合でも電話しておけば、丁寧に案内していただけます。

都内で初心者が気軽に行きやすいのは、クロサワ弦楽器ですかね。ここで弦楽器店の雰囲気をつかんでみるとよいかも。慣れてくれば文京楽器、宮地楽器、島村楽器、山野楽器、他など手を広げていかれるといいかなと思います。

今は引退してしまいましたがクロサワ弦楽器のカリスマ店員のイルマスさんがいたころは随分と世話になりました。弦楽器制作、弓の歴史とかのレクチャーは今も印象に残っております。

●追記 お得情報?
入門者用の楽器の場合、よくネットでは本体+弓+ケース+肩当+小物になっていますが、これをネットで買うのはよくないですね。
 弦楽器専門店に行くと、まず本体が出てきて弓が出てきますが、Webに出ているセットの弓をそのまま出してくることはほぼないです。セットの弓は野球でいうところの当て馬みたいなものですかね。その弓よりもグレードが少し高い弓が出てくる場合が多いのですが、心配しなくても30万くらいのセットで購入する場合、価格はそのままで1グレード高い弓で購入できると思います。あと大抵の場合、ネット価格よりも安くなりますし、保守サービスもあるので得になる場合がほとんどではないでしょうかね。お店によっては、弦セット(定価:5000円程度)をプレゼントしてくれたりもあります。

 初心者アルアル(保守サービスがつかない場合)
 駒を倒してしまった。⇒8千円くらい。魂柱調整になるので高くなる。
 ぶっつけて傷を付けた
 ⇒専門用語でリタッチ。程度によりますけど5千円~1万円くらい
 ペグが固くてまわらない
 ⇒3千円くらい。ペグソープは購入しておいた方がよいかも。

結構やりがちなんで保守サービスをきっちりやってくれるお店が望ましいですね。

 それと、私の個人的考えですが、これから本気でやりたいと思う人は弓に15万円くらいを出しておいた方があとあと良いです。5万円程度の弓だと基本奏法であるデタッシェ、スタッカートが均一にならないし、ロングトーンで弓が微妙に振動してプルプル震えるし、中級程度で習うスピカート、フライング・スタッカートはまずできないか、かなり苦労することになるので上達の阻害になります。なお15万円の弓もセットで購入となると2割くらいは値引きしてくれます。
 私も最初にセットでついてきた弓は、もはや棒切れになってますからね。カーボーン弓もあるんですけども弦楽器の本来の音色を損ねる傾向にあり、初心者のうちは良い音で弾けないとモチベーションが下がります。上級者になればカーボーン弓であっても良い音で鳴らせるようになりますけどね。
 私の場合は、5万円の弓⇒3か月で13万円のカーボン弓⇒6か月で30万円の腰弱フェルナンブコ弓⇒3年で大瀬国隆氏作のマスターメイド弓になりました。これって自慢ではなくバイオリンの腕が上がってくると必然的に良い弓を求めるようになるのですが、優れた弓なら最初に投資した15万円程度でしばらくの間は買え替えなくてよいということを書きたかったわけです。
 良い弓で弾くようになって、わかったんですが24万~38万円台のフェルナンブコ弓のなかで掘り出し物が結構あり、12万円~20万円台でも稀に掘り出し物があるので上級者と一緒にいってその掘り出しものを探してもらえばよいのかなと思います。弓の場合、バイオリン本体と違って価格:性能比が一致しないので、掘り出し物があるのですよね。たまに店員さんもびっくりして目を合わせるときもありますけどね。弓選びのコツは形状、バランス、硬さみるが価格を見ないことなのかもしれません。また音色を優先しすぎるとあまりよくないですね。難しい。

●追記の追記(お店訪問)
 お店に行ってきたのすが、やはり試奏弓は固定でしたね。象牙の上質弓でした。弓を変更できるのか尋ねてみたところ試奏弓でお願いされました。このお店の場合、プロフェッショナルなお店なので、楽器はどんどん出してくれますが、数多くの楽器からさっさと選んでほしいという問屋さん的なスタイルであり初心者が選ぶのはかなり困難ですよね。特にガチなアンティークスタイルの楽器を売りとしておられるので、判断基準が明確にないと厳しいかな(傷なのかデザインなのかの見極め困難でちょっとやりすぎかなとも思いましたが)。ヴィオラそのものは2022年の新作ですが、オールド楽器のような音がしておりレベルが高いと思いました。それにしても400,401,402,403,404,405と1mm単位で楽器が出てくるとは思ってなかったので驚きました。ヴィオラのサイズで悩んでいる方にはいいかも。
試奏には体力もいるので疲れてくると判断が鈍りますので、音階弾いて合わない思った楽器はすぐに引っ込めてもらった方が効率的かも。
  本来の買い方はお店と付き合いのある先生宅に何台か送ってもらって、品定めをしてもらうという感じでしょうね。あと下取り制度が充実しており、気に入らない場合、その楽器をその金額(税抜)のまま買取り、バージョンアップさせるということができるようですね。かなり品質には自信があるようです。プロと音大生向けのお店ですね。
  ただ、早く決めてもらいたいからなのかアドバイザーがこちらが良いとか悪いとか言いくるめるように言ってくるので、私のようにじっくり見て、聴いて、考えてからというタイプとは無茶苦茶に相性が悪いですね。楽器選びはお見合いみたいなものだから親族があれこれといってくるとかなり覚めるという感じでしょうか。お客とお店との相性というのも購入動機としては大きいですね。接客業の難しさを感じましたよ。
 さて、それから別の店にいったのですが、その店員さんはヴィオラとバイオリンを両方弾いているらしく、ヴィオラの小さいのを買うと音量が出ない。バイオリンでいう分数楽器を弾いているようなもなのでオケではその分体力を使ってしまうので後半バテます。結局、400以上にしていた方が疲れなくてよいですよ。「例えば、シベリウスの交響曲第2番とかそうですかね。」と尋ねたら「それそれ、まさにそれです」と回答してくれました。そうなんですよね。こういう店員さんから購入してもよいかなと思ったりもするのですよね。わたしは、クラシック愛に溢れた職人魂をもつ店員さんが好みなんでしょうね。

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