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中尊寺金色堂


11月に妻と中尊寺金色堂を訪ねた。平泉駅を降りて毛越寺を散策し中尊寺へ。何はともあれ金色堂だ。坂道を登り到着、列に続いて覆堂の中へ。

おお、これが。薄暗い堂内で照明に照らされた仏たちはみな金色に輝いていた。中央の須弥壇に阿弥陀如来、右に観音菩薩、左に勢至菩薩、左右に地蔵菩薩が三体ずつ、最前列には持国天と増長天。林立する仏像のみならず柱や壁にも金や螺鈿などのきらびやかな細工が。

素晴らしい。救いを求める衆生のあまた祈りを九百年にわたり身に浴びてきた仏たちがそこにいた。

荘厳な姿を見つめる内、ふと妙な感覚に襲われた。ひょっとしてここにおわす仏たちは本当に人の願いを叶える力を備えているのでは。ひとの祈りが結晶したこの神聖な場なら思いは本当に届くのではないか。本気でそう思い始めている自分がいた。

急に身体の奥から強い願いが湧き上がった。それが言葉となる。

ならば争いを止めてくれ
失われていく無辜の命を救ってくれ
頼む
これ以上子どもたちの涙が流れぬように!

その強い思いは私の身体を揺さぶりわずかに涙までにじんだ。自分の祈りに少し驚き意外にも感じた。そうか。深い自分に出会ったような気がした。

少々気恥ずかしくもあるが、ただひたすらにまばゆくたたずむ黄金の仏たちを前についタガが外れてしまったのだろう。

堂内に流れる何度目かの解説を聞き終えて堂を出た。鮮やかな紅葉の広がる境内へ歩き出す。世界人類が平和でありますように。


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