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からびな学習会「職業リハビリテーションの理念を問う」を終えて

からびな学習会とは

 NPO法人コミュネット楽創は2つの就労移行支援事業所と札幌市から委託を受けた障がいのある方の民間企業等への就職と雇用の継続を目的とした就業・生活相談事業(ナカポツ)を運営しています。後者にあたる就業・生活相談室からびなは札幌市の就労支援の向上に寄与することを目的とし、外部からの講師を招き、就労支援に関わる支援者や医療関係、当事者、家族の方々を対象に学習会を行ってきました。コロナ禍により2020年度以降は開催を中止していましたが、今年度新型コロナウイルスが5類となったことに伴い、4年ぶりに対面開催を実施しました。

職業リハビリテーションの第一人者、松為信雄先生に講師をお願いする

 就労支援委員会では、毎月抄読会を実施しています。昨年度は「職業リハビリテーション学~キャリア発達と社会参加に向けた就労支援体系(改訂第2版)」編集:松為信雄・菊池恵美子〔協同医書出版社〕と今年度から「キャリア支援に基づく職業リハビリテーション・カウンセリングー理論と実践―」著:松為信雄〔ジアース教育新社〕を読んでいます。就労支援をしていくには「働くことの意味」「リハビリテーション」を学んでいくことは欠かせないと改めて認識し、今回松為先生をお招きして職業リハビリテーションの根幹についてお話して頂こうとなりまた。
 松為先生は職業研究所(現労働政策研究・研究機構)、障害者職業総合センター研究員、東京福祉大学、神奈川県立保健福祉大学、文京学院大学教授を経て、神奈川県立保健福祉大学と東京通信大学の名誉教授として現在も活躍されています。さらに職業リハビリテーションの本質を次の世代に継承していくことを目的に「職業リハビリテーション協会・松為雇用支援塾」*を主宰され、今後の障害者支援の人材育成に全力を注がれています。

松為先生講演

 講演の参加申し込みは定員(50名)を超え、当日はたくさんの方が参加されました。講義の冒頭は「働くことの意義」についてでした。仕事や職場での活動で割り当てられた役割をこなすことで社会的意義が充足され、個人としても役割を果たしながら、能力や興味を発揮して様々な満足を得て、仕事を通して自分を成長させてくれること。また、それが社会的に価値ある成果につながっていくことが話されました。
 そして、2030年の障害者雇用として『2030年に想定される変化』についてのお話がありました。

1.「グローバルの大きな変化」働く環境・待遇が人権面から問題視されること
2.「人と社会の大きな変化」利他的行動が要請されること
3.「経営に係る大きな変化」経営におけるパーパス(企業の存在価値)の重要性・必要性が高まること
4.「デジタルに係る大きな変化」障害者の仕事の一部が、AIやロボットに代替えすること
5.「障害者の働き方に係る大きな変化」職域の開拓が探索(=新規事業開拓)と深化(=専門特化)に分離され、多様化の進展による、様々な特性のある人が同一社内・職場に存在することの説明がありました。

 企業においても自社のパーパス(企業の存在価値)が設定されることが重要となり、その中で障害者雇用もパーパスへの貢献を意識した業務内容や働き方が重要になってくるとありました。また、様々な変化に対応するため、従来の障害者雇用を超えた組織・働き方・制度が整備されていくことから、特例子会社や障害者雇用組織の大型化に伴って、マネジメント手法の変革が求められること。そして、多様化への対応から、障害者から選ばれる働き方、制度等が必要になるなど、今後の障害者雇用のあるべき姿についてのお話がありました。

学習会を終えて

 「職業リハビリテーションの理念を問う」という内容で松為先生に講義していただき、あらためて就労支援には、働くことの意味をしっかり学ぶ必要があると感じました。人はなぜ働くのか。そこには障害者ではない、一社会人としての役割を求め、誰かのためになっているというやりがいをもって働きたいのは誰でも同じであると感じました。その中で私たち支援者は、これから何を大切にして支援に取り組む必要があるのかを考えさせられました。 
2030年の障害者雇用の大きな変化については、多様化の進展による、様々な特性のある人が同一社内・職場に存在すること、つまり本当の意味でのインクルーシブな社会になることが求められていると松為先生から伝えられたと私は感じました。
 そのためにも働きたいと思う当事者の方々の希望に合わせた職場開拓を行うと共に、企業に対しても「どんな人と一緒に働いていきたいのか」など企業のビジョンにも踏み込み、さらに選択肢を広げられる支援を行って行く必要があると思いました。そして、松為先生の熱量を直接感じられ、背筋を正される時間でもありました。
 お忙しい中、遠方から厳寒の札幌に足を運んでくださった松為先生にこの場をお借りし、感謝申し上げたいと思います。松為先生、本当に有難うございました。

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