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AIエージェントに早く仕事を奪われたい


はじめに

以下の書籍を読み、感銘を受けたので考えをまとめておきたいと思います。

読み切ったのは昨日ですが、実は買ったのは数ヶ月前です。
何かのきっかけ※で「これは読まないと!」と思って買ったものの、いつも電子書籍を読んでいる紀伊國屋アプリが対応しておらず、やむなくKindleで購入して、そのまま埋もれてしまっていました。
※たしかLangChain関係を調べていて、著者の西見さんのnoteに行き着いて…という経緯だった気がします。

改めて読んでみると、やっぱりもっと早く読むべきだと思う内容でした。

AIエージェントとは

まずAIエージェントとは何かを定義で確認しておきます。
こちらは冒頭の本からの引用ですが、スタン・フランクリン氏らによる論文における定義だそうです。

自律エージェントとは環境の中に位置し、環境の一部としてその環境を感知し、時間とともに自らのアジェンダを追求し、将来的に感知するものを実現するために行動するシステムである。

引用元『その仕事、AIエージェントがやっておきました。』第2章

なお、厳密にはこの定義は「自律エージェント」の定義なので、これをAIで実現することが「AIエージェント」の仕組みということです。

ただ、まだこれではイメージがつきづらいので、例として「タスク駆動型」のAIエージェントの説明も合わせて引用します。

依頼に取り掛かる前にまず、依頼を達成するために必要なタスクを実行可能な単位(成果を報告できる単位)に分解するのです。このことをタスク分解と呼びます。その上で、分解したタスクを完了させるためにはどのようなツールをどのように用いればよいのかを計画します。

引用元『その仕事、AIエージェントがやっておきました。』第1章

ChatGPTにおいて複雑な処理を依頼する場合は、その処理を事前に指示する側で分解をして、段階的に指示する必要がありますが、そこを自律的にやってくれるというイメージです。
難しい指示のプロンプトに悩んだ経験がある人は、この説明が動作・価値ともに想像しやすいのではないかと思います。

具体例

続いて具体的なツールやアウトプットを見ていきます。
ここは本から抜粋するのが大変なので、本で挙がっていたものに言及している、各所のWEB記事を引用させていただきます。
※本当は自分で試してレポートしたかったのですが、時間の都合上、断念。

GPT Researcher

1つ目は「GPT Researcher」です。
与えたトピックについて調査した結果をアウトプットしてくれるというもの。
こちらのWEB記事では「LLMを開発している日本のスタートアップ」について、書籍の中では「自動車業界の市場動向の調査」を例にしていました。

このレベルの生成だと、GPT4oでもちょっとした工夫orやり取りで再現できてしまうので凄さは分かりづらいですが、一発で生成できる点はやはり素晴らしいなと思います。

ChatDev

例としてはより近未来感が増します。
先日、職場でこの説明をしたら最初は全く理解してもらえなかったのですが、「AIが経営するソフトウェア会社」です。

「こういうソフトウェアを作ってほしい」という依頼に対して社長AI、プログラマーAIなどのそれぞれのエージェントが役割分担に沿って自律的に行動し、最終成果物としてソフトウェアを納品してくれるというものです。

引用したWEB記事ではお絵描きアプリを作ってもらっていますが、ちょっとしたエラーはあるものの、基本的には問題なく動くものを作ってくれていて、恐るべき実力です。

しかもその作業を、AIエージェント同士が会話(チャット)しながら作っているというのは面白いですよね。
共感した文章を書籍から引用させていただきます。

この実験的な試みが示す可能性は、私たちが長年にわたり蓄積しているビジネスにおける協働のノウハウがAIエージェントの世界にも転用できるのではないか、ということです。
単なる人間のサーバントとしてAIエージェントを位置付けるのではなく、自己成長する組織体としてAIエージェントを設計することによって、人間とAIの協働の形は大きく変化していくことになりそうです。

引用元『その仕事、AIエージェントがやっておきました。』第2章

AIエージェントの仕組み

AIエージェントの仕組みについても書籍の内容を引用しつつ、簡単に整理しておきます。

多くのAIエージェントは「個性(Profile)」「記憶(Memory)」「計画(Planning)」「行動(Action)」という4つの要素が相互に作用し合うことによって動作すると整理されています。

引用元『その仕事、AIエージェントがやっておきました。』第3章

これらの4つの要素の位置づけは、私たち人間の思考に照らし合わせて考えると非常に納得感があるものです。
何を考えるにしても、ベースとしての個性がありますし、考えた内容を短期的・中長期的に記憶している必要がありますし、仕事をする上では計画と行動が必要だという感じですね。

なお、「個性」は細かくは「属性」「性格」「社会的立場」と分けられるようですが、ビジネスに置き換えてざっくり「役割」と理解しても良さそうでした。
※性格の話ではMBTIまででてくるので、超「ざっくり」です。
※ペルソナを作って「顧客役」を作る話までありました。

また、長期記憶については過去の経験から学びを抽象化するプロセスを取っており、人間の記憶の曖昧さや、大事なことはちゃんと覚えている、みたいな特性とかなり近しい作りをしているなと思いました。

先程の具体例で挙げなかったのですが、「Generative Agents」というAIエージェントによる社会シミュレーションの実験も行われており、そこではAIエージェント同士が経験し合うことが記憶として蓄積されているとのことでした。
私はSAOのアリシゼーション編を思い出しましたが、本当にこういうSFの世界が実現されつつあるなという感じです…。

仕事への影響

それではそのようなすごいAIエージェントですが、自分たちの仕事にどう影響を与えるか?を最後に考えたいと思います。
すでに具体的なサービスは続々とでてきているようで、以下のAIビジネスラボさんのnoteにてリストが公開されていました。

先程の4つの要素の「行動」に話を戻すと、今のAIエージェントが実行できるものは「データ生成」、「検索」、「コード実行」等になるので、基本的に今のところはSEや企画職・事務職全般がターゲットなんでしょう。

以前に以下のような記事を書きましたが、経営や企画というポジションは、自分自身で何かをするというより、他の人に何かをやってもらうという面が強いので、発信して影響することができれば、無限大の可能性があると思います。

そういう意味では、管理・事務系の仕事はもちろん、営業や企画といった仕事は全般的にAIエージェントによって代替可能だろうと思います。
ただ、「AIは企業経営者になれるか」の記事で書いている通り、「経営者」や「意志を持つこと」が仕事の場合は、まだしばらくは代替されないでしょう。

個人的には、AIエージェントが全部やってくれたら、自分は楽できる、別のことができると思うタイプなので、「今やっている仕事をひたすらAIに任せていく」ことと、「業務上の新しいテーマを見つけて取り組む」ことの両輪で活動をしていこうと思います。

さいごに

前も何かの記事で書きましたが、技術の進化と人が新しい役割を見つけることはいたちごっこだと思っています。
AIエージェントによってそのサイクルが加速するのだとすれば、やはり早い段階でベーシックインカムなどの「仕事をしないでも生きられる方法」が社会的に確立される必要もあるんだろうなと思います。

それまでしばらくは、「AIに仕事を奪わせる」仕事で生計を立てていきたいと思います。

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