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AIエージェントとビジネスの展望:具体事例で考える業務改革

現代のビジネス環境は、急速に進化する技術とともに複雑化し、競争が激化しています。このような状況で、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、業務の効率化と生産性の向上が不可欠です。そのための最も有力な手段の一つとして、AIエージェントが注目され始めています。


なぜAIエージェントなのか

AIエージェントとは、人工知能を中心に様々なアルゴリズムや外部環境とのインターフェイスを通して、ゴールが与えられると環境に応じて自律的に行動できるシステムです。これは、近年急速に盛り上がりを見せているLLM(大規模言語モデル)を含み、単一の推論を超えた連続的なプロセスを実行できる能力を意味します。

1. 自律的な行動

AIエージェントは、特定のゴールに対して自律的に行動することができます。これにより、人間の介入を最小限に抑えながら、業務の効率化と継続的な改善を実現します。特に、人間が求めるゴールは単一タスクでは実現できないものがほとんどなため、AIエージェントのような多岐にわたるタスクを連続的かつ柔軟に処理できるシステムが求められています。

2. 精度と一貫性の向上

AIエージェントは、常に一定の精度と一貫性を保つことを目指して開発が進められています。現状の技術でも、分野によっては人間の精度を上回っていることから、人間が作業するよりもミスやバラツキが少なく、業務の質を向上させることが可能です。一方で、LLMではハルシネーションと呼ばれる誤答生成が問題になっており、適切な設計とリスク管理が求められます。

3. 24時間365日稼働

AIエージェントは休息を必要とせず、24時間365日稼働することができます。これにより、業務の中断を防ぎ、常に稼働し続ける体制を整えることができます。例えば、カスタマーサポートでは、24時間体制で顧客対応を行い、顧客満足度の向上に寄与します。ECサイト運営では、AIエージェントが注文処理や在庫管理を自動化し、需給変化を見込んだ発注処理や広告の最適化までを、人の介入無しで行うことなどが見込まれます。ソフトウェア開発や運用においても、エラー検出とそのデバッグを自動化したりする試みは始まっており、将来的にはソフトウェアエンジニアをAIエージェント化するような試みもあります。このように、24時間365日稼働できることによる効果は、多業種に大きな利益をもたらします。

サービス事例リスト

今回は、現時点でどのようなAIエージェントのサービスまたはプロジェクトがあるのかについて、E2Bより公開されているカオスマップを参考に、サービスやプロジェクト群を一つのリストとして独自にまとめました。

https://github.com/e2b-dev/awesome-ai-agents

以下にリストを公開いたしましたので、利用いただけますと幸いです。

AIエージェントサービスリスト

AIエージェントサービスリスト


分野別AIエージェントの展望

AIエージェントは、将来的には汎用化が進み、結果的には全ての業界、全ての業務に影響を及ぼす可能性が高いです。
しかしながら、現状は、業務に必要な一連のタスクの中で、その一部をサポートするツールに終始している場合が多いです。しかし一部では、一連のタスクを目的に向かって自律的に遂行可能なプログラムに向けて、開発が進んでいます。

ソフトウェア開発

ソフトウェア開発においては、コーディングをサポートするツールが、AIエージェントとして多数出現しています。大規模言語モデル(LLM)は、当然プログラムコードも学習させることで、自然言語からプログラミング言語への変換を行うことができるためです。

その中でも、サポートツールの域から脱し、自律的にソフトウェア開発を行うことを目指しているプロジェクトを紹介します。

Devin

先月行われたMicrosoft Build内で連携が発表された、Cognition社の開発するDevinは、長期的な推論と計画において優れ、複雑なエンジニアリングタスクを遂行できます。各ステップで関連するコンテキストを記憶し、学習と誤りの修正が可能です。Devinはシェル、コードエディタ、ブラウザなどの開発者ツールを備えたサンドボックス環境で動作し、リアルタイムで進捗を報告し、ユーザーと協力して作業します。

Devinの具体例として、未知の技術の習得、アプリの構築と展開、コードベースのバグ修正、AIモデルの訓練や微調整、オープンソースリポジトリのバグ対応や機能追加があります。実際の例として、コンピュータビジョンモデルのコードを書いてデバッグし、最終的にデータをサンプルしてレポートを作成しました。

Cognition公開のDevinのSWE-bench結果

DevinはSWE-benchというベンチマークの結果を公表し、他のモデルや大きく上回る成績を達成しています。

営業

あらゆるビジネスにおいて、売上を立てるための営業活動は何よりも重要な場合が多いです。そして、膨大な数のサポートツールが開発・展開されており、人間がそれらを使いながら展開するのが一般的な流れです。

それを、AIエージェントが一手に引き受ける取り組みが始まっています。

Alice

11x社が展開するAliceは、SDR(Sales Development Representative)AIエージェントです。見込み顧客に対して、メールやLinkedInなどを通して適切に最適化されたアプローチを行い、そこからの反響をCRM(Customer Relationship Management)をアップデートしながら次のアクションを考案し、さらなるアプローチを継続しながら最終的に商談獲得まで導くものです。
LLMが複数の外部環境に接続されることによりソリューション化を目指す、一つの事例として有力です。

さいごに

現状公開されているAIエージェントと呼ばれるプログラムの多くは、自律的に目的を達成するための改善プロセスが不十分で、単一タスクの自動化を発展させている段階です。しかし、今後は、まずは限定的な範囲ながらも、自律性を実装する方向が広がると想定され、事業の成長のためには効果的かつ安全に、業務プロセスへの取り込みが求められることになります。

私たちは、具体的な課題解決や最適なユースケースの提案、費用対効果(ROI)を重視した計画の策定、スムーズな導入と運用サポートを通じて、AIが実社会に具体的な利益をもたらすための取り組みを進めています。

ご質問等ございましたら、メール(ai.business.laboratory@gmail.com)または、記事執筆者の水野(Xアカウント: @kakerumiz)、納村(Xアカウント: @akinoriosamura)までお気軽にお寄せください。

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