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宮部みゆき『火車』の読書所感


はじめに

宮部みゆきの『火車』は、社会派ミステリーの傑作として知られています。本書は、クレジットカード破産という現代的な問題を軸に、登場人物たちの複雑な人間関係と心理描写を巧みに描き出しています。以下に、本作を読んだ感想と考察をまとめます。

あらすじ

主人公の親戚の男性から、婚約者が失踪したので探して欲しいという依頼ががあり、行方を探し始める。調べを進めるうちに、彼女がクレジットカード破産に追い込まれていたことが明らかになります。次第に、彼女の過去や彼女を取り巻く人々の複雑な事情が浮かび上がり、事件の真相に迫っていく…

感想と考察

約20年前の小説ですが、現代でも社会が抱える問題と通じるものがありました。宮部みゆきさんの本はこれが初めてですが、ラストの数ページに怒涛の展開が待っていて、衝撃的でした。

社会問題としてのクレジットカード破産

本作のテーマであるクレジットカード破産は、現代社会においても身近な問題だと思いました。無責任な消費や借金がもたらす悲劇が描かれていて、物語の進行とともに、借金によって生活が破綻していく人の姿は、現実の問題としての重みを感じさせます。
また、それは他人事ではないということも感じました。日常の生活費としてだけでなく、よく見られたい、認められたいという承認欲求、人間としての欲も深く関わっている。
人によって大小はあっても、その欲にかられていつのまにか破滅の道を歩む人生になってしまうのは、自分でも「絶対に」ないとは言い切れない気がします。

「お金」というものにとらわれてしまうと、倫理観が失われて短絡的な行動に走ったり、犯罪を生み出すことにも繋がってしまう。

これを防ぐにはやっぱり、親から子へのお金の教育や、小中学生の頃から、マネーリテラシーを高められるような教育に触れることが必要だと感じました。


結論

『火車』は、読んで字の如く、火の車。なんとか回っているように見えても、じわじわと経済的にも精神的にも削られて、一歩踏み外すとすべてが崩壊してしまうような、危うい状態。
それは決して特別なことではなく、ちょっとした隙をみせたら侵入し、広がり始めたら加速度的に侵食されてしまうウイルスのように、危うく、身近なことだと思いました。
それにしても、著者の繊細な心理描写が秀逸で、頭の中に映像が浮かんでくるようでした。

私自身も知り合いからおすすめされて読んだ本ですが、次が気になって止められなくなるような面白い本でした。まだ読まれたことがない方は、きっとその世界観にあっという間に入ってしまうと思いますよ😊

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