彼氏にBL小説を書かせてみた話

突然だが、私は彼氏にBL小説を書かせている。
きっかけは私がある若手落語家二人組に『萌え』を感じてしまったことだ。彼らは私にとって萌えの塊のような存在だったのだ。
大人の事情もあるので実名を避けるためA君B君と呼ばせていただこう。

A君は大学中退して落語家になった可愛い男の子。自分のルックスの良さを自覚していて女性ファンを増やしているが、プライベートではギャンブルと酒に溺れている。飲むと全裸になるというBL漫画の設定のような癖をリアルに持っている。
一方B君は職を転々としてから二十代半ばで入門。真面目な性格と礼儀正しさに定評があり、格闘技で鍛えられた体が一部の女子に定評がある。

ちなみに落語界では一日でも早く入門した方が先輩という制度なので、年下のA君よりもB君の方がエロい……いや、偉いのだ。
しかしこの二人大学時代に落語研究会で面識があり、その頃は年下のA君の方がB君を先輩として懐いて慕っていたのだ。
つまり、大学時代の先輩後輩の立場が社会人になってから逆転ししまうのである。
なんかもう、こういう設定最高である。
他にもA君が酔っ払ってB君の家に押しかけようとしたが途中で力尽きて路上で寝ているのをB君が迎えに行ったとか「商業誌BLかよ!」と突っ込んでしまいたくなるような(その日の夜に多分二人は性的にも突っ込んだ)エピソードがあるが、特定が怖いので割愛させていただく。
割愛って言っても二人の愛が割れることはないんだけどねwwww

とにかくこんな美味しい設定の彼らなのだが、当時は落語ブームの前だったし、二人共『前座』という落語家として修業中の身分だったため落語好きの間でも認知度がそこまでなかった。
しかし、彼らのBLがもっと見たい。
彼らは恐らく私が腐女子であることに気付いているのか、わざとらしく下ネタトークやイチャイチャを繰り広げてくれてはいたが(多分気のせいじゃない)物足りなかった。

A君とB君のBL小説がみたい。
この私の純粋すぎる不純な気持ちは日に日に大きくなった。
「そうだ、書けばいいじゃない」
そう思いノートにつらつらと書き綴った。
しかし気持ちが満たされない。所詮自分の頭の中にある妄想を紙に吐き出しているだけだから新鮮味がなかったのだ。
違う人が書いた彼らのBLが見たい。そう思った私は彼氏に連絡した。
幸い彼は私の妄想を毎日のように聞かされて二人の設定をよく知っているし、実際にA君とB君の落語を聴いたこともある。
小説なんて書いたことない、と言って拒否されたが
「BL小説書いてくれるなら誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントもいらないから」と言うと途端に引き受けてくれた。
やはり毎年、難易度の高いプレゼント(絶版になった落語関連の本・CD・DVD、立川志の輔師匠の独演会チケットetc……)を要求していたのは財布に痛かったらしい。

そんなこんなで彼はBL小説を書き始めた。
彼は集中すると徹底的にこだわるようで「書くなら最高のものを書きたい」と言って、本屋でBL小説やマンガを買ってきて研究するし、時にはその作品対して自分なりの意見も述べる。
字がめちゃめちゃ汚い(私も人のこと言えないけど)上に書くスピードも遅いが、彼なりに丁寧にプロットを練って書いていた。
私が「もう先にセックスシーンだけ書けよ」と言うと「俺はこの二人の心の繋がりからセックスまでの過程を書きたい」と言い出した。
一年ほどかかって物語は完成した。
文章力はさておき、二人が出会い、結ばれるまでの過程が丁寧に書かれた物語だった。

しかし、私は非常に飽きっぽい性格である。
今、新たな『萌える』落語家二人組を見つけてしまった。
今度は前座時代を共に過ごした仲良し落語家。マジメな既婚者と独身の女好きだ。

前々から「この二人は仲良いな〜」と思っていたのだが、二人の落語会に通ったりツイッターやブログを考察するうちに「この二人はデキているのではないか」という結論に達して、二人のBL小説が読みたくなった。

そして彼氏に頭を下げ、現在二作目のBL小説を書かせている。
既婚者という設定を生かしつつ、この二人をいかに自然に愛あるセックスさせるかが腕の見せ所だという。
完結はまだまだ先になりそうとのことだか、プロットは完成しているという。
その時までに私はまた別のカップリングに夢中になっている可能性も高いのだが。

これから何作品も書かせれば文章力があがってBL小説家として売れてくれれば、私はニートになっても暮らしていけるだろうと思っているが、男というのは集中しやすいが、その分飽きっぽいとも聞く。
いつまでBL小説を書くのに集中してくれるか内心ヒヤヒヤである。


※なんてことを昔ブログに書きましたが2020年5月現在、私はこの彼氏と別れて新しい彼氏と付き合っています。
元彼の書いたBL小説のノートは別れてからも捨てられず引き出しの奥深くに入れてあり、私が死んだら一緒に墓に入れてもらおうと思います。
ちなみに二作目の小説は未完となりました。
尚、今の彼氏はこのノートの存在は知りません。

特定を避けるために落語家さんの設定を一部変えてありますが、もしも落語に詳しい方が「作中のBL小説に出てくる落語家ってあの人じゃね?」と思ってもそれはあなたの気のせいです。酒でも飲んで忘れましょう。

#キナリ杯 #秘密 #落語 #腐女子

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