見出し画像

箱根・塔ノ沢温泉・福住楼

 昨年の5月。新緑に誘われて、小田原と箱根へ、一泊二日の旅。小田原近辺で松永耳庵の老欅荘など明治・大正・昭和期のお屋敷や別荘をいくつか見学し、平塚美術館の荘司福展と箱根・仙石原のラリック美術館を見ることも目的とした。

 宿は、箱根湯本から登山鉄道で一駅、塔ノ沢温泉の中ほどにある福住楼。いまどきの個室露天風呂があるわけでもなく、明治・大正・昭和期の数寄屋建築が迷路のように川べりに広がった古風な温泉旅館だ。玄関の風情や鏝絵にも歴史を感じる。福住楼のシンボルである、幸福を呼び込む動物「蝙蝠」のレリーフを館内のあちこち探して回るのも楽しいが、何といっても魅力的なのは、写真の大丸風呂。松の幹をくりぬいて造った大丸風呂の湯ぶちは銅で、窓の外には川べりの新緑が目に鮮やかに広がっていた。

 一泊15000円前後で、美味しい食事が二食ちゃんとついてくるコスト・パフォーマンスも魅力だが、食事をサーブしてくれた仲居さんに聞くと、70%~80%が外国客だという。こんな素敵な旅館をインバウンド客ばかりに体験させて、日本人は一体どこに遊びに行っているのだろうか?このコロナ騒ぎで福住楼がどんな感じになっているのか気になるところではある。味噌汁を食卓に置きながら、自然に仲居さんが「ミソ・スープ」と口にしていたことを思い出す。

福住楼HP https://www.fukuzumi-ro.com/index.html



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?