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鷹の目を持つ

 6月13日の天声人語より・・・400~500年前に切られたとみられるブナの株が、朽ち果てずに生きている。どうやら近くにある樹木が根を通じて糖分を譲っているらしい・・・
 木は、森をより良い状態で維持するために、弱っている仲間を助けて回復させているという話。全体性というものの維持は、多くのちいさな生き物たちも知っている。アリやハチも鳥たちも、全体の維持を考えながら生存方法を選んでいる。ウイルスは地球上の、あるいは体内の生物のバランスやニッチェ(生態学的地位)の確保、全体の健全な状態の維持に貢献している。一方で限度を知らずに発展し、滅びた動物もたくさんいる。

  優れたスポーツ選手の中には、鷹の目を持つ人がいるという。サッカーやラグビーのような広いグラウンドで、上からしか見えないはずの選手たちの動きや配置が、その選手には常に見えているという。彼らは、自分のところにボールが来る直前から、自分が次にどう動くべきかわかっているのだ。このような全体を見る能力が平和的生存に発揮されないまま、争いごとが絶えない人類には、なかなか期待はできない。

 ひとりひとりの幸福を求める思いが大きなうねりになって、人類全体の価値観が変わっていくことがあれば・・・。たった一本の木が、隣で弱っている仲間に手を差し伸べ、林を考え、森を考えて生きているのなら、人類もそれに匹敵する能力を十分に持ち合わせているはず。こんな能力が人にもあることを信じること。
 希望を捨てずに森も私も生きている。