自転車で出かけてゆく
自転車で出かけてゆく
村のバス停まで走ってゆく
何度も送り出して手を振って
ひとりふたりさんにんと
かごいっぱいつめた大きなカバンが
はみ出しそうになりながら
背中にも大きなカバンを背負ってる
出だしちょっとフラッとしながら
行ってきまーすと山に響かせて
ひとりふたりさんにんと
朝陽の中に溶け込んでゆく
なんどもそんな朝を見てきた
ある日はバスに乗り遅れたと
下を向いて帰って来た子
ある日は途中で激しく転倒し
大けがをして帰って来た子
それぞれの朝がたくさんあった
8年たって
ひとりふたりさんにんと
自転車の朝を卒業し
そして今最後のひとり
行ってきまーす
と同じように
かごにカバンを突っ込んで
そう私もそうやって
行ってきまーすと自転車で
学校へ行ったものだった
行ってらっしゃーいの母は
もういないけど
最後のひとりに手を振って
みんなこうして伝承してゆくんだ
行ってらっしゃーい