神戸のスペイン料理店「カルメン」 消えかけた炎ふたたび
神戸・三宮にあるスペイン料理店「カルメン」をご存じですか?
なんとここ、昭和31(1956)年に開業した「日本初のスペイン料理店」なんです。
勝手に応援してたんですが、今年はじめに行こうと思ったら
休業と書いてるけど、このまま閉店しちゃうんやろな。また老舗が一つ、灯を消してしまった……と泣きそうでした。
カルメンのお料理は、すごく美味しい。「今までに食べたパエリアで一番美味しい」と言った友人もいるほど。
なのに、いつ行ってもガラガラ。50人は入る広さなのに、私が6〜7回行ったうち、貸し切りじゃなかったのは1回だけ。
その理由は、たぶん立地でしょう。
駅近とはいえ阪急三宮駅の北側の、ややピンクめいた怪しげな界隈にあるんです。普段は迂回するか、ショートカットするエリア。
これは私の推測ですが、カルメンができた後に周りが猥雑になったんじゃないでしょうか。
通りすがりに「あ、いい感じ!」とはなり得ない場所なので、知ってる人しか来ない→ガラガラなんだろうなと。
それでも自社ビルだから何とか続けてくれると思ってたけど……。いつ何があってもおかしくないと思い、年1回は通っててよかった。
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三宮でお昼ごはんを食べる必要があった今日、なぜかふと、カルメンのことを思い出しました。
「休業」がどうなってるか、念のためもう一度見に行ってみよう。なぜかそんなふうに、いわば「魔がさした」のです。
すると、なんということでしょう!(加藤みどり風に)
スペイン国旗が靡き、看板が出ていたのです!!!!
オーナーさん、ちょっと体調くずしてたんかな、それが治ったんかな。
やった!やったー!
と店に入ると、迎えてくれたのはおっちゃんオーナーではなく、お会いしたことのない若くて美しい女性。店内も心なしか、きれいになった気がします。
「あの……改装しました?」
「はい、そうなんです」
なーんだ、改装のための休業やったんや。
「あのー、オーナーさんは?」
「実は……昨年末に他界しまして」
!!!
そうやったんや……。聞けば、元気だったのに突然亡くなられたそう。その日も営業するつもりで。
美しい女性は、前オーナーの姪っ子さんとのこと。
「閉めようかとも思ったんですけど、やっぱり……」
おっちゃんオーナーが亡くなられたのは残念だけど、その心意気が嬉しくて嬉しくて。いかにカルメンが好きだったのか、愛着を感じていたかを話していたら、互いに少し涙目に。
シェフは以前と同じ方なので、味はそのままです。
トマトの酸っぱさがたまらない冷製スープ・ガスパチョや、ご飯がいい感じに固めのパエリア。うん、たまらない!
食べ終わった後、姪っ子さん(以下、Eさん)と話していると、驚きの事実が。
再開したのは8月10日。ほんの2週間前じゃないですか。
Eさんは新オーナーですが、なんと今までにやっていた仕事を辞めずに「ダブルワーク」なんだそう!
昼間はこれまでの仕事をして、夜と土日はカルメン。
しかもこれまでは東京にお勤めで、カルメンを継ぐために副業申請を出して神戸に戻り、テレワークで働いているのだとか!!
もちろん、少しずつサステナブルな体制を整えていかれると思いますが……。
相変わらず、土曜のランチタイムなのに今日も貸し切りだったカルメン。
「まずは席を埋めないと!」
と、客ながらEさんにハッパをかけてしまいました(笑)。
いくら老舗でも「ただ古いだけ」とか凡庸な味なら、淘汰されても仕方ないと思うんです。
けどカルメンは本当に美味しいし、今ふうのバルとかピンチョスとかおしゃれスパニッシュとは一線を画す昭和のレストランで、残す価値が大アリなんですよね。
これを、知られていないだけで神戸から無くすわけにはいかない。
そんな使命感を勝手に背負った私、これからガンガン応援していきますからね!
*お手頃なカルメンのランチメニュー。昼飲みもできますよ。
《追記》
Eさんはお仕事の都合でいつもいらっしゃるわけじゃないので、お会いできたらラッキー。
新しくInstagramも始めたそうなので「スペイン料理カルメン」で検索してみてくださいね。Eさんの出勤日が書かれたカレンダーの投稿をシェアしておきます。