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東京貧困女子 〜道のすぐ横に崖があることを知る〜

この本は東京で暮らす貧困の連鎖の仕組み組み込まれてしまった女子たちのインタビューをまとめた本だ。

  • 奨学金制度の罠

  • 非正規雇用の罠

  • パートナー選びにおける罠

  • 介護の罠

  • 職場の罠

などなど実際に身近にあるちょっとした罠に引っ掛かり、ふとした瞬間に道の横にある崖に転落してしまう…そんな現実があるのである。

今日はそんな本を読んで考えたことを書いていきます。

考えたこと①
現実に起こっていることに対して無知であることは恐ろしい


学生の貧困における大きな原因は奨学金であり、返済しなければいけないのが現実としてどれほど大変なことか…
借りる頃は、借りる本人は高校生だからその現実を知らないことは本当にしょうがない。
だが、周りの大人が奨学金制度を安易に薦める、進めてしまうのは本当に怖い。
当の借りた本人は大学在学中ににお金が必要、もしくは返済が始まる社会人になる前に気づき、お金が全然足りないことに絶望。
それが原因で、「パパ活」せざるを得ない、風俗で働くしかない少女たちがたくさん発生する。

また、非正規雇用についての現実を全く知らないことも恐ろしいことだ。
離婚しても再就職してお金を稼ぎ自分1人でも育てていけるだろうと、安易に考えることていると、年齢的に厳しい現状が待っている。
結局非正規雇用か、介護職というブラックな仕組みのものしかできなくなる。

私はこの本を読むまで、どれだけ奨学金を返済することが経済的に精神を蝕むのか、非正規雇用での生活がどんな大変な人生を歩む可能性があるのかを恥ずかしながら全く知らなかった。

私は本当にありがたくも、恵まれた環境に生まれたからこそこのような事実を知らなかった。
知らなかったら、パパ活する人を一括りにし、「意味がわからない女子たち」というだけで終わっていただろう。また、日本の自殺の原因の多くが、「経済的貧困」であることを他人事のように数字だけでみていただろう。

その裏には、個々人がどうしようもない負の連鎖の仕組みの中に組み込まれてしまっているのだ。

考えたこと②
一歩踏み外せば、自分も貧困に陥る可能性が十分にある

突然会社から40代でリストラ宣告されたら、もしパートナーがDVをするような人で精神的に病んでしまったら、離婚した時に自分に職がなければ、もし親の介護中心の生活になってしまったら、職場先がひどいモラハラ・パワハラで精神的にも肉体的にも壊れてしまったら

本当に身近にたくさんの罠があると思う。考えたこと①にも通じるが、この事実を知るだけでも、貧困の罠を避けることができるのではないかと思う。

この本の中で、女性の方の1人が「介護離職してもなんとなかなる」と思ってしまったのが過ちだったと述べている。
その女性は貯金があるからといって、介護離職し破産。仕事を探すも45歳でパートすらできず、個人金融に手をだす。女性の子供は大学進学を諦めるしか他ならなくなる。負の連鎖が始まるのだ。
善意のある人が蝕まれ、社会の犠牲者になってしまう。

私も家族の介護が必要になった時、おそらく飛んでいき、自分の家族なのだからつきっきりで介護しなければと思ってしまうだろう。視野狭まってしまうだろう。
でも、本当は道は他にたくさんある。目の前にあることだけに対処しようとして、社会の崖に突っ込んではいけないのだ。

考えたこと③
日本の仕組みはどこかおかしい

日本の公共事業はギリギリの運営だ。
人手不足だが、賃金を削って外国人労働者をどんどん入れることも決まっているため、賃金は永久に上がることはない。現場で働く非正規雇用には、生涯最下層として生きてもらうことを望んでいる。

奨学金制度はローンが膨大で、返すのに手一杯になる社会人が大勢発生し精神的に追い詰める。かたや、若い労働者不足だと嘆く。
医療費は令和3年度の国民医療費は45兆 359億円で後期高齢者の医療費がの増えたことが要因だという。
そのうちの一兆円でも高等教育に回すことができれば売春行為、犯罪も減り、本来の学生としての姿に戻れるだろう。それだけでも日本は変わるのではないかと本書では述べられている。
2015年から年収380万未満の世帯を対象に授業料減免や返済義務のない給付型が検討されているらしいが、分配はどうなっているのだろうか。

また、障がい年金をもらっていると生活保護、児童扶養手当などが受け取れない。障がい者は子供を育ててはいけないという日本の仕組みとなっているのだ。

やるせなさを覚えるが、仕組みをすぐに変えることはできないからこそ、「自分で避ける」しかない。


この本を通して一貫して思うことは、無知でいれば「食われる側」になるということ。そしてこんなことを知らないほど、恵まれた環境にいるのだということ。

本書は以下のように締め括られている。

語ってくれた貧困の女性たちも、貧困に陥った自分たちの絶望の物語によって、1人でも多くの人たちが貧困の罠から逃れることを望んでいるはずだ。

私たちは道のすぐ横に崖があることを知らなければいけない。

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