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あしたのつくりかた


読書家である父親に
「最近読んだオススメの本を貸してほしい」と
実家に帰った際に伝えると
「これは面白かったよ」と
スティーブン・ホーキング博士の
「ビッグ・クエスチョン」を貸してくれた。

ALS、筋萎縮性側索硬化症を発症しながらも
常に前を向き、ウィットな口調で宇宙をはじめ
様々な科学にまつわることを伝えてくれた
名実共に素晴らしい科学者の著書。
車椅子に乗って電子音で会話していたあの人だ。
きっとニュースで見たことがある人はいるんじゃないかな。


「この世界は本当は10次元なんだけど
他の7次元は余りにも幅が狭いために
私たちは感じることが出来ないんだ
だから3次元って思っているんだよ。」
頭の中にはてなマークが押し寄せたおはなし。

「もしこの世界が2次元だったら
何かを食べた時に食道に食物が通ることで
身体が耐え切れなくてきっと生きてられない。よかったよ。」
思わずくすっとなったおはなし。

「ハイゼンベルクの不確定性原理によって
量子がどのように動くかが予測不可能なことが証明されている。
そうなんだから未来なんか予測できるわけないでしょ。」
確かに…と思わず感嘆の声が出たおはなし。

10章で構成されているが
科学を軸として様々な分野に興味を持つ博士が
特に宇宙科学の永代の問いに
高校球児のように真っ向勝負をし続けている。
戦記を読むかのような昂揚感を抱いた。

ーーーーー

彼の名を知ったのは遅かった、たしか19の頃。
人生初の訪問介護に行った利用者の自宅で
この番組を観たいからテレビを操作してくれと指示を受け
選択した番組がホーキング博士のドキュメンタリーであった。
たしか宇宙の起源論の話であった。

「ブラックホールは非常に強い重力エネルギーによって光さえも吸い込み、無へと返す。
だから、無から非常に強いエネルギーを放出して宇宙は作られたのではないか。」

そんなこと思いつくかい?普通。
確かそんなことをドキュメンタリーでも言っていたなぁ。

こういった問題に立ち向かうため―――
いや、とても大きい問題でなくてもいい。
身近な問題でも構わない。
必要なのは、知識、柔軟な思考。間違いない。
ただ、一番必要なのは「想像力」なのだろう。

人を想うのか
宇宙を想うのか
ペットを想うのか
社会を想うのか

この「想う」という力をないがしろにして
生きていないかい?私?

ーーーーー

本を貸してくれた父親のことを
私はとても聡明な人だと思っているし
ホーキング博士を出会わせてくれた利用者も
物腰は柔らかく、民族音楽や科学に精通されていて
障害者の自立生活支援運動にも長年携わっていた、賢い行動家であった。
ホーキング博士も無論、
聡明な方と表現するのもおこがましい。
ハッとするような気付きをそっと与えてくれる人は
いつだってそんな聡明な先人である。

コロナ、アメリカで起きているデモ、
それを対岸の火事かのように傍観する人。私。
私自身への戒めとしても
本著の最終章に博士が記した一文を共有しておきたい。


顔を上げて星に目を向け、足元に目を落とさないようにしよう。それを忘れないで欲しい。見たことを理解しようとしてほしい。-(中略)-知りたがり屋になろう。人生がどれほど困難なものに思えても、あなたにできること、そしてうまくやれることはきっとある。大切なのはあきらめないことだ。想像力を解き放とう。より良い未来を作っていこう。

(Stephen Hawking 著,青木薫 訳「ビッグ・クエスチョン <人類の難問>に答えよう(原題:Brief Answers to the Big Questions)」、NHK出版、2019、p227より引用)

今を見て、明日を、未来を、つくる。


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