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敬老の日に老猫を拾う②

こんにちは。画像の絵はりんたろうです。日にちに抜けがあったので、前の記事を少し編集しています。

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ボロボロ猫を見つけた翌朝、猫を入れるリュックと洗濯ネットと軍手を持って、自転車で現場をまた見に行く。ガレージには、昨日止まっていなかった車が停めてある。車の陰のやっぱり昨日と同じ場所に居た。ちょうど車の前輪の内側に相変わらずうずくまってブーブー音を鳴らして、目をつぶっている。そのまま捕まえようと思ったが、ガレージのお宅に一応ひと言声かけしておこうとチャイムを鳴らしてみる。初老のマダムがドアを開けた。「どちら様?」

「ええっと、あの...昨日神社に参る際に御宅の前を通りがかったのですが、ガレージの端っこに小さなボロボロの猫がうずくまっていたので気になってしまって。その子を病院に連れて行きたいと思ったのですが、良いですか?黙って連れて行くのは気がひけるので、ひと声かけてからと思って...」

「はぁ...」マダムは怪訝そうな顔をして言うので、「猫が居たのご存知ですよね?昨日なかった車も停めていらっしゃるし。」「猫??」「あの...昨日からずっと居たのですけど。」「全然知らないわ。興味がないもので。この辺野良猫多くて、いちいち気にしてないもので。」「え?でも車どうやって停めるんですか?猫を気にしないと引いてしまうかもしれないですよね?」「その時は、ほうきか何かで避けてから停めてます。」「...」「じゃあ、気にされてないってことですから、この子病院に連れて行ってもいいんですね?」「あ...でも、ちょっとそれは私の一存では決められないから...」猫の存在を全く気にしてないという割にマダムは意外なことを言う。それにしても、こんなにしんどそうにうずくまっているのに何とも思わないなんて。

マダムは向かいの家の庭に、ちょうど植木の手入れに出ていた初老のおじさんに声をかけた。「ちょっとすみません、この人がここにいる野良猫を病院に連れて行きたいって言ってるんだけど大丈夫かしら?」「え?何?猫?」おじさんは門から出てきて、うずくまった猫の方向を見た。「あの猫か...もうあかんで。老衰や。時期に死ぬで。病院連れてっても保たんで。」

私「え?老衰?子猫じゃないんですか?あんなに小さいのに。」おじさん「いや、あの猫かなり前からおるで。もう長いで。年寄りや。老衰や。この辺は野良猫多いねん。あんなんいちいち気にしとったらキリないで。やめとき。」私「そうなんですか。そんなに野良猫多いんですか。でも私、出会ってしまって、あの子が気になって仕方がないんです。病院に連れて行ってやりたいんですが...」おじさん「勝手にしたらええけど、もう無理や思うで。意味ない思う。」そんなの病院に連れて行ってみないと分からんやんか、と思った私は「じゃ、いいんですね?じゃあ、連れて行きます。」と少し強引めに言った。おじさんは呆れて、「もうあかんと思うけどな。無駄や思う。」と言いながら、やれやれと首を振っていた。

まさかこんなに小さいのに成猫なんて。野良猫多いんだったら勘違いと違うかな?と思いながら、ボロボロ猫に近づく。猫は驚いたのか最後の力を振り絞るようにヨロヨロと立ち上がった。逃げよう...と思ったのだろう。でも弱りすぎて歩けないから、すぐに捕まえられた。噛まれないように軍手をはめ、猫をネットに入れてからリュックにそっと入れた。猫は鳴く元気もないのか、ひと声も発しなかったし暴れもしなかった。

続く

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