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『ソラナム~オルピと紫夢の召喚士~』第三話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】

第三話

シーン 1

●アゴナス試合場・昼

ベルダスの合図とともに、大きな鐘の音が鳴り響く。二人はそれぞれのポジション、対角に描かれている魔法陣が書かれた円柱の中に入り、それぞれのサモンを召喚する。

ジャール&ケノ「グノーテ・サウト・カリル(汝、我の12(カリル)を司る者。)キュルム・ディクトス!(キュルムの名においてその力を示せ)」

二人が召喚詞を唱えると同時に、それぞれの目の前でサモンが召喚され、空間に文字が描かれる。そしてそれぞれの精霊と同化する。

 ジャールのサモン【Sylas Eggbane (サイラス・エッグベイン)】
 ケノのサモン【Speed Squire (スピード・スクワイア)】

 ジャール「よし、サイラス、一瞬で決めるぞ!」 ケノ「スクワイアの機動力見せてやる」

それぞれ準備が整った様子で、ベルダスの合図を待つ。オルピは二人がサモンを召喚していることに驚く。

 オルピ「そんな、、サモンの召喚は学校を卒業する日に初めてやるはずなのに、、」

オルピの困惑もよそに、ベルダスが合図をする。

 ベルダス「はじめっ!」

開始の号令から勢いよく、ジャールが飛び出して体当たりを決めようとするが、ケノも負けじとスピードよくかわしていく。

 ジャール「くそぉ、、ちょこまかとー」

 ケノ「僕らはスピードが大事なんだ!当たらなければ意味ないからね!」

 ジャール「一撃でも当たれば終わるのにー」

 ケノ「我慢くらべだ!」

ジャールとケノの攻防が続く。オルピはその様子を見て困惑している。

 オルピ「(なんでジャールとケノが争ってるんだ、、、みんな普通に応援とか、、、「戦う」って一体、、、)」

試合はどんどん展開していく。ジャールは体当たりが幾度も不発に終わり、息切れしている様子。

 ジャール「はぁっ、はあっ」

 ケノ「だいぶ疲れたみたいだね!今度はこっちの番だ!!」

ケノはジャールの周囲を高速で旋回し、不意に後ろのポジションを取る。

 ケノ「スクワイア!このまま押し出すぞ!」

 ジャール「うぉぉ」

ジャールは精一杯踏ん張るが、ケノの勢いを止められない。しかしあと一歩という所で、ジャールが踏ん張る。

 ジャール「サイラス!こうなったら奥の手だ!」

 サイラス「(OK!相棒!)食物を照らす光(グローフード・ライト)!」

ジャールがサイラスに合図すると、ジャールの肩口からオーブが浮かびあがり、まばゆく光る。それを見上げたケノは目が眩んでしまう。

 ケノ「うわっ、まぶしいぃ」

ケノが怯んだ瞬間、ジャールは振り返り、身体ごとケノを抱き込みホールドする。

 ジャール「やっと捕まえたぞ!」

 ケノ「うぐぐ、動けない、、」

ジャールはそのままリング際に旋回し、ケノをリングアウトさせる。

 ベルダス「そこまでっ!!」

ベルダスの掛け声で終了の合図である大きな鐘の音が鳴り響く。

 ジャール「よっしゃぁー!一回戦突破だぁ!」

 ケノ「あとちょっとだったのに、、」

 レイス「なかなか面白い展開だったわね!」

 ベルダス「二人とも良い動きだったぞ!最後は握手だ!!」

 ケノ「次は負けないからね!」

 ジャール「おう!ほんとに焦ったぞ!またなっ!」

ジャールとケノは中央で握手し、試合場から降りる。ベルダスが次の試合を促す。

シーン 2

●同・昼

 ベルダス「さて、次はオルピとキッパだな!オルピはどうだ?やれそうか?」

 オルピ「はい、、、」

オルピは戸惑う様子を見せながら、キッパとともにリングの上に向かう。

 キッパ「ねえ、、オルピ、、無理しないほうが良いよ」

 オルピ「、、、、わからないんだ、、」

 キッパ「、、、、」

オルピは先ほどの様子を思いだしながら、重たい足取りで試合場に上がっていく。リング下の一同はそれぞれ心配な様子。

 ジェダ「さて、、、心配な一戦がはじまるぞ」

 ジャール「あいつ本当にやれんのかな」

 レイス「どうなることやらね、、、」

ベルダスが進行していく。

 ベルダス「それでは第二試合を進めていくぞ!二人とも何か異変があればすぐに申し出るようにな!アゴナス2試合目、はじめ!」

キッパは先ほど同様に掛け声と同時に自身のサモンを召喚する。

 キッパ「グノーテ・サウト・カリル キュルム・ディクトス。」

キッパの召喚詞と同時に、サモンが召喚される。

 キッパのサモン【Scholartron Mentorleaf (スカラトロン・メンタリーフ)】

一方オルピは、魔法陣で俯いたまま、動く様子がない。ベルダスはその様子を伺っている。

 オルピ「僕、、召喚なんて、、、」

じっとしている様子のオルピを見て、心配そうに話す中、ベルダスが続ける。

 レイス「やっぱり止めたほうがいいわよ!」

 ベルダス「オルピ、サモンを出さないと始まらないぞ!今日はやはり棄権にするか?」

オルピははっとなり、迷いながらの様子で小さく召喚詞を唱える。

 オルピ「いえ。、、、グノーテ・サウト・カリル キュルム・ディクトス、、。」

すると、他のクラスメイト同様に、一体のサモンが召喚される。それは夢と区別がまだついていない、昨日のサモンと同様だった。

 オルピのサモン【Hazel the Hearty「ヘーゼル・ザ・ハーティ」】

 オルピ「君は、、、(やっぱり昨日のは夢じゃなかったのか、、)」

周囲は召喚が無事できた様子を見て、安心する様子を見せる。

 ジャール「なんだ、あいつやる気はちゃんとあるんじゃねーか」

 ジェダ「見たところサモンは今までと変わらんな」

ベルダスはオルピが無事サモンを呼び出した所を確認して、同化を促す。

 ベルダス「それでは二人ともエノシが済んだら始めるぞー準備はいいか?」

キッパはベルダスからの促しに従い、自身のサモンと同化する。しかしオルピには方法がわからず戸惑う。

 オルピ「(どうしたらいいんだよ、、)なんだ、、【エノシ】って」

オルピがその言葉を発すると同時にヘーゼルの身体がオルピと同化していく。オルピは不思議な感覚に襲われる。

 オルピ「な、何だこれ、、、」

目の前のサモンが消え、自身の身体に不思議な感覚が広がっていく。周囲もその様子を注視している、とその時、レイスがあることに気づく。

シーン 3

●同・昼

 ジェダ「オルピのやつ特に見た目に変わった様子はないな」

 レイス「ねぇ、、、あれは何?」

 ジェダ「ん??どうした」

 レイス「ほら、あの山の向こうの空!」

レイスが指さす方向に目をやる一同。すると段々こちらに大きくなってくる一つのシルエットが目に入ってくる。

 レイス「何なのあれ、、、」

 ジャール「なんか、、、飛んでくる?」

段々形がわかるにつれて、試合場の二人も異様な雰囲気に気づき全員の視線が注がれる。ベルダスが緊張した面持ちで話す。

 ベルダス「まさか、、そんな、、、ここはスコーリアだぞ、、」

 レイス「龍が、、、、」

ふいにレイスがつぶやいた瞬間ベルダスが続ける。

 ベルダス「みんな今すぐ学校へ戻れ!!あれはマリゴアだ!!」

ベルダスが避難の指示を出すが、さらに急加速してその生物が目の前に迫る。

 ジェダ「マリゴアって、、、まさかあの邪龍の!」

 ジャール「なんであんなのがいるんだよ!」

 ベルダス「いいからみんな今すぐ逃げろ!!くそっ、マリゴアなんてあり得ない、、、」

ベルダスは全員に指示を出してからすぐにサモンを呼び出す。

 ベルダス「グノーテ・サウト・レオラ(7)! キュルム・ディクトス!」

ベルダスが召喚詞を唱えると、大きな斧を持ったサモンが召喚される。

 ベルダスのサモン[Axepit Warrios (アクスピット・ウォリオス)]

ベルダス「ウォリオス、緊急事態だ!何としてもここを守るぞ!」

ウォリオス「はい、ベルダス様」

ベルダスが臨戦態勢を取る中、容赦なくマリゴアが迫ってくる。そして、マリゴアはベルダスより先に、試合場で立ちすくむオルピとキッパに狙いをつけて迫ってくる。

 ベルダス「いかん!!!二人とも逃げろー!」

キッパとオルピは召喚が解け、二人で急ぎ逃げようと試合場から降りようとするが、マリゴアのあまりの速さから逃げられない。するとマリゴアの口から、オルピたちに向けて謎の物体が吐き出される。二人にその物体が到達するかいなかのタイミングで、ベルダスが二人の間に入り受け止める。

 ベルダス「ぐはぁっ!!」

 オルピ「先生ーーー!」

逃げまどう生徒たちが学校に戻る中、ジャール、レイス、ジェダは必死にオルピたちを救おうとする。

 ベルダス「いいから、、、早く、、逃げ、、ろ」

 レイス「ねぇ!!早く!!!先生の言う通り、逃げるのよ!」

 ジェダ「キッパは俺が引っ張る。ジャールはレイスと一緒にオルピを頼む」

三人は協力してその場から逃げようとする。そんな中、ベルダスはあっという間に硬直し動かなくなってしまう。するとマリゴアは大きく飛行し、逃げようとする五人に目の前に立ちはだかる。そして、一同の視線にマリゴアの方から顔を覗かせた何者かが目に入る。

~第三話 終~

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