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スタートアップ創業期の資金確保方法まとめ

みなさん、こんにちは。イトーです。
ぼくは経営コンサルタントをしながら、創薬ベンチャー企業の共同創業者としての顔も持っています。

創薬ベンチャーに限らず、ベンチャー企業は貧乏です。創業当初はお金が無く、経営者が自分の給料も支払えない状況にあることもしばしばです。

今回のNoteでは、ベンチャー企業が生き残り、大きく成長していくための前提となる創業期における運営費用や成長のための投資資金をどのように得ているかについて概説してきたいと思います。

ベンチャーファイナンスの基本の型

ベンチャー企業が創業期の運営の原資となるお金を稼ぐための方法は、大きく分けて2つしかありません。つまり、「①本業で稼ぐ」、それができなければ、外部から「②資金調達」するかの、二択です。さらに②は1. Debt Financeと2. Equity Financeの手段があります。

①本業で稼ぐ
企業とは、社会、企業あるいは個人に対して価値を提供する事によって対価を得る疑似人格です。その価値とは、製品であったり、無形のサービスであったり、企業毎に異なりますが、誰かの不足やニーズを満たすものです。

ベンチャー企業とは、本来の意味では、冒険的な企てを目的として創設された中小企業のことを言いますが、ここでは特に創業期・成長期にあり、成長著しい企業として、スタートアップと呼びます。

ほとんどのスタートアップは、達成したい目標や夢があります。しかし、会社を興した時点では、まだ研究開発やプロトタイプの段階であり、すぐに販売したり展開したりできるものが無い状態であることがほとんどです。

例えば、飲食業や受託業などはすぐにお金を稼ぐ性質を持っていますが、その多くは世の中にない新たな事業形態や新規技術の開発を伴っていない為、スタートアップとは呼べません。全く新しいものを0から作り上げるには膨大な時間と努力、資金が必要です。その為、スタートアップが、いきなり本業でお金を稼ぐことはなかなか難しいです。

ただし、本業ですぐにお金を稼ぐことができないため、他のマネタイズができるクイックウィンの事業も展開する事もあります。

例えば、民泊という新たな概念を作り出したスタートアップであるAirbnbは、操業当初はその事業の有望性を誰にも理解されずに、資金が確保できない状態が長く続きました。

彼らは、日々食べるものも困り、このままでは会社を存続させるのは難しいと考え、別の事業で食いつなぐことにしました。それは、シリアル食品の販売でした。

アメリカでは大統領選は、非常に高い熱を持って注目を浴びます。彼らはそれに着目し、スーパーに売っているシリアル食品を、大統領候補が印刷されたパッケージに中身だけを移し、転売しました。この事業は大成功し、Airbnbの本業が成長するまでの繋ぎ資金を得ることができました。

②資金調達
資金調達とは、自分たちで運営資金を稼げない企業が、第三者から資金を得る方法で、必ず支払うこととなります。そして、資金の調達に対する対価の支払い形態に応じて、Debt FinanceとEquity Financeに分けられます。

1. Debt Finance
Debt Financeとは、いわゆる融資です。Debtとは負債を意味しており、銀行、会社あるいは個人からお金を借りて、ある期間経過後に返済をする資金調達の形態です。そして、調達の対価として、資金返済の際に利子という形で対価を上乗せして支払います。

2. Equity Finance
この方法が、スタートアップが資金調達をするための最も主流の方法であるといえます。Ventrue CapitalといわれるEquity Financeに特化したFundやエンジェルと呼ばれる個人の資産家より資金を得る対価として、当該スタートアップののいくらかを提供します。

それぞれのメリットデメリット

さて、これまで述べた通りにスタートアップの資金獲得には3つの方法があります。そして、それぞれに一長一短が存在します。

まず①の本業で稼ぐのは、先に述べた通りに創業したばかりのスタートアップではまず難しいです。すぐに稼げる副業を並行する、という選択肢はあるものの、多くのスタートアップはヒト・カネというリソースが切迫している為、副業で疲弊して、本業の成長がないがしろにされてしまうこともしばしば起こってしまいます。

②資金調達では、資金確保の対価を支払う必要があることが最大のメリットです。

②-1. Debt Financeの場合では対価が利子という金銭になりますので、借りたお金を使って企業が成長し、お金を稼げる状態になれた場合はなんとかなるのですが、基本的にスタートアップは成長までに時間がかかることが多く、利子を支払う事ができないままであったり、利子を支払うことはできるけれども支払ってしまうと、成長の為の投資資金が減ってしまうような状態に陥ってしまうことも起こり得ます。
仮に利子を含めた返済ができない場合、融資者には差し押さえ権利がありますので、資産を差し押さえられて、倒産です。

②-2. Equity Financeは、上記のような返済不可に伴う倒産リスクは低いです。その代わりに、スタートアップの血肉であるを差し出す必要があります。

株は、企業の意思決定権と同義で、株の持ち分比率により会社方針に関する単独決裁権が可能な範囲が決定されます。そして、Equity Financeは、企業のその時点での評価額と調達資金との比率に応じて、差し出す株の数が決まります。

その為、その時点での自分たちの企業価値評価額に見合わない、大量の資金調達を行おうとした場合は、より多くの株を放出する事になり、自分たちで自分たちの行動の意思決定を行う事ができない状態となり、第三者の言いなりになってしまう危険性があります。

しかし、一方で、企業価値が上がれば上がるほど、株を持っている投資家の利益も増大します。したがって、投資先の企業が成長するように、経営面での様々なサポート行う機能を投資家は持っています。その為、Equity Financeで資金調達を行い、株を持ってもらうことで、運命共同体としての仲間を増やす効用もあります。

このようにEquity Financeは諸刃の剣です。したがって、スタートアップと投資家との相性が非常に重要となり、悪徳投資家につかまらないように、スタートアップも慎重に投資家を選ぶ必要があります。

ベンチャーファイナンスのベストミックス

既に述べた通りに、スタートアップで一番選択される資金調達の手段は、Equity Financeです。しかし、大きなデメリットがあることも同時にご説明しました。

もうお分かりの通りに、企業価値が高まっていない状態での、あまりに早いEquity Financeは大きなリスクを伴います。その為、Equity Financeはほぼ必須だけれども、なるべく企業価値を高めてからEquity FInanceを実施したい。つまり、なるべく後ろ倒しにしたい、というのがスタートアップの本音です。

その為、リスクの少ない調達手段を組み合わせて、Equity Financeが必須の時期まで耐え忍ぶのが賢い方法です。
なので、まずはDebt Financeで最低限の運営資金を確保し、企業価値を高めてからDebt Financeを実施するのが理想です。

一方で、特に日本の金融機関では、実績や財務健全性が非常に重視されますので、実績の少ないスタートアップの創業期ではDebt Financeすら困難であるのが、実情です。

日本では、資金調達の手段も資金提供してくれるプレイヤーも額も少ないです。さらに上記状況が組み合わさって、スタートアップの(思い通りの)成長が困難な状況が続いています。

しかし、そのような状況は変わってきているように思います。IT業界をはじめとして、成功を収めたスタートアップが増えていることで、彼らが後輩のスタートアップへの投資を進めている事や、その実績を見て投資家がスタートアップ投資へ積極的になっている為です。

上記を背景に、IT・デジタル業界での資金調達環境は海外に見劣りしない状況となっており、バイオ・医療業界でも絶対額はすくないものの調達しやすい環境ができつつあります。最後に残された領域として、ロボット、宇宙、モビリティなどのエンジニアリング領域が、過酷な環境を強いられているように思います。

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さて、少し小難しい話になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
ぼくは去年までMBAに通っていたのですが、こういった関係の研究を行っていました。もしかしたら、その内容も書く機会が有るかもしれませんが、今回はここまでとしたいと思います。

今回の内容は、もう少しフランクな感じでPodcastでも配信しています。
次回は3/7月アップロード予定です!
https://t.co/3g5U7ZxdFJ?amp=1


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