株式公開買付(TOB)って何?(1/2)

ぼくは旅が好きなのですが、有名な観光地をめぐるだけでなく、ご当地の雰囲気・文化を感じられる近所の散歩も良いでよね。たとえば、ローカルなスーパーに寄ってご当地の製品を眺めるのは、はじめての土地では必ず行う習慣です。

ところでぼくは関西に住んでいるのですが、スーパーはライフ、イズミヤ、オークワなどいろいろありますが、いずれもローカル限定ですがあまりに行くところ行くところにあるので全国区かと勘違いする事も多いです。その中でも、ローカルであることアイデンティティにしているからのようにを名前からして主張し続けているのが、"関西スーパー" です。

その関西スーパーが先日来から阪急阪神東宝グループの小売を統括するH2Oリテイリングと横浜を拠点とするオーケーの2社ともから熱烈なラブコールを受け、争奪戦の様相を呈しています。H2Oは、傘下会社であるイズミヤと阪急オアシスとの経営統合を提案しており、一方でオーケーはTOBによる完全子会社化をもくろんでいます。

経営統合、TOB、なんだか聞いたことがありますが、実際どんな行為なのか、同じなのか違うのか、よくわかりませんね。あ、M&Aなんて言葉もありますが、結局複数の会社が一つに合体する事じゃないの?今回はこれらの言葉の定義と行為について勉強していきたいと思います。

会社が統合するってどういうこと?

会社、つまり企業の経営は常に順風満帆ということは、まずありません。むしろ絶好調な期間よりも、生き残っていくために必死で苦しい時期の方が長いかもしれませんね。

経営学の分野では、いわゆる企業ライフサイクルと呼ばれるものがあり、企業が生まれたばかりの「創業期」から、徐々に大きくなっていく「成長期」、大企業になっていっぱい稼ぐようになった「成熟期」、そして、新陳代謝がなくなり経営的・経済的活力を失っていく「衰退期」の4つのステージが存在しています。

企業が成長期においてもっと成長を促進する、あるいは衰退期を脱するための成長路線への回帰を目指す場合にはいくつか選択肢があります。

自社の経営戦略・方向性を見直し、攻勢に打って出る戦略転換/新規事業創造や、経営を効率化する事でコストを下げたり、リストラ・早期退職で固定費を削減する守りの姿勢がまずは検討されます。

しかし、自社だけでこれらを完遂する元気がない又は外部活用により一気に必要ケイパビリティを獲得したい場合に選択されるのが、「経営統合」あるいは「合併」、「統合」という手段です。

まあわかりやすく言えば、2社以上の会社同士が手を組む/又は結婚して、お互いの良いとこ活用してシナジー出してこうぜ!そういうことです。

経営統合、M&A、TOB 結局何がちがうの?

先の段落で2社以上の企業が1つの会社を作って経営を始めるための手段は3つあると説明しましたが、実はこれは2つに分類されます。つまり「経営統合」と「M&A」です。M&AとはMargers and Acquisitionsの略で、日本語に訳すとそのまま "合併と買収" です。

では、これらの違いはなんでしょうか?

経営統合は、「2社以上の会社が新しい持株会社を共同で設立し、その上でどちらかがその作った新会社の傘下となる」方法です。

例えば今回の関西スーパーさんの例では、H2Oさんが、関西さんを子会社化すると共に、イズミヤと阪急オアシスを関西さんに譲渡します。関西さんは、自分自身のスーパー事業ともらった2社を管理する新しい会社を立ち上げて、これら3スーパーを管理する役割を担うという方法が提案されています。

このように経営統合の場合、複数の会社が一緒にあたらしい会社を立ち上げるため、複数社+1社の会社ができる事となります。一方で、合併の場合は、2社以上の複数の会社が1つの会社となることで、2社が1つの新しい会社を作る「新設合併」と片方の会社がもう片方の中に入る「吸収合併」つまり会社の数は増えず、必ず減ります。

どうして複数の会社が協力しあうという似たような結果をもたらすにも関わらず、複数の方法があるかというと、それぞれに一長一短あるからですね。

経営統合におけるメリットは、(合併に比べて)新会社における「経営の混乱が少ない」ということです。どうしても複数の会社が一緒になるということは、文化/利害/プライドなどの衝突が生まれます。

「経営統合」は、合併のようにどちらかの会社が吸収されるというわけではなく、基本的にはお互いの会社の立場は平等であることが多いので、お互いを尊重しあい比較的に協力的な関係を築きやすくなります。一方で、お互いに平等だからこそ何事も話し合いで解決しようとして時間がかかるとか、折衷案で中途半端な意思決定をしてしまうきらいがあります。

一方で、「合併」の場合はその反対です。立場や権利が偏っている場合が多く、もともと強い立場側の企業の意向が、そのまま新会社の態勢に反映されるため、2社以上分のケイパビリティやリソースを持ちながら、スピーディーでエッジの立った意思決定や行動をとれることとなります。

しかしながら、会社の中で、立場の不平等から不平・不満や対立が起こりやすく、その為にお互いの良いところを合わせて相乗効果を生み出そうとした結果としての、結婚が組織の破綻を招く危険性をはらんでいます。

実際に、M&Aでは、買収前の交渉も非常にタフなものが要求されますが、それ以上または同等程度に合併後のガバナンス(組織の統治)&コントロールが重視される事項となっています。

さて、ひとことに合併といっても複数の方法があります。その方法の一つが買収という行為であり、一方の会社が片方の会社を金にものをいわせて買い取ることをいいます。そのなかに、今回このNoteのテーマとして掲げているTOBが分類されるわけです。

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さてちょっと長くなってしまったので、今回はここまでにしたいと思います。TOBの詳細を話す前に、その前提となる統合と合併の概要とその意味についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?

次回は、具体的にTOBは何なのかということや、TOBを防ぐための手段についてお話していきたいと思います。またよろしければお目通しください!

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