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【日記】犯罪にしてほしい

4月14日 金曜日

涙をこらえてバスに揺られる、午後6時半。

何があったかをダラダラ説明する。

今日は3限の授業を受けて、4限授業の教室に行ったが30分経っても先生が現れず、みんなで解散した。どうやら今週は休みだったらしい。(絶対あるって言ってたけど)

思いがけず少し時間ができたので、行くのを諦めていたオープン1周年記念を祝して大幅セール中の古着屋に向かった。店内商品ほとんど20~50%引きという破格。Tシャツ2枚とカーディガン1枚、14,000円分を7,000円で購入。気分は最高だ。

それからスタバに行って少し課題やら頼まれてたポスターやらに手を付け、なんとなく移動したくなり駅行きのバスに乗った。これがはじまり。

すると、後ろに座っていた人に突然、「お姉さん、このシャツの柄なんていうんですか?」と声をかけられた。お気に入りのシャツだったので、どこで買ったのか、同窓会で着るために買い付けたなどと、聞かれるがまま愛想よく答えていた。お姉さんと言われた時点で嫌悪感を抱くべきだったが、突然すぎてそっちには意識が向かなかった。

それでなぜか大学の話になり、何を学んでいるのか、サークルは何に入っているのかなどの話題になった。話し方がうまく、なんか知的な人に思えて、普段なら軽音のほうだけ言うが、SELFの話もしてしまった。

「どうしてその分野に興味を持ったの?」
「1年生のとき担当だった教授の影響で。(これはきっかけの一部分に過ぎないが、説明が面倒だった。)」
「へ~、その教授に惚れたみたいな、そんな感じ?」
「まあ、そうですね。」

「その教授は、男?女?」

いろんな意味で、すべての方向性において嫌な質問だ。

「うーん、、、、、まあ、男ですかね。」
「なにそれ、どういうこと?」

余計にめんどくさくなる答え方をしてしまった。仕方がなかったので、人の性別を自分で判断しないようにしていると素直に言った。

「それって、自分に対しても?」
「まあ、そうですね。」

それからも人見知りで友達が少ないこととか、学校が息苦しく感じるとか、巧みなコミュニケーション能力で話を引き出してきて、自分の繊細さをわかってくれるようなそぶりを見せた。(その人は僕のことを「繊細」と表現したが、そんな一言で済ませてもらっちゃ困ると思った。)いまはなんでこんなにしゃべっちゃったのかわからない。でも、バスが止まらないのと同じで話を止めるきっかけもなくて、なんかニコニコ喋ってしまった。いつ美味しいウォーターサーバーを薦められるのか、愛と金の話をされるのか、頭の隅では考えていた。

「一緒にどこかでお酒飲まない?」

相手の顔色が変わった。すごい気持ち悪い顔だった。僕はとっさに、「お酒飲めないんですよー。」と言った。僕はザルだ。

「実は俺もなんだよね。ジュースでもいいよ。」

なんで飲めやんのに誘ったねん。逆にジュースの方が恐いわ。「実はこの後友達と約束してて。」全然予定はないが、必死に取り繕った。心臓はずっとドキドキしていた。なら酒飲まんとか言う前に言えよと、今なら自分でツッコめるのに。

終点について、僕はさっさと降りようと思った。降りたらすぐに、LINEを持っているかと聞かれた。とっさに、はいと言ってしまった。じゃあ今度遊ぼう、交換しようと、QRコードを見せられた。LINEはなんかまずい気がして、インスタは、ツイッターはと聞いたが、即答で、「やってないんだよね。」と言われた。

こんだけ話を引き延ばして断り方がわからなくて、言われるがまま、交換してしまった。颯爽とどこかへ去っていった。

こんなことがはじめてだったので、気持ち悪いのと、どうしよう、交換してしまった、という、何が何だかわからない恐怖で手が震えた。バスから降りたら、何を言われるか、何をされるかと考えていた。マルチか宗教の勧誘の方がずっとましだったように思えた。

すぐに友達に電話したが、何も言葉が出てこなかった。涙があふれそうになった。家に行ってもいいかと聞くと、快く承諾してくれたので、駅についてすぐ帰りのバスに乗った。

バスの中で、LINEはブロックした。耐えられない恐怖と不安で、「ナンパ LINE交換」と調べた。連絡先を交換してしまった時にやるべきこと、対処法が書かれていることを期待したが、「ナンパで連絡先を確実にgetする方法」「交換できたLINEでの文章の送り方」「返信が脈アリか判断する方法」などの検索結果が上からズラーっと並んでいた。より一層恐怖感が増した。こんなものが存在するのか。今一番見てはいけないものを見てしまった。

友達に会うなり、安堵で涙がぽろぽろでてきて、すべての事情を話した。友達は、言葉が詰まってなかなか話せない僕を静かに待ってくれた。そのあとは、辛かったね、恐かったね、と、僕の感情を言葉にして何度も言ってくれた。正直、事の重大さと言うか、この恐怖をわかってもらえないんじゃないかと内心不安だったので、この子に連絡してよかったと思った。

母親にも連絡したが、僕がこわかったということを伝えるまでは、すごいね、というような感想だった。「ナンパ」という言葉を発せられた時は、カタカナだし、軽く聞こえるし、なんか納得できなかった。本当に本当に、恐ろしかった。

「今は出会い系サイトとかあるんだから、急に声かけるのとか、やめてほしいよね。」友達は言った。至極真っ当な意見だと思った。

今日の出来事について、何が恐かったのか、何が嫌だったのか、不快だったのか、ふんわりとはわかっているけど、まだ整理できていない。しかし、かなりトラウマになりそうな経験だった。ナンパは犯罪にしてほしい。切実な願い。



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