「学生だから」と「学生のうちに」の間を彷徨っている。

学生だから勉学に励むのは当然。私は4月から、先生に言われたように、勉強面は心配ない生徒に戻らないといけない。(勉強もそれ以外も問題点だらけなことに先生はまだ気付いていないから。)

学生のうちに羽目を外すのもいいと思う。貯金よりも経験に投資をしなさいと、色んなサイトで見知らぬ大人が語っている。


 高校の文化祭で、ギター研究部という名の軽音楽部のステージを見に行った。一緒に文化祭を周っていた子の友人が出るという理由で。机を並べたステージに、ライブハウスの人にお願いした音響と照明。野球部が前列を占めて演奏者の名前を叫ぶ。普段はバド部の練習場であるアリーナが、その日はライブハウス然としていた。

その頃の私は、邦ロックなんて全然知らなくて、音が大きく、熱気が凄いその空間が嫌でたまらなかった。スピーカーから出てくる音は、上手い下手すらも分からないくらい歪んで聴こえた。そんな中で私も知っていた『Lovers』。ステージと観客の掛け合い。一体感。素直に楽しいと感じた。


高2の1月、卒業する3年生へ向けての餞の会で劇をするという伝統があった。私たちの代は『伝言歌』を題材にした劇だった。劇の最後に、ギタ研で一番上手いと言われていた男の子が伝言歌を歌い上げた。

高3の運動会のグループ劇。発泡スチロールや炙って曲げた竹を駆使して作った大きな人魚を主人公にした物語。最後にグループ全体で中央に走り出て踊ったのは『ファンファーレ』。腕を回して飛び跳ねて。最高に青春だった。


様々な行事を終えて、部活も引退した頃、土曜日の夕方にテレビでやっていたmix。元野球部の兄の影響か、何気なくついていたそのアニメで流れていた『イコール』。当時、LINEミュージックに設定していた。


 学生だから勉強が大事。学生だからお金がない。学生だから時間がある。学生のうちに遊んどけ。学生のうちに経験を。学生のうちに貯金を。

きっとどれも正解で、その人がその時に大切にしたいものを大切にしたらいい。大切でなくても、それを選択するのが自然だったり、それしか選択できなかったりもする。

でも、私たちの力ではどうしようもない、運命という言葉が非情に聞こえるような出来事が起きた時、自分の選択に自信が持てなくなる。

あの時諦めたライブが最後だった。あの時買わなかったCDが最後だった。あの時見れなかったテレビ出演が最後だった。

そうなった時、最後を見届けることができなかった自分の選択を、間違いだったと思ってしまうかもしれない。


 でも、それはとても悲しいことだと思う。最後が来たということだけでなく、それ以前の自分のことを否定することも。

かける時間やお金だけが全てではない。行きたいな、行けないな。買いたいな、買えないな。好きだな、好きじゃないな。どれも一種の愛として、私は私のペースで好きなバンドのファンを続けたい。


 BREIMENのライブに行った時、今までいくつもライブを見ていて、メンバーとも話したことのある方とお話をした。色んな話をして、メジャーデビューがどうとかいう話もして、結局落ち着いたのは、メンバーが楽しければいいよね、ということ。

音楽を提供してくれる方達が、楽しいと思うその日々を、たまにファンとして見に行く。たまにお金を払って自分の物にする。

アーティスト側の思惑がどうであろうと、他のファンがどうであろうと、どんな運命が待っていようと。

結局は自分のペースでしか愛せないし、それでいいのだとも思う。


 でも、私は今音楽を聴いてライブにも行くようになって、人生が確実に楽しくなったと思っている。

平日だから諦めたライブ。遠いから諦めたライブ。高いから買わなかったグッズ。

もしその次がなかったら、私はきっと後悔するだろう。ズル休みしてでも、貯金を使ってでも、受け取れば良かったと。

でも、諦めながらファンを続けている今は、とっても楽しい。そのことを忘れたくはない。

諦めたことを後悔しても、諦めていた当時が辛いものではなかったと、思い出せるように。今日も音楽を受け取ろうと思う。


 このアカウントを音楽垢にするつもりはないけれど、今はこれを一番に書きたいと思った。愛したいものを愛したいように愛する。その気持ちに正誤はないと信じて。


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