終末期患者が最期に書いたメモ

私が働いている施設はがん末期の入居者さんが主に占めています。
がん患者で余命宣告を受け、自宅では生活が困難な方が多いです。
麻薬での疼痛コントロール、栄養剤や点滴での補液、呼吸困難には酸素投与や痰の吸引が、看護師の私の主な仕事です。それ以外にも日常生活援助として介護士さんと協力し食事介助やおむつ交換など様々なケアをしています。

先日、ご逝去された入居者さんのベッドサイドには「家に帰りたい、うなぎが食べたい」と弱々しい字で書かれたメモが残されていました。

ここに入居されるとき、すでに意識レベルが下がり寝たきりの方もいれば、まだまだ歩いて自分のことが少しできる方、ベッド上で過ごすことが多いがテレビを見たりものを書いたりして過ごしている方など様々いらっしゃいます。

積極的な治療が出来なくなり緩和ケアへと移行された入居者さんは、施設に入所後、病院での様々な制限がなくなりお部屋で自由に過ごされています。

往診医の許可があれば今まで食べれなかったカップラーメンやお菓子、ジュースやビールなど様々な嗜好品を楽しんでいます。

しかし、徐々に自分でできることが減っていき、私達に対して、
「自分が情けない、お世話かけます」と悲観的な発言をされる方が多いです。
また、「何もしないで、一人の時間が欲しい」と言われる方もいらっしゃいます。

そんな中、入居者さんはベッドサイドでいろいろなメモを取っています。
日付けや血圧の値、家族に持ってきてもらいたいもの、食べたいもの、残りの時間でやらなきゃいけないこと…

病状が進むにつれて、記憶力や記銘力が低下し
「自分が何を書いているかわからない」と申される方もいます。

また認知機能が低下した入居者さんでは、色鮮やかに塗ることができていた塗り絵が単一色になったりと、日に日に病状が悪化しているのがわかります。

そして会話ができないほど、病状が進行したとき、ベッドサイドには生活をしてきた様々な証が残っています。

スタッフによってはゴミと思い捨てたり、家族にとって良くないかもしれないからと処分してしまう方もいらっしゃいますが、
私はそのメモや使ったものたちは遺された家族にとって大切な宝物になると思っています。

明らかに字になっていないものは捨てるかもしれません。
でもメッセージとして読めるものは極力取っておきます。

だってその人の生きていた証なのだから。

家族によっては見るのが辛い、と思うかもしれません。ご逝去後気持ちが追いついていない中、故人の葬儀や荷物の整理をするのはとても苦痛に感じる方もいるかと思います。

その方とのいろいろな思い出が回想され感情が不安定になるかと思います。

気持ちの整理がついて落ち着いた頃に処分するなり取っておくなりしたら良いのです。
ただそれまでは生きていた証として取っておいてほしいなぁと私は思います。

なのでどんなメモでも私は極力捨てない。家族の面会のとき渡せるものは渡します。

私のケアが利用者さんと家族やキーパーソンの方にとって有意義であるとよいなぁと思います😊

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