炭、酸ヶ
7月某日。
仕事が色々と立て込み、連日忙しい。
私は普段炭酸を飲まない。
だが、連日体力仕事をやっていると腹も空けば炭酸も飲みたくなる。
会社の帰りにまた炭酸が飲みたくなる。
炭酸といえばコーラだろう。
だが、連日コーラよりもせっかくなら別の炭酸が飲みたい。
そうだ。ファンタにしよう。
そう心に決めて帰り道にある自販機に目をやる。
あるじゃないか。ファンタグレープ。
いかにもシュワっと喉を潤してくれるパッケージ。
ブドウが弾けている。いざ参らんと私は財布を取り出し500円を自販機に入れる。
…ガシャン。
あれ。ボタンのランプが光らない。
釣り銭口に目をやると500円が無常にも戻ってきている。
2〜3度繰り返すが結果は同じだった。
どうやら新500円玉に対応していないようだ。
おいおい。新札がこの前回り始めたのにまだこの自販機は2021年に発行された新500円にも対応していないのか。勘弁してくれよ。目の前にファンタはあるのに。
他の小銭がない自分を恨んだ。
仕方ないので30m先の自販機へ。そこにファンタはない。
うーん。強炭酸のペプシか。マウンテンデューか。
ファンタが良かったがもういい。
マウンテンデューにしようと決め、500円を入れる。
…ガシャン。
またもやボタンのランプが光らない。
なんだこの街は。
たった2台の自販機が対応していないだけでこの街の自販機はどこも対応しないように影のドンが取り締まっているんじゃないかと疑うほどになった。
まぁいい。これは買うならファンタにしなさいと神様がいっているんだろうとポジティブに考え次はコンビニに行く。
陳列された飲料水を上から順にみる。
…ファンタがない。
いや、そんなバカな。きっとこの店に偶然なかっただけだ。
そう思って一度駅を通り逆側にあるコンビニへと向かう。
ここにもファンタはなかった。
私の心はそこで完全に折れてしまった。
レジに持って行くのはいつもの緑茶。
炭酸が抜けた私はもう普段の私だ。
翌日ファンタが話を後輩にしたところファンタは随分前からコンビニに置かれることが少なくなっていたそうだ。
炭酸に普段目をやらないせいで感覚は昔のまま。
ファンタはコーラと横並びという固定概念は時代とともに変わっていた。
私がファンタを手にするのは当分先になるだろう。
散々。
炭、酸ヶ。
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