Star Made

 2021年、コブクロとして2年ぶりのライブツアーの開催が決定した。ここまで2年間、無観客でのライブを複数開催し、目の前にファンがいない異例のライブだったのが、50%収容で有観客ライブが復活。
 夏、コブクロはメジャー通算10枚目のオリジナルアルバム「Star Made」をリリースし、それを引っ提げて同タイトルのツアー開催となった。


ALBUM『Star Made』収録曲

01.Star Song
02.風をみつめて
03.卒業
04.ONE TIMES ONE
05.両忘
06.灯ル祈リ
07.露光
08.晴々
09.夕紅
10.心
11.君になれ
12.大阪SOUL
13.白雪
14.バトン
15.Always ( laughing with you. )

LONG INTERVIEW 黒田俊介「種を育てていくこと」

 黒田さんは結成20周年を迎えた2018年、直前に開催していたツアー「ONE TIMES ONE」で言い逃れをしたくなる瞬間があった。2人だけでしかも普段よりも広い会場で歌うことで、これくらいで仕方ない…という考えになってしまった。わかっていても打てないストレートのような歌を歌うためになにをしたらよいのか。黒田さんは自身が好きなブラックミュージックは、コブクロの歌には必要ないと考え、歌を生かすためにどうしたらよいかを考えるようになった。そして翌年の「ATB」ツアーを迎える。

 そこから黒田さんは、相方の小渕さんに曲作りやレコーディングのジャッジを任せるようになった。コブクロのアイデンティティともいえる種の部分を小渕さんに任せ、黒田さんは完全にそれを生かすために歌を歌うようになった。例え好みの歌でなくても。

 そして黒田さんがボーカリストとしてすごいと思うボイストレーナー鈴木先生の存在も大きいという。自分が進むべき道がわかった黒田さんは、鈴木先生の言うことを全吸収しようというスイッチが入った。以前は黒田さんの深みのある声をさらに深くしようとして喉に負担が掛かりやすくなっていたのだが、響きのある声に進化させることで、コブクロのボーカルとしての歌を極め始めたのだ。

 しかし時代はコロナ禍へ。しかし黒田さんは逆に今何ができるのかと、楽しんでいた。もちろんライブパフォーマンスで観客の声が聴けないというようなマイナス面はあったが、「FAN FESTA 2021 STREAMING LIVE」のように、観客がいないからこそ組めるステージというのもあり、そこから得られることも多かったようだ。

 アルバム「Star Made」が完成し迎えるツアーでは、小細工ではない、一皮剥けた歌を歌えたらいいなと黒田さんは思っているようだ。

LONG INTERVIEW 小渕健太郎

「みんなの笑顔を見るために」

 小渕さんは結成20周年を記念して作った「晴々」をLIVEで歌うことができたことで、20年の夢が叶ったような奇跡を体感した。そしてそこからさらに深いところへ潜っていく感覚があった。それはただコブクロが20周年でありがとうというだけでなく、世の中では自然災害を始め、辛い出来事が起きていること。それが「風をみつめて」など、小渕さんの言葉の選び方に変化をもたらしたという。

 その後のコロナ禍で小渕さんには様々な思いがあった。小渕さんはこの状態だからこのような歌を届けようとはならなかった。今まではできたことをだめと言われる世の中を見て、小渕さんは新曲の制作に取り掛かった。重い空気を変えられる前向きな歌と、苦しい思いをしている人たちを優しく包み込む歌が必要だと考えた。

 楽曲制作については「Star Made」に収録する新曲の話へ。2017年の「心」から、一度収録曲になり得る曲を見返し、1〜3月で新しい曲を作っていった。「両忘」ができ、「露光」、「夕紅」ができ、最後に「Always ( laughing with you. )」ができた。2020年にコロナ禍の影響を受けて作った「灯ル祈リ」や「Lullaby」があるため、コロナ禍から離れた歌を作りたかったようだ。

 さらに小渕さんは、今までのギターとICレコーダーのみでの作曲作業以外にも、デジタルの音源を使いデモを組み立てる手法も取り入れ、「Always ( laughing with you. )」はそうだ。転調を繰り返し、蕾が花になって広がっていくような世界観を持った曲が生まれるという新しい発見もあった。

 嘘偽りない心の声に耳を澄ませ、お互いが楽しめる時間になるといいなと思いながら、思い出深いツアーになるだろう。

欠かさないライブリハーサル

 2年ぶりに有観客ツアーを開催することとなったが、途中で中止になっても仕方がないという状況で始まった。また、鈍っていた生音を届ける感覚も再び覚醒。そのためには主に黒田さんが音響担当と協力して行う、久しぶりの会場に響く音の確認が非常に効いている。小渕さんや監督とも話し合いながら、最高のLIVEを届けるために毎公演の裏の努力、ありがたい。

 特典映像として収録された「LIVE TOUR Documentary」によると、黒田さんは各会場で異なる音響、MCがウケるのか、盛り上がるのかを心配したという。しかし、蓋を開けてみるといつも以上に元気に盛り上がっているのではないかと感じたという。「ニューノーマル」という語を多く口にしていた。対して小渕さんは、有観客でのツアーへの感謝をし、曲作りの秘密も話してくれた。自由な曲作りができており、インディーズの時代に作っていた頃の曲のテイストに似た曲ができたという感覚らしい。LIVEでの新曲披露を積極的にしていきたいということも話した。来ることができない人もいただろうが、それを考えているよりも観客の何倍もの元気を持ってステージに立つことが大切だと思ったという話もしてくれた。

黒田さんのボイストレーニング


会場と日程

2021/7/16(金)17(土) 森のホール21 (松戸市文化会館)
2021/7/23(金)24(土) 愛媛県県民文化会館
2021/8/20(金)21(土) 広島文化学園HBGホール
2021/9/2(木)3(金) 仙台サンプラザホール
2021/9/9(木)10(金) 札幌文化芸術劇場 hitaru
2021/9/21(火)22(水) 神戸国際会館
2021/9/30(木)10/1(金) パシフィコ横浜 国立大ホール
2021/10/7(木)8(金) 名古屋国際会議場 センチュリーホール
2021/10/13(水)14(木) 宮崎市民文化ホール
2021/10/21(木)22(金) 福岡サンパレス
2021/10/27(水)28(木) 東京ガーデンシアター
2021/11/5(金)6(土) 大阪・フェスティバルホール

生演奏の迫力と進化した声

 2021年、コロナ禍初の観客入りでのLIVEとなった『Star Made』は、10枚目のオリジナルアルバム『Star Made』を引っ提げ開催された。1枚目の「Roadmade」で、夢の方向に向けた方位磁針は今日、ここを指している。個人的には、仙台2日目のチケットをトレードして手放したことで、現地で参加できていないLIVEである。

 会場が暗転すると、いつもはSEが流れるが、このツアーは生演奏。このオープニングだけで、ストリングスの繊細なメロディ、エレキギターの強さ、ドラムの安定感、さまざまな魅力が伝わってくる。ここだけで泣いたなぁ。それに生演奏は、1曲目への加速をつける役割も果たした。少し伸びた髪の毛に薄いサングラス姿で黒田さんが手拍子を煽った。1曲目は「Star Song」。小渕さんの「行くぞ東京」から始まった。アルバムでも1曲目を飾った、明るい曲。激しいアップテンポではないのが、穏やかなLIVEの始まりを後押しした。人生の傍らにある大切な歌に育つだろう。この歌ではサビ終盤の「もう」と「ずっと」の破壊力が抜群だった。

♪Star Song at 森のホール21
は、ファンサイトのリンクを貼っておきます。

 2曲目は「晴々」。この曲はLIVEの終盤にもう一盛り上がりするというときに歌う印象が強いが、まさかの2曲目。LIVEで歌う機会も増えてきた最後の「Wowow…」のところでは演奏が違っていて、小渕さんがハモリを入れ、2人で「晴々」と歌って締めた。

 3曲目は「ONE TIMES ONE」。コブクロはどんなときでも支え合い、同じ速度でそれぞれの車輪を回してきた。それを感じたのがこの曲だった。そして、小渕さんの「ONE TIMES ONEポーズ」も見られた。また、パート割りが少しだけ変わっていて、サビ前の「何度でも探そう」「行き先は同じ」はどちらもユニゾンだった。この序盤3曲を聞くだけで、黒田さんのボーカルの進化が感じられた。2020年のYou Tubeでのボイストレーニング動画内で、声帯結節がなくなったということがボイストレーナーから話されており、その恩恵も受けたのかと思う。

 MCでは、収容人数の50%という制約を受け、小渕さんから「今回来られなかった人の分まで拍手を聴かせてほしい」と要求し、観客の拍手で、「はい、100% !」と元気いっぱいだった。「他のところでは言わないでくださいね 50%ですからね」と黒田さん(笑)。

3月の川沿いを結ぶ白いアーチ濡らす天気雨

 LIVEは4曲目、「紙飛行機」。アルバム「One Song From Two Hearts」からの選曲で、この曲のみが「Roadmade」、「Star Made」以外からの選曲となった。ここでは小渕さんの「紙飛行機ポーズ」が見られた。

 5曲目は「夕紅」。アルバムからの新曲。詞が極端に少なく、行間を読むことが必要になった。小渕さんはそうさせるのが非常に得意な作詞家である。

 それが次の曲でも見られ、6曲目は「卒業」。元々の歌詞から敢えて一部の歌詞を抜き、その分音を伸ばすことで、その時間でそれぞれの過去を思い出させてくれた。この「卒業」は、今までの「卒業」のなかでも冴え渡る黒田さんのボーカルは「考えたなぁ」と感心した。「卒業」は2020年リリースなので、ツアー初披露とった。曲の終わりには、小渕さんが卒業証書を貰うかのようにすっと立っていた。

 ツアー終了後に黒田さんが公開した、LIVEの直撮り動画では「卒業」が3つ公開された。どれもが違う歌い方で試行錯誤したのだろう。

♪卒業 at 森のホール21



最も進化した「露光」

 「懐かしい歌です」という紹介の後、7曲目は「赤い糸」、8曲目は「露光」と続いた。この2曲、露光が赤い糸のアンサーソングであり、「会ってくれますか」という一行で赤い糸のように繋がっている。【FANFESTA 2021】とは逆の曲順で披露された。「露光」は、このLIVEでは最も音の少ない曲だ。それに黒田さんの進化した「嬉しさと切なさの混じった色」が出ている声が合わさった。衝撃を受けた観客は多いだろう。このツアーはこの曲を中心に作られたと言ってもいいほどのボーカルだった。

 そして僕がここまでの黒田さんの声を聴いて感じたこと。10周年辺りの時期はコブクロのなかでは高音域が多発したが、最近は中音域を極めているなと。音域は広かったようだが、こうして常に「今」の声で最も伝えたいことを伝えられる方法を模索していくコブクロが見えた。

露光 at 大阪フェスティバルホール Day2



異色のバラードブロック

 バラードブロック。しかしこのツアーは違う。この世界はまた時代が変わった。わたしたちはどんな時代にも流れている「風」をみつめて過ごしている。そんな、移りゆく時代の中で頑張る日々を応援してくれ、ときに休めてくれる曲。9曲目は「風をみつめて」。温かいバラードから始まった。20周年のATBのときに、完成したと思っていたのだが、それからまた進化した。優しく強いボーカルになっていた。

 次が10曲目というところでステージから、聞き覚えのない音が聞こえた。新楽器テルミンの音が鳴る中始まったのは「両忘」。ニューシングルをここに持ってきたかと。エレキギターの歪んだ音が足された演奏の中、2人が圧巻の歌唱を披露した。コブクロの中では珍しいテイストの楽曲がブロックの2曲目に手拍子とともに披露された。

 この2曲は、一度立ち止まってしまうほどの失敗や苦労の後に歩き出す僕らを支えてくれている歌と言えると思うのだが、次の歌も不条理に心をやられそうになる人に刺さる歌。

この時代を焼き尽くす「灯ル祈リ」

 11曲目は「灯ル祈リ」。ロックバラードで、一つ前の年のシングル曲。暗い時代に狭く強く照らす光のような、エネルギーを持った曲。オンラインでのLIVEや野外でのイベントライブでは披露されたが、コブクロのLIVEで観客の前で披露するのは初めてだった。もちろんツアーでも初披露だった。

 ラストサビでは演奏がなくなり、2人の声だけが聴こえるマイクオフアカペラも聴くことができた。「いつか灰になる覚悟の上で共に生きる魂を捧げよう」とメッセージを生声で伝えた。時が止まったような感覚のあとに生まれる、新しい芽をみんなで見ていこうという気持ちが込められている。

コールアンドレスポンスなしの盛り上がりブロック

 盛り上がりブロックは、黒田さんがステージの右側(小渕さん側)へ。12曲目は「コンパス」。ツアーでは披露されることが少なく、ツアーで披露されるのかという驚きもあり、盛り上がった。

 13曲目は「君になれ」。黒田さんの伸びやかな声で、ここでも進化を感じた。会場は一気にロックの雰囲気になった。

 14曲目は「白雪」。ファンフェスタに続いて連続での披露となった。

 本編最終15曲目は「大阪SOUL」。ツアーでは初披露。この曲はだいたい最初が最後なので予想をしやすい。

あたたかいLIVEもいよいよアンコール

 普段のLIVEではコールアンドレスポンスをするが、本編ではしなかった。本編に限ると寂しさを感じたファンもいるのではないか。

 アンコールはMCなしに始まった。1曲目は「轍」。コールアンドレスポンスがある曲。この時代なので、声を出すことはできないが、コブクロの工夫で盛り上げた。コールアンドレスポンスの場面では、小渕さんが「聴こえるよ 上の方の人たちズレてるよ 今どこ歌ってたっけ?」と客席に話しかけた。この曲がこのツアー唯一のコールアンドレスポンス。最後のギターからの締めは、さらに盛り上がるようにバックの演奏がパワーアップしていた。またいつか大きな声でこの歌を歌えるまでこの轍を繋げていこう。

 次の歌は今までの轍を振り返る歌といってもいい。

いろいろな感動を生んだアンコール

 そして、最後は「Always (laughing with you.)」。この曲がアルバムを締めくくり、LIVEも締めくくる、大切な歌。2人がストリートライブをしていた頃のたくさんの想いが込められ、転調を繰り返しながら明るい明日へ向かっていくような優しい歌である。ファンへの感謝、スタッフへの感謝。そんな歌はこれまでに作ってきたが、コブクロ自身のことを歌にしたことはあまりなかった。寂しさも希望ももってこのLIVEは幕を閉じる。スタッフや観客の気持ちが同じ方向を向いた結果だった。

本ツアーのダイジェスト映像はYouTubeへ↓


SETLIST

OPENING

01.Star Song(New Song)

02.晴々

03.ONE TIMES ONE

MC

04.紙飛行機

05.夕紅(New Song)

06.卒業

MC

07.赤い糸

08.露光(New Song)

MC

09.風をみつめて

10.両忘(New Song)

11.灯ル祈リ

MC

12.コンパス

13.君になれ

14.白雪

15.大阪SOUL

ENCORE

EN1.轍

MC

EN2.Always (laughing with you.)(New Song)

CLOSING〜Star Song〜


MEMBER

Vocal、Acoustic and Electric Guitars、Theremin…小渕健太郎

Vocal…黒田俊介

Guitars、Chorus…福原将宜

Bass…種子田健

Drums…河村カースケ智康

Percussions、Chorus…坂井"Lambsy"秀彰

Piano、keyboards、Chorus…松浦基悦

1st Violin…漆原直美

2nd Violin…藤縄陽子

Viola…渡邉智生

Cello…原口梓

敬称略









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