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【物語研究】 トランス状態とは?映画を観た後の脳波について
物語作りにおいて、視聴者や読者を深く引き込む技術は非常に重要です。その中でも、トランス状態(フロー状態)という心理的現象が注目されています。この状態は、深い集中力と没入感を特徴とし、時間の感覚が歪むことがあります。今回は、このトランス状態を利用して映画や漫画の制作にどのように応用できるかを探ります。
トランス状態とは?
トランス状態とは、深い集中と没入感を特徴とする心理的状態で、以下の要素が含まれます:
明確な目標: 作業の目標や目的が明確であること。
直ちにフィードバック: 作業の進捗や結果がすぐにわかること。
課題とスキルのバランス: 課題が自分のスキルレベルに適していること。
深い集中: 他のことを考えず、完全に現在の作業に集中できること。
自己意識の消失: 自分自身や外部環境に対する意識が薄れること。
時間の感覚の変化: 時間が速く過ぎるように感じる、または逆に遅く感じること。
トランス状態になるとどうなるのか?
トランス状態になると、以下のような変化が脳と心に生じます:
深い集中と没入感:
作業に対する集中力が極限まで高まり、他のことを考えなくなります。この状態では、外部の雑音や環境からの干渉がほとんど気にならなくなります。
時間の歪み:
トランス状態では、時間の感覚が変わります。通常は、時間があっという間に過ぎるように感じることが多いです。一方、時には時間が非常にゆっくりと感じられることもあります。
高いパフォーマンス:
トランス状態では、通常よりも高いレベルのパフォーマンスを発揮できます。創造力や問題解決能力が最大限に引き出され、効率的に作業を進めることができます。
感情の高揚:
この状態では、ポジティブな感情が高まり、充実感や幸福感を感じることが多いです。自己効力感(自分が目標を達成できるという感覚)も向上します。
自己意識の消失:
自分自身や周囲の環境に対する意識が薄れ、完全に現在の作業に没頭します。これは、非常にリラックスした状態でもあります。
映画を観た後の脳の状態
映画を観た後の脳の状態に関する研究では、映画が視聴者に強いトランス状態を引き起こすことが示されています。以下にその具体的な例を挙げます:
神経同期(Neural Synchrony):
複数の人が同じ映画を観た際に、脳の活動パターンが一致する現象が観察されます。これは特に強い感情的なシーンや予測できない展開で顕著です。例えば、Hassonらの研究では、映画『グッド・ウィル・ハンティング』を観ている時に被験者の脳活動が高い一致を示しました。
感情的共鳴:
映画が視覚、聴覚、感情の各領域に強い刺激を与えることで、視聴者の脳が同調しやすくなります。これにより、視聴者間で共有された感情的な経験が強化されます。
注意と記憶の強化:
映画を観ることで、特定のストーリーラインやキャラクターに対する注意が集中し、記憶の形成が促進されます。これは、特定のシーンやキャラクターに対する強い感情的な結びつきによってさらに強化されます。
映画や漫画への応用
映画における応用
カメラワーク:
クローズアップショット: キャラクターの感情を強調し、視聴者の感情移入を促進します。
ロングテイク: シーンを途切れなく撮影することで、視聴者をその場にいるような感覚にさせます。
照明と色彩:
照明の変化: 感情や緊張感を高めるために、シーンごとに照明を調整します。
色彩のコントラスト: 特定の色を強調することで感情やテーマを視覚的に伝えます。
音響効果:
サウンドトラック: シーンの雰囲気を作り出し、感情を増幅させます。
効果音: 特定の音を強調することで、リアリティを感じさせます。
漫画における応用
視覚的な引き込み:
詳細な背景描写: 読者がその世界に没入できるような細部まで描かれた背景。
動きの表現: スピード線やアクションの動きを強調する技法。
キャラクターの表情:
感情の表現: キャラクターの表情やボディランゲージを詳細に描写し、読者がキャラクターの感情に共感しやすくする。
パネルの配置とリズム:
緊張と解放: 緊張感のあるシーンとリラックスできるシーンを交互に配置し、物語のペースを調整します。
クリフハンガー: 章の終わりに次の展開を気にさせる要素を入れることで、読者の興味を引き続けます。
まとめ
トランス状態を理解し、意識的に物語の制作に取り入れることで、視聴者や読者にとってより魅力的で没入感のある作品を作り出すことができます。映画や漫画それぞれに適した演出技法を駆使し、トランス状態を引き起こすことで、物語の力を最大限に引き出しましょう。
このように、心理学の知見を応用することで、より魅力的で引き込まれる物語を作成するための具体的な手法を解説しました。これを参考に、自分の作品にどのように応用できるかを考えてみてください。
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