世界の武勲艦 2 戦艦「ウォースパイト」とナルヴィク海戦

◆戦艦「ウォースパイト」
 1915年3月8日、戦艦「ウォースパイト」は就役した。第一次世界大戦前の1912年計画で建造された「クイーン・エリザベス」級の2番艦で、イギリス戦艦として初めて38.1cm砲を搭載した超々弩級戦艦だった。建造はデヴォンポート海軍工廠で、1912年10月31日起工、1913年11月26日に進水、竣工後は本国艦隊に加えられた。
 超々弩級戦艦の弩とは、イギリス海軍が1906年に就役させた戦艦「ドレッドノート」のことを指す。同艦は、主砲を30.5cm砲とした単一巨砲搭載艦として、戦艦の態様を一変させた。いわゆる弩級戦艦の時代の到来である。しかし、兵器開発の歴史はより巨大、強力なものを求める競争の歴史であり、世界各国海軍は「ドレッドノート」を超える戦艦建造に狂奔することになった。
 1912年に就役した「オライオン」級は、主砲を34.3cmに拡大しており超弩級と呼ばれた。「クイーン・エリザベス」級は、各国とくにドイツで同クラスの主砲の搭載が行われるのを見通して、それを凌駕すべく、38.1cm砲を搭載したものである。超弩級の上を行くことから、超々弩級戦艦ということになる。
 常備排水量27500t、全長196.8m、幅27.6m、喫水8.8mと、前級の「アイアン・デューク」級より一回り大型化していた。武装は当初は、38.1cm40口径砲連装砲塔5基を搭載することが企図されたが、艦のサイズ、重量ともに増大することは明らかだった。8門で充分34.3cm砲10門の威力を上回るとして、中央の砲塔が廃止された。機関の強化のためそのスペースと重量が使用され、最大速力約24ノットの高速戦艦(当時として)となった。
 装甲防御は38.1cm砲防御として水線330mmと前級の305mmよりも強化されている。その他甲板76mm、砲塔前盾330mm、司令塔279mmの装甲が施されていた。水中防御も強化され、船体外板の内側1.8~2.4mに水雷防御縦壁が設置されていた。機関出力増大のため、重油専焼となり燃料は重油だけとなった。出力は75000馬力で最大速力は24ノット、航続距離は10ノットで4500海里であった。

ここから先は

8,246字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?