ソ連軽戦車発達史・外伝・コムソモーレツ その4
◆「コムソモーレツ」の部隊配備と諸戦期の情況
1937年8~9月、ロシア軍は、機械化砲兵部隊の牽引車として予定された、各種の軍用牽引車の使用が承認された。ここで半装甲牽引輸送車T-20「コムソモーレツ」は、重量0.5~1.6tの砲兵機材(45mm対戦車砲M1932および76mm連隊砲M1927)を牽引することが予定された。その他では、装軌式牽引車「コミンテルン」は5~7.8t(76mm対空砲M1931、122mmカノン砲M1931および(152mm榴弾砲M1934/36と原資料にあるが該当する砲が見つからなかった。152mm榴弾砲M1937のことか?それとも152mm榴弾砲M1938)を牽引すること、農業用トラクターS-60は7.2~13.8t(152mmカノン砲M1910/30、152mmカノン砲Br-2および203mm榴弾砲B-4)を牽引すること、そして農業用トラクターSTZ-3は2.4~3.6t(107mmカノン砲M1910/30、152mm榴弾砲M1909/37)を牽引することとされた。
「コムソモーレツ」は、45mm対戦車砲M1932および76mm連隊砲M1927を牽引するには適当であることが示された。しかし、そこでも指摘された欠陥を取り除かない限り、砲兵機材としての調達は認められないと示されたのである。
その例として挙げられているのは、たとえば牽引状態では砲兵機材が履帯のすぐ後ろにあるため、舞い上がる土埃を振りかけられて、甚だしく汚されてしまうというものだった。それは牽引後、陣地に布陣するためには、2時間もの時間と大量の水が必要だというのだ。つまり、砲の牽引に適するような設計上の調整が十分なされていないというのである。どうも、たぶんに馬曳きより牽引速度が上がった結果、土埃がひどく舞い上がるようになったのではないかと思われる。
「コムソモーレツ」の欠点と言うほどの物とも思えないのだが...。なんとなく反機械化装備派(当然そういう守旧派は多数いた)の少々言い掛かりにも聞こえるが...。まあ履帯が土埃を巻き上げたのは事実だろう。その他、燃料タンクが漏る、履帯の寿命が不十分、3速ギア、減速歯車の不具合、エンジンの作動不良(シリンダーヘッドのパッキン不良とオイル漏れ)等、車体の細かい不具合が挙げられた。
全ての試験結果に基づいて、牽引車と被牽引火砲の組み合わせに関する性能諸元をまとめた、牽引速度の一覧表が作成された。試験結果に関して、参謀本部長と連名で、ロシア軍の砲兵本部長に試験結果に基づく指示が書き与えられた。そこには、機械化牽引における砲兵機材の高速運行には、牽引車と被牽引火砲により高度な設計が必要であり、それは完全に不十分だ(そして連隊および対戦車砲牽引車として「コムソモーレツ」を排除する)と書かれていた。
「2~3倍もの強化が必要」とあるのは、失望の大きさであろう。牽引車と被牽引火砲といった機材が、戦術技術要求に応じるよう、できるかぎり改良作業を進めなければならないとされた。そして、挙げられた以外にも、牽引車には小さいものにしても多数の欠点があり、砲兵の機械化牽引のための準備を本質的に低下させる、とまで述べられてしまった。頑張った開発者に気の毒に思えてしまう。
このため翌年には、部分的ながら火砲の改良が図られ、その走行性能は少しは改善された。そして、機械化牽引に適した新たな火砲が導入された。これによってその被牽引速度は、20~50km/hにまで高められることになった。いっぽう牽引車の側は、そんなには変わらなかった。実質的に装輪式牽引車、装軌式牽引車ともに、独ソ開戦までほぼそのまま生産が続けられたのである。ただその間にSTZ-5および「ヴォロシーロヴェツ」の生産が進められている。
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