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文字書きが作った同人文庫 備忘録 3冊目

3冊目の記事です。今回も文庫本っぽい同人誌を作った記録を、自分用の備忘録として諸々書いていていきます。

1冊目の記事はこちら

2冊目の記事はこちら


3冊目はこちら

勢いで申し込んだWebイベントのために「新刊を2冊出す」と意気込んだ私。
前回の記事に書いた本の入稿を済ませてから、こちらの原稿に取り掛かりました。
入稿までおおよそ1.5ヶ月ほどしかない……といってもWebに掲載していた短編を寄せ集めた再録話中心+数話ほど書き下ろしといった構成でいくつもりだったので、そこまで気負うことなく進めていきます。
ただし、今回は話数が多すぎた…!手を動かした時間よりもどの話を載せるべきなのか悩む方に時間がかかりました。
全63話。4冊の中で一番話数も重みもある本の紹介です。

※今回も前半は本持ってない方からしたらなんのこっちゃな内容なので、装丁の話だけ読みたい方は飛ばしてください。



1.タイトルの話

2冊目と同じくWeb再録の短編集にするつもりだったので、自サイトの名前と組み合わせたタイトルで決定。
潜るか沈むかで悩みましたが、”沈む”だと悲しい響きが含まれているような気がしたため、最終的には前者を採用しました。


2.中身の話

当初は75話近くの短編を載せる予定をしていました。がしかし、話数多すぎてページ削らないと頒布価格的にもまずい事態に陥り、全63話に落ち着きました。

数年ぶりに二次創作活動を再開してハマったジャンルで、リアルタイムで原作を履修しながら喜怒哀楽色んな感情を詰め込んだ小話たち。それが一冊の本にまとまると思うと、とても感慨深かったです。



3.装丁の話

今回はタイトルに"潜る"と入っているので、「水の中や夢の中に潜る」というテーマを胸に、デザインを考えました。


カバー表紙

カバー表紙は水の中に潜るイメージで作成。Unsplashさんより拝借し、水の中へ潜っていく過程を想像できるような部分を切り取りました。


これが
こうなりました

タイトルの印字は少しだけひねってみたくて、色々試行錯誤したようです。(あまり記憶が定かではありませんが、色んなパターンで試したファイルがたくさん出てきました)文字レイヤーに直線を重ねて、順番に消せゴムで消して作成。下の英語は線の中からスライドインしてくるようにしたかったのですが難しかったですね……。
今回は白の余白を残したかったので、下三分の一に白い四角を重ねて置きました。筆記体の名前部分すごくお気に入りです。
ただ、今回のカバー表紙は微妙に長さ(白い部分)が足りてなかったんですよね。

白の四角を置いたために、写真との境目が明らかに……。

"カバー表紙の巻き込み部分にまで枠を入れた方が綺麗に刷れます"と印刷所さんの注意事項にも書いてあったのですが、原稿終盤で脳がふやけていたのか、
「中途半端に移るくらいならギリギリを攻めてやるッ!」
というよくわからない思考に陥って中途半端になってしまいました。


裏表紙

背景の写真画像が綺麗だったので、文字の後ろに載せた白背景を透過した形で載せたのですが、思いの外透過が薄かったようで背景に埋もれてしまったのは反省点。
今回もバーコードは下記に依頼しています。いつもありがとうございます。




表紙

表紙については太陽と泡。水の中から上を見上げた時に見えるもの(カバー表紙と若干かぶっていますが)を意識しましたが、ここはもう好きなもの寄せ集めてみました。

枠は手書きです


こうなりました


若干右に寄ってしまいましたが、色がすごく可愛くて絵柄とマッチしてくれて良かった。歴代の本の中でもこの表紙の色が一番好みです。青色大好き。
真ん中の太陽の素材や、本文でも登場するワンポイント素材についてはこちらの方の素材を購入・お借りしました。ありがとうございました。




背表紙



今回の背表紙も、歴代出してきた本と同じ仕様で作成しました


今回ページ数がごついからなのか、はたまたカバー表紙に使用した用紙の性質なのか、背表紙をみてみるとかなりタイトな背表紙(?)になっています。例えるなら普段はゆとりのあるジーンズ履いてるけど今回はスキニー履いてみましたみたいな?おそらくカバー表紙の反り返が少ないのも理由にあるかもしれません。ぴっちりしてる感じ、私は好きです。



その他

今までやったことなかった、話の転換時にアイコンを載せるっていうのをやってみました。


話の転換時にいつもは***を使うんですが、たまには違う形にしてみたくて。Pagesの標準アイコンを挿入しています。ちょっとした小ネタなんだけども割とお気に入りです。


4.印刷所と入稿の話

今回もワンブックス さんに依頼しました。

実は他の印刷所さんも検討していたのですが、そもそも300ページ越えの文庫本を作ってくれるところがあまりないみたいで……印刷可能なページ数の壁があるんですね。
入稿はいつもよりはぎりぎりになりましたが、どうにか間に合わせられました。ただし相変わらず不備があり、今回はトンボ線入れ忘れてまして……ご指摘いただけたのは本当にありがたかった。毎回毎回すみません…!


5.仕様の話

[ サイズ ] A6(文庫)
[ ページ数 ] 388
[ 本文用紙 ] ミステリッククリーム 32kg(0.073mm)
[ 表紙用紙 ] 紀州の色上質 最厚口 ブルー
[ カバー用紙 ] HS画王 109kg
[ オビ用紙 ]なし
[ PP加工 ] カバーにクリアPP加工
[ 厚み ] カバー表紙含めると1.6cmほど

今回カバー表紙で使用した紙が特殊で面白かったです。
1冊目、2冊目で使用したものとは別の何かにしたかった私。ワンブックス さんを利用して本を出された方のTwitterやブログを拝見し、この紙ならいいかもしれないと白羽の矢を立てたのがHS画王でした。
多くの方が「HS画王は紙がぽこぽこしてる」とおっしゃられていました。
ぽこぽこ……?と思っていましたが、手元に本が届いてから納得。

遠くから見るとわかりづらいですが、光が当たっている箇所を見ると、ぽこぽこしてます。
手触りは少しざらついている感じもします


たしかに、凹凸がたくさんある。光を当てると"ぽこぽこ"具合がよくわかりますね。かわいい。


あと背幅については、1冊目で作成した本のページ数より多いのに背幅が小さくなるという結果に。388ページあるのにこの背幅に収まったのすごいな……。
なんといっても本文用紙がすごい。0.073mmの厚みで実際に触ってみるとその薄さに驚きます。

本当に薄い。羽触ってるみたい。
光に透かすとまるきり文字が見える。0.073mmって薄いんだねえ


今まで作ったどの紙よりも薄い。1冊目で試し刷りしたワンブックスノベルが0.090mmだったのでそれよりも薄いよ。
ちなみに、柔らかさもとんでもないです。

これが


ぐにょ
こうなる!そして折り目もつかず元に戻る!
※あんまり真似しないでね

本当に柔らかくって、ノドまでしっかり開くので分厚い本でも読みやすい。すごい。すごいぞ。
印刷所さんのページを見てみると、なんと最大612ページまで製本可能だそうです。600ページ超えの本ってのもとんでもないし、それを作れるってのもとんでもないな……!

手触りは今まで作った本の中で一番好きです。色味はクリームにほんの少し寒色が混ざったような独特な色合い。だからミステリッククリームなのかと納得。

単体で見ると、青緑のような色
他本と比べると全然違う。左から順に、
ソリストNピンククリーム
メヌエットフォルテC
ワンブックスノベル
ミステリッククリーム


他の本と比べても色味が全然違いますね。
3冊作って思いましたが、紙って本当に面白いです。
本文用紙や表紙用紙など、たくさんの紙の種類があって組み合わせは自由自在。それぞれいろんな性質を持っています。もっといろんな紙で刷ってみたいなぁ。



6.本文レイアウト(組版)

今回も相変わらずpagesを使って作成。

[フォントとサイズ]
 游明朝体 8pt
[行間隔]
 固定値:10pt
 段落前:0pt
[余白]
 ヘッダ余白:0.8cm
 フッタ余白:1.0cm
 上:1.0cm
 下:1.0cm
 内側:2cm
 外側:1.27cm
文字数と列数で数えると、縦は44文字、横は21列です。


今回はとにかくページ数を抑えたい一心で小さく狭く設定しました。

これは今回の本。ノンブルとの隙間もかなり詰め気味です
これは1冊目の本。文字の大きさは9ptです
左が一冊目、右が今回の本です


読み進めているういちに気にならなくはなりますが、別本と比較するとやはり小さめです。印刷できなくはないけど、この設定では今後刷らないだろうなぁ。


あと、あとがきがめちゃくちゃでか文字サイズになってしまっているのは、今回はPagesではなくProcreateで作成したためです……ちゃんとフォントサイズ確認しておけば良かった。急に文字大きくなるのでびっくりさせてしまいました、本当にごめんなさい。
※ちなみに、フォントサイズは11ptで作成してました。そりゃでかいわ。



7.まとめ


今まで書いた話をたっぷり収録した短編集。詰め込みすぎてちょっと窮屈になってしまったかもしれないと反省。頒布価格も結構高くなってしまった。今更だけれども上下巻で分けても良かったなぁ……。
ただ、徐々に本文や装丁のレベルが自分の中で少しずつ上がっていっているような感じがしています。回数を重ねてスキルアップしているのは嬉しい発見ですね。

お手に取ってくださったみなさま、ありがとうございました。