上司と隠れ猫
私は仕事柄、靴を脱ぐ機会が多い。
新しい空間や建物が出来上がると
現場を見学させてもらうのだが、
その時は基本土足禁止で靴を脱ぐことになる。
うっかり靴下に穴が空いてた時は
冷や汗をかく。
必死にバレないよう人目を盗み
穴の部分を引き延ばし、
見えないよう足の指の間に挟んで隠す。
そんな状況なので、
他の人の靴下事情も気になり
ついつい観察してしまう。
靴下にはその人の人柄が結構出ていて
面白かったりするのだ。
普段見えない部分だからこそ、
みんな気を抜いている。素がみれる。
ある現場でふと男性上司の靴下に目をやった時、見てはいけないものを見た気がした。
ねこだ!!!!
なんてこった。
刺繍の可愛い猫がいたのだ。
クールな上司の足元に。
澄ました顔して、猫隠しやがって!
他の人は気づいていないだろうか。
そわそわと周囲を見渡すと、
いた。
まさかの取引先の社長が私と同じく
隠れ猫を凝視していた。
上司の威信を守れない。
これはまずいぞ、と思ったが無駄だった。
○○さん、靴下に猫ついてるんですね?
とても素直なコメントだった。
上司は一体なんで返すんだろう。
緊張して見守っていたが、
あー…
そうです。猫です。
恥ずかしがるでも、
気まずそうにするでもなく。
淡々と、猫です。
と答える上司がなんだかおかしかった。
そしてはじめて
この人も人間なんだよなあと、
温かみを感じることができて
ちょっぴし嬉しかった。
会社では見れない隠れ猫。
私は知ってるぞ。
そう思うだけで、尊敬する上司だけど
少し、対等になれた気がする。
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