地中海式の食事と精神疾患

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地中海式の食事は、現在健康的な食事として大いに注目を集めている。その要因として上げられるのが、「地中海式の食事は、西洋式に比べうつ病になりにくい」というものだ。

2008年のBritish Medical Journalで発表された研究では、地中海式の食事に準じた食生活を送る人は、生活習慣病にかかる率が低いと報告された。具体的には、総死亡率、心臓病、がんの罹患率の低下が挙げられる。さらに地中海式の食事を摂っていた人は、パーキンソン病、アルツハイマー病のリスクも低いことが判明。地中海式の食事が、主要な慢性疾患の予防につながる結果となった。

また、欧米諸国の過去12研究による、合計約157万人を対象にした研究のメタアナリシスでは、地中海式食事に準じた食生活を送る者は、一定期間内での死亡率が低い結果が出た。こちらもBritish Medical Journalと同様に、心臓病、がん、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)のリスクが低かったという。

さらに2009年のArch Gen Psychiatryの研究では、スペインの健康な大学卒業生を対象にうつ病発症の追跡調査を4.4年にわたり実施。対象10,094人のうち、うつ病の発症例はわずか480人にとどまった。


2010年のArchives of General Psychiatryでは、先行論文のメタアナリシスによる研究が発表。肥満者はうつ病の危険率が1.55倍高いという結果に加え、うつ病者は罹患後の肥満リスクが1.58倍になるという結果が出たという。つまり、うつ病と肥満とは双方向にリスクが高める結果となった。

野菜、果物、豆類、穀類、魚などの摂取量から「地中海式食事スコア」を算出して比較した研究によれば、地中海式食事スコアの高い群は、低い群と比べてうつ病発症率が低いという結果も。多くの研究で、地中海式食事がうつ病のリスクも下げる可能性が示唆されている。

地中海式と西洋式の食事の違い
地中海式の食事で特徴と言えるのは、野菜、果物、ナッツ類、豆類、魚介類、オリーブオイル、穀物と、多彩な食物の摂取量が多いという点にある。また、必ず一杯の赤ワインを飲む習慣を持つ。

一方で西洋式の食事は、ミートパイ、加工肉、ピザ、ポテトチップス、ハンバーガー、食パンなどが多い。また、パンは全粒粉ではなく精製小麦で作られ、砂糖、味付け乳飲料、ビールといった製品の摂取も多い。

こうした西洋式の食事は、別名「Standard American Diet」、通称「SAD(=悲しい食事)」と呼ばれ、うつ病、認知症リスクが助長される要因だと指摘されている。

個別の食品との関連として、次の点が地中海式の食事の特徴と言える

・果物、種実、豆類の摂取量が多い
・一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比が高い
日本人と地中海式の食事
一方で、地中海式の食事が日本人に合うかというと、決してそう言い切れない。日本は欧米に比べて魚の摂取量が多く、乳製品の摂取量が少ないといった実情が異なる(もちろん、野菜、果物、ナッツ類、豆類、魚介類といった多彩な食物を摂取することは、健康に利する面が多いことは想像に難くない)。日本人と地中海式の食事との研究はデータが不十分であり、今後さらなる研究が必要だ。

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